『プ女子百景』著者・広く。さんインタビュー「プロレス観戦は己との対話」

女子たちが全力でプロレス技をかけあう、新感覚プロレス本『プ女子百景』

ドラマ「豆腐プロレス」で使用されたことでも話題の、この恐るべき作品の奥底に潜むプロレスへの熱い思いを、著者の広く。さんに伺った!

<グレート・ムタから、「主人公」内藤哲也へ>

――広く。さんがプロレスに目覚めたのはいつ頃ですか?

広く。:2002-3年ぐらいです。「ファンタジーファイト WRESTLE-1」のグレート・ムタをたまたまテレビで見て、何だこれはと。

――その前までは、あまり接点がなかった?

広く。:子供の頃に漫画で『キン肉マン』を見ていたくらいで、プロレス自体には全然触れていませんでした。

――グレート・ムタに感じた魅力は……?

広く。:とにかく、何だこれは、と……(笑)。

――辻よしなりさんのセリフですね(笑)

広く。:それまでのプロレスのイメージは、お腹の出たパンツ一丁のおっさんがドタドタやってるイメージだったんですけど、プロレスって言ってるのに演劇みたいな感じで、スモークが出たり、これは私の知っている言葉では言い表せない何かだ、と衝撃を受けました。

――そこから興味がわいて、普通のプロレスに……。

広く。:最初は武藤敬司さんからです。

――「ファンタジーファイト WRESTLE-1」は自由でしたね。後継のハッスルを含めると、ボブ・サップとかインリン・オブ・ジョイトイも参戦していました。

広く。:ボブ・サップが空を飛んできた東京ドームが、自分の見に行った初めてのプロレスです。

――びっくりしましたか?

広く。:何だこれはの一言(笑) 本気で武藤さんがエンターテイメントをやろうとした感じでしたね。

――WRESTLE-1って二回で終わったじゃなかったかな。ともかく、そこからプロレスにはまりだした。

広く。:それから、『週刊プロレス』を読んだり『ワールドプロレスリング』を見たりして、ズブズブ。

――ちなみに、今は誰を応援してますか?

広く。:内藤選手です。

――間髪入れずに(笑)

広く。:スターダストジーニアス時代からです。すごい目力をしている選手だな、と思って。

――ファン歴、長いですね。

広く。:2011年の秋ごろに、棚橋選手にIWGP初挑戦(2011年10月10日・DESTRUCTION’11)で、少年漫画の主人公みたいに、憧れの先輩と初めてのベルトを賭けて戦う……というのが漫画みたいで面白いなと。

――内藤選手は、LOS INGOBERNEBLES de JAPONで男性の支持率が一気に上がって、大きく変わったと思うんですが、その前からお好きだったんですね。周りからは支持されているタイプじゃなくても、好きだった?

広く。:私は完全に主人公だと思っているので。

――私の中の主人公?

広く。:主人公です。棚橋選手の次は内藤哲也が来ると思っていました。オカダ・カズチカ選手が(武者修行から)帰ってくる前なので。

――それなら、今のブレイクはうれしく感じますね。

広く。:きたー!長かったー!って感じでした。

――今の彼はカリスマ性が凄いですね。

広く。:こうなるとは思っていませんでした。

――「ベルトよりも今の自分の方が価値がある」などと、木谷オーナーに対して言っていく、社会の矛盾を突いていく。彼にはどこか色つやがあります。入場テーマだけで沸かせられるのは凄いです。最初焦らして入場した時は「早く入ってくれよ」と思ったけど、あれが個性と思えるようになってから、ああいう流れなんだと納得できました。最初はものすごいブーイングでしたよね。あの姿で帰ってきた時は。

広く。:G1ですよね。

――今や彼は、別格です。長州力さんの「かませ犬発言」、藤波さんに「なんでオレがオマエの前にコールされないといけないんだ」と食ってかかった事件のように、サラリーマンが日ごろ抱えている不平不満を代弁するかのように、プロレスラーが格付けに実力で反抗する。そこに言霊的な魅力を感じます。内藤選手は不満をきっぱり言い切ったことで支持を得られたのでしょう。

広く。:あんなに言葉を操れる人だったというのは、LOS INGOBERNEBLES de JAPONで初めてわかりました。もともと持っていたのに出せなくて、あのキャラに乗っかって出せるようになったのだろうなあと思います。

――ストロングスタイル・デスマッチと、現代のプロレスのタイプも幅広いですが、どういうタイプが好きですか?

