【編集長コラム】「世界一のごんた顔」石井智宏

新日本プロレスのロス遠征で、いつも通り「存在感」を披露した石井智宏。米国のファンからも多大な支持を集めている。

「スマートなイケメン」が人気を集める昨今のプロレス界で、独特のキャラクターを確立している。

新日本プロレスの「真夏の祭典」G1クライマックスにも5年連続5回目の出場。もはや新日マットに欠かせない。

「STONE PITBULL」を始め「突貫小僧」「切り込み隊長」「豆タンク」・・・さまざまな異名がある石井だが「世界一のごんた顔」はどうだろうか。

「ごんた」とは元々は「ごんたくれ」で、浄瑠璃・義経千本桜の登場人物「いがみの権太」に由来する言葉だ。「困った人」あるいは「乱暴者」「いたずら者」のこと。最近では主に腕白、きかん坊、ヤンチャといった意味で使われることが多いようだ。

みんな困ってはいるが、嫌悪や憎悪ではなく「しょうがないな~」といったニュアンスが含まれている。

播磨(兵庫県西部)には ♪喧嘩ならしょうか、ごんたさんが通る♪ という童謡というか民謡が伝わっている。

播磨の国には、とんだ腕白坊主がいたそうで、忍者の真似をして屋根の上を走り、瓦を落としてしまったり、イノシシは本当に真っ直ぐしか走れないのか確かめるため、イノシシの子どものウリ坊に乗ったところ、そのまま突進し、ウリ坊ともども崖から落ちてしまった。上級生も全部喧嘩で負かすなど、とんでもないガキ大将で暴れ回っていた。

「おまえはほんまに、ごんたやね~」と村のみんなが呆れ顔。それでも勉強はできたとあって、学力を県から表彰されたが、校長先生は「おまえはごんたやから、これでええ」と「学力素行優秀につき」という表彰状の文言のうち「素行」を墨で消して渡した。親も「しゃーないわ。ごんたやからね」と笑いとばしたという。

プロレスラーなら若き日の前田日明が「ごんた」だろう。前田本人も「ごんた顔」とよく口にしている。そして「平成のごんた」は何と言っても石井しかいない。

豆タンクのような分厚く頑丈そうな黒光りした体、メンチを切る目つき、愛想のなさ、あのゴツゴツした試合。中でも「世界一性格の悪い男」鈴木みのるとの「メンチ合戦」は、迫力満点。みのると対峙しただけで、腰が引けてしまうレスラーも中にはいるというのに、石井は「ごんた」っぷりを炸裂させ、突っかかって行く。まるで明日のことなど考えないかのようだ。

今年のG1ではブロックが分かれてしまった。公式戦では実現しないが「石井VS鈴木」の決勝戦を色々とシュミレーションするのも、また一興だろう。

「世界一のごんた顔」命名に、石井は「人が何と言おうと俺は気にしねーよ」と無愛想にぼそっとつぶやいた。やっぱり「ごんた」だった。

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