【CIMOのプロレス観戦記】1.4 新日本プロレス 東京ドーム大会「人生変えるイッテンヨン」編

今年の東京ドーム大会も大いに盛り上がった。主要試合を見ての感想を振り返りたい。

新日本プロレス WRESTLE KINGDOM14
「人生変えるイッテンヨン」編

第0‐1試合 15分1本勝負 スターダム提供試合
星輝ありさ 〇岩谷 麻優
vs
ジュリア 木村花
※9分04秒  ムーンサルトプレス→片エビ固め

新日本プロレスの東京ドーム大会にスターダムの女子プロレスが中継のされないダークマッチとはいえ登場。これは歴史的な快挙といって良いと感じた。

昨年10月にブシロードグループ入りを表明したスターダムがわずが3か月後には主力選手4人が東京ドーム大会のオープニングを飾るというのは凄いこと。当時は新日本プロレスとスターダムの試合が同会場で行われることに批判的な声も多かった印象だが、東京ドームの歓声は純粋に華やかな女子プロレスを楽しむWelcomな雰囲気に感じた。

カードも赤いベルトの王者・岩谷麻優と白いベルトの王者・星輝ありさのSTARS組に対して、TCSのリーダー木村花とアイスリボンから移籍して”お騒がせ女”と言われながら現在は狂気で快進撃を続けるジュリアのハーフ美女組。

特にテラスハウスでも人気を博し、その所作にセクシーさが溢れる木村花のリングイン時には会場からも歓声が上がった。試合は木村花とジュリアが互いに誤爆した流れから岩谷麻優がムーンサルトプレスで勝利を飾った。

試合後の会見場でもSTARSの2人は東京ドームで試合をした感想を述べていたのに対し、ハーフ2人は激しい舌戦で「ブース」「ゲス女」と互いを罵あっていた。それぞれの色が出たいい試合だった。

第0-3試合 15分1本勝負
〇小島 聡 天山 広吉
vs
中西 学 永田 裕志

新日本プロレスの良い時も悪い時も時代を支えてきた第三世代がアンダーカードに登場。試合はテンコジが勝利を収めたが注目は試合終了後の中西学。四方に向かって礼をするその姿には「まさか…」と思う節はあったのだが。

まさか“そのまさか”が現実になってしまうとは。2.22の中西学引退記念大会に向けて第三世代最後の東京ドームでの4人が向かい合う試合となった。

第1試合 60分1本勝負 獣神サンダー・ライガー引退試合 I
タイガーマスク ザ・グレート・サスケ 藤波辰爾 獣神サンダー・ライガー with エル・サムライ
vs
田口隆祐〇 高岩竜一 大谷晋二郎 佐野直喜 with 小林邦昭
●特別レフェリー:保永昇男
※8分52秒  どどん→エビ固め

“怒りの獣神”に合わせて炎が立ち上る東京ドームの素晴らしい演出に溢れる涙が抑えられなかった。大谷や高岩、佐野らライガーのライバルたちが対角線に集い、ライガーの憧れた藤波辰爾、共にジュニアの黄金期を築き上げてきたサムライ、サスケ、タッグパートナーとして共に戦い抜いてきたタイガーマスクと同じコーナーに集まった試合は田口のどどんにライガーが沈んだ。


ライガーの引退についてはサスケが語った「TTK。ただただ感謝」この一言に尽きると思う。会見でのサムライの声がとてつもなくしゃがれていたことも忘れようがない。

第4試合 60分1本勝負 IWGPタッグ選手権試合
<第83代チャンピオンチーム>
タンガ・ロア タマ・トンガ
vs
<チャレンジャーチーム/WORLD TAG LEAGUE2019優勝チーム>
〇デビッド・フィンレー ジュース・ロビンソン
※13分25秒  ACID DROP→エビ固め
※タマ&タンガが8度目の防衛に失敗。ジュース&フィンレーが新チャンピオンとなる
ワールドタッグリーグを制したフィンレー&ジュースが勢いそのままにGODからベルトを奪取。New Year Dashで棚橋&飯伏がタッグに力を入れる発言をしていたことから次なる挑戦者は本隊からのチャレンジとなるのか?その点も期待だ。

