【編集長コラム】「猪木氏のにんじんパワー」

先日、横浜スタジアムに登場したアントニオ猪木氏。「猪木ボンバイエ」を登場テーマ曲にしている、DeNAベイスターズのゴメスこと後藤武敏内野手に闘魂ビンタを放った。後藤選手はもちろん、両チーム選手、観衆にも「闘魂」を注入して喝さいを浴びた。いつもの「赤」とは一味違う、ベイスターズのチームカラーに合わせた「青い闘魂タオル」も似合っていた。

最近は「誰だっけ?」と、おとぼけギャグが挨拶代わりだが、猪木氏とお会いすると「闘魂」「元気」を分けていただける。

色んなお話を伺ってきたが、近くに座った親子連れの会話が耳に入った時のエピソードは印象深い。

「にんじんも食べなきゃダメでしょ!」というお母さんの声。「え~ だってまずいんだもん」という小さな男の子の声。「にんじんも食べないと強くなれないよ!」と再びうながされ、意を決したように目をつぶってエイッと口に放り込み、あわてて水を飲む。ほほえましい光景を目にした猪木氏が語りだした。

若き日の猪木氏が、アメリカ修行中の話。ギャラも安く、ホテル代や移動費も自分持ちだったので、手元にはお金がなかった。なけなしのお金をかき集めても、レストランに入るほどの額はない。でもお腹がすいて眠れない。

仕方なく、スーパーマーケットに行って物色したところ、その日の特売はにんじんだった。袋いっぱい、山ほどのにんじんを抱えてホテルに帰り、ジューサーを借り、部屋でにんじんジュースにして飲んだという。何杯も何杯も飲み、何とかお腹がふくれた。これで眠れると思ったそうだ。

ところが、今度は元気になりすぎて目がさえてしまったという。にんじんしか食べていないのに、次の日の試合でも大暴れしたそうだ。「元気があれば、にんじんも食べられる」ではなく「にんじんを食べたから元気になった」と、にんじんに関しては逆だったわけだ。

にんじん嫌いの子供も多い。にんじんを食べるように、母親から「お馬さんを見てごらん。あんなに大きなお馬さんが、あんなに早く走れるのはにんじんが大好物だからなんだよ」と言われた人も多いだろう。馬は走る、猪木は元気になる・・・恐るべし、にんじんパワー。これはもう「迷わず食べろよ」である。

好き嫌いするプロレスファンの子どもに「にんじんを食べないと、猪木さんみたいに強くなれないよ!」と言ってみようか。それで好き嫌いが直れば、それこそ「闘魂パワー」だろう。

「元気ですか~!」「ハイ、猪木ボンバイエを聞いて、今日も頑張ります」。

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