広く。:何でも好きですけど、現役レスラーで一番好きなタイプは、鈴木秀樹選手のスタイルです。明らかに強くて、試合に緊張感があって、見ていてひりひりするところが魅力です。

――彼の背中には戦いを感じます。エルボーひとつにしても魂がこもっていて、見ている方も痛さを感じますね。

広く。:切れ味が凄い。立っているだけでもかっこよくて、背中がとにかく大きい。ファンの心をくすぐる選手です。

――猪木さんの闘魂を継承されているところがあります。デスマッチも好きですか?

広く。:ハマっていた時期もありました。今も時々、大日本プロレスを見に行きます。

 

<徹頭徹尾プロレス。プロレスをマンガで描く。>

――広く。さんはプロレスが大好きで、漫画もずっと好き。漫画はいつごろから書いていましたか?

広く。:物心がついた時から描いていました。一度はプロ漫画家にもなりましたけど、うまくいきませんでした。

――題材は?

広く。:プロレス(笑) 徹頭徹尾プロレスなんですよ。『拝啓 西村修様』という作品を出しました。

――……渋すぎる……(笑)

広く。:西村修さんの三点倒立に感銘を受ける少年の物語です(笑)

――もしかして、昔から王道じゃないところに魅力を感じるタイプですか?

広く。:ひねくれてますね。まあ、自分の感覚を信じてます(笑) 『拝啓 西村修様』で賞を頂いてデビューしたものの、二作品くらいで長続きせず終わってしまいました。よくそれで載りましたよね(笑)

――二作目もプロレスですか?

広く。:女子デスマッチ漫画『デスマッチ・ガール』です。時代が早すぎた(笑) 10年前です。

――今では、世羅りささんがデスマッチをやっているけど、10年前ですよね……。

広く。:10年前はプロレス暗黒時代でしたね……。

――何をやってもダメ、時代は格闘技ブームでした。

広く。:「プロレスは終わってる」「題材を変えたらもっと良くなる」って散々批評されました(笑) 今はそれじゃないみたいな、「その題材はちょっと厳しいかもしれない」って……(笑)

――ともかく、選択肢がある中でそれを選んでくれたのは嬉しいんです。同じものが好きなファン同士で一度は背負って勝負してくれたわけですから。

広く。:何にもしょいきれてないです(笑) 当時は若気の至りで、「今低迷しているプロレスを、漫画の力でワシが上げたるんだ!」くらいの思い上がった気持ちで描いていました(笑)

――題材にした西村さんと会ったことはあるんですか?

広く。:その時はなかったんですけど、ずっと後に、一度ご挨拶する機会がありました。議員さんになってからですね。

――西村さんはドリー・ファンク・ジュニアさんを尊敬していて、一度対談企画をさせていただいた時も、ドリー・ファンク・ジュニアさんに英語で内容を解説してくださいました。ご本人のお話も、とてもおもしろいですよ。

広く。:西村さんの影響がとても大きかったです。三点倒立が流行ったころは、西村さんがヨガの修行みたいなことをやったり、独自の世界を築いていました。他の人と西村さんについての話題を語りたいけど、語れる相手がいないんです(笑)

――今度西村さんと対談してもらいましょう(笑)

広く。:当時気になっていたことを全部聞きますよ(笑) 地元のTSUTAYAに無我のビデオがあったので借りたものの、西村さんの話が長すぎて、見終われずに返したのを思い出しました(笑)

 

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山口 義徳(プロレスTODAY総監督)
『プロレスTODAY』総監督。
プロレスTODAYの企画・進行・管理を行い、会場ではカメラマンも兼務。
またプロレスとビジネスの融合を行い、会場でのクライアントとのタイアップも実施。

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