第5試合 60分1本勝負 IWGP USヘビー級選手権試合テキサス・デスマッチ
<第7代チャンピオン>
ランス・アーチャー
vs
<チャレンジャー>
ジョン・モクスリー〇
※14分26秒  10カウントKO
※アーチャーが2度目の防衛に失敗。モクスリーが新チャンピオンとなる

純粋に試合内容が面白かった。凶器攻撃ありのテキサス・デスマッチはともすると「USヘビー級ベルトはハードコアのベルトになってしまうのか?」とも考えられるほど竹刀にパイプ椅子、机に、ゴミ箱のフタと次々と展開される凶器とハードコアマッチ。

しかしそこに2人の外国人の大男が会場内を所狭しと駆け回り、リングの周りのスタッフやヤングライオンも蹴散らしながら大暴れする様は「昔ながらの古き良きプロレス」を思い起こさせるところもあり、純粋に楽しめるプロレスの原点の様な試合だと感じた。

結果は2つ並べた場外の机にデスライダーを敢行したモクスリーが生還。アーチャーは10カウント以内に立ち上がることができずにKOでモクスリーがUSヘビーのベルトを取り戻した。思えば台風19号の影響による飛行機トラブルで来日することが叶わずベルトを返上したモクスリーが、赤いベルトを取り戻した形だ。本来の場所にベルトが戻ったと考えて良い。

第6試合 60分1本勝負 IWGPジュニアヘビー級選手権試合
<第85代チャンピオン>
ウィル・オスプレイ
vs
<チャレンジャー>
高橋 ヒロム〇

1人リオのカーニバルの様にド派手な羽根つきの衣装で登場したヒロム。対してオスプレイはドラゴンスレイヤーの刀を持っての入場。

試合のクオリティについては新日本随一の二人による試合。果たしてオスプレイの華麗な空中殺法とそれを切り返すヒロムのハイスピードかつ、目まぐるしい技の掛け合いとなる素晴らしい試合だった。中でもオスプレイが場外のヒロムへサスケスペシャル→ヒロムがジャーマンで投げるもオスプレイがバク宙で花道に着地→ダッシュしてきたオスプレイをヒロムが投げっぱなしジャーマンでオスプレイをリングに投げる→その勢いのまま向いのロープへ走り再度のサスケスペシャルを食らわす
の場面は新日本ジュニアの戦いの中でも歴史に残る攻防と感じた。

ヒロムはスタイルズクラッシュの様な持ち方からTIME BOMBで落とす新技「TIME BOMBⅡ」で勝利。見事にIWGPジュニアヘビー王者となり翌日のライガー引退試合に向けてチャンピオンとして迎え撃つこととなった。

試合後の会見では首の骨折から復帰したことにも「プロレスは危険なスポーツだ」と触れ「でもそれ以上にすげー楽しいスポーツだ。こんな楽しいこと辞めるわけないだろう!」とプロレスの楽しさを体現していくことを高らかに叫んだ。

オスプレイはヒロム不在中のジュニアで圧倒的な強さを示してきた。昨年はNEVER無差別級のベルトも獲得したしG1CLIMAXにも出場した。もはやジュニアの枠にとどまる必要もないのではないか。今後はUSヘビーやインターコンチ、そしていずれはIWGPヘビーを狙う時が来たのかもしれない。まだまだ26歳、オスプレイの未来はまだまだ上昇の余地がある。

第7試合 60分1本勝負 IWGPインターコンチネンタル選手権試合
<第23代チャンピオン>
ジェイ・ホワイト
vs
<チャレンジャー>
内藤 哲也〇
※33分54秒  デスティーノ→片エビ固め
※ジェイが2度目の防衛に失敗。内藤が新チャンピオンとなる

インターコンチをかけた両者の戦い。内藤はロスインゴ旋風を巻き起こし2016年と2017年にプロレス大賞を受賞するなど大活躍していたが、2019年はなりを潜めていた印象。実は2019年5月頃からものが二重に見えるようになり、目に不安を抱えて引退の不安まで感じる程に。原因がわからず焦りの日々を半年ほど送るが、10月に大学病院で目の筋肉のまひによるものであることが判明。11月末に都内の病院で手術を受け視界のピントが元に戻った。

これで不安はなくなった。試合はジェイの執拗なヒザ攻めに苦しみ、途中膝のふんばりがきかなくなるほど追い詰められた。更にはセコンドの外道の介入もあり大事な所でジェイに集中できない。しかしその外道に対しても片足を持ち上げての急所蹴りで撃退。ランニングディスティーノでペースを掴むと最後は正調デスティーノでインターコンチのベルトを取り戻した。

試合後の会見では視界の戻ったその目でIWGPヘビーの行く末を見守るとしっかりと目を見開き話した。「予想はオカダ、希望もオカダ」と2年前のリベンジを願う内藤であった。

第8試合 60分1本勝負 IWGPヘビー級選手権試合
<第69代チャンピオン>
〇オカダ・カズチカ
vs
<チャレンジャー/G1 CLIMAX 29優勝者>
飯伏 幸太
※39分16秒  レインメーカー→片エビ固め
※オカダが5度目の防衛に成功

IWGPを懸けた両者の戦いは機運が高まりに高まって行われた。飯伏はG1覇者として飯伏デザインのアタッシュケースを持っての入場。オカダはこの日のために特別にしつらえた白いガウンがプロジェクションマッピングとコラボして東京ドーム仕様の派手な入場。

試合は40分に迫る激しい激闘となった。序盤の攻防から中盤以降は激しい打撃と投げ技の攻防となる。

飯伏の途中のオーバーヘッドキックが当たらずリングに自分の頭が突き刺さった場面は非常に危険だと感じた。また飯伏はオカダを踏みつける、その後、三角跳びをした後に武者震いをするなど危険なキレた飯伏モードへ。

トップロープを超えてのぶっこ抜きジャーマンや、オカダのトップロープからのドロップキックをジャンピングのラストライドで切り返す飯伏。

オカダを飯伏が倒すにはレインメーカー対策が重要。中盤のレインメーカーはかわし続けた飯伏だが、封印してきたフェニックススプラッシュをオカダにかわされるとそこからオカダがレインメーカーで畳みかける。計5発のレインメーカーを飯伏に打ち込みオカダカズチカがIWGPを防衛した。

勝利の余韻に浸るオカダの前にインターコンチのベルトを手にした内藤が現れ「2年前のドームでのマイクを覚えているか?オレはまた東京ドームのメインに戻って来たぞ」と史上初の偉業と東京ドームでの大合唱を目指すと発言。

しかしオカダのマイクはたまにIKKOみたいになることがあるよね。※「そんなことはどうでもいいんだよー」の言い方が「どんだけ~」みたい。超満員を目指したオカダは超満員にならなかったことを悔いたが、その志の高さもメインイベンターとしてのオカダの責任感の高さだ。

試合後、飯伏はこの試合を(負けたけど)自身のベストバウトの3位以内に入る試合だと話した。それだけ熱いものが詰まったドームでのメインであったのだ。しかし飯伏にはいつの日かIWGPを勝ち取って欲しい。盟友のケニー・オメガが獲得し価値を高めたそのベルトをいつか手にする日をみてみたい。

スターダムの試合でのオープニング、獣神サンダーライガーの引退試合での感動、IWGPタッグ、USヘビー、ジュニア、インターコンチと王者が次々と入れ替わっていく中での濃厚なIWGPヘビー戦。新日本の魅力を存分に堪能できた1.4東京ドームであった。4万人を超える観衆も大満足であったことに違いない。

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