【新日本 大張社長インタビュー】<第2弾>2021年の国内・海外戦略とマーケット予測を熱弁!「アメリカは起爆剤の準備着々」「縦で接点を増やし横で沢山の人に広げる」「携帯代削減分の可処分所得で楽しめるラインナップに」
新日本プロレスの10代目社長として就任した大張高己社長へのロングインタビュー第2弾。第1弾では新社長に就任した経緯と1.4&1.5のWK15 in 東京ドーム大会に向けた意気込みを伺った。
第2弾では新日本プロレスの国内戦略と海外戦略に関しての話とコロナ禍の影響で激動するマーケットの市場予測に関しての考え方について経営者としてどの様な視点を持っているのか話を聞いた。
【2021年の国内戦略、海外戦略】
--今そういうコロナ禍の中で、2021年からダブルドームを開催するということなんですが、2021年の国内の戦略、まだ実際はコロナが収束していないんでいろいろと方向転換あるかもわからないですが、海外侵略も含めてこんなことやっていければというのがあればお聞かせください。
大張 高己社長(以下 大張社長) 国内…まずどっちが興行をフルでやれるのが早いですかね。今アメリカは無観客で、STRONG※という毎週配信の大会を開催させてもらっています。なかなか見られないカードや試合内容、柴田選手と棚橋選手の名解説で今も充分定評がありますが、今後、さらに面白くなっていきますから、見逃さないでくださいね。
※NJPW STRONG。新日本プロレスワールドで2020年8月からアメリカにいる選手の試合を定期的に配信している。
--いいですね。
大張社長 絶対見ててくださいね。後悔させませんから。
--わかりました(笑)
大張社長 ていうのはいいんですが、国内外でいうとやっぱり、半分のキャパでやれてる日本は実は世界的に珍しいんです。当たり前ですがしっかりとエンジンとして日本の興行は継続です。あと今からきっとアメリカ含め、いやアメリカ中心でしょうか、コロナからの立ち上がりが実は海外の方が早い可能性もありますね。ワクチンの接種のスピード感とか、ちょっとその辺りの変数がどう転ぶかはあるんですけど、そもそも構造的に我々の会社が、日米両面待ちで、プロレス会社として日米を持っているのは強みです。私があちらに会社を起こした時に会見で「新日本に所属しながらアメリカで活躍できる選手、アメリカに住みながら新日本ブランドで活躍できる選手を増やしてくんだ、それは見たことない選手やカードの実現になって、お客様にもっと喜んでもらえます」と申し上げて、日本の興行と並行でその約束は当初想定とは違う形ですが果たしていきます。
--はい。
大張社長 それをいち早く、コロナがあったからでもあるんですけど、いち早く体現してレギュラー番組を持ってる状態が作れました。アメリカの大会が毎週見られる状態。3年かかると思っていたことです。見方を変えるとアメリカでは「では有観客興行やりますよ」とお伝えした時に相当に集客できるベースが作れるんですよね。一切あれ以来止めてたとしたら、興行やりますよって言っても「新日本って何?」ってなるわけですよ。「この選手って誰?」というところから興行でのしっかりした動員までは遠いです。我々が今やっているのは「お、あの選手がついにリアルで見れるんだ」という人気と期待の蓄積です。
--確かに(笑)
※THE DKC選手 ©NJPW
大張社長 ファンに戻った気持ちで敢えていうと、例えばDKC選手、まだ会ってないんですが(笑)。気になりますよね。柴田選手※からちょいちょい聞いていますが。こういった状況が温まってきてるっていうのは、アメリカで興行がOKになったときの起爆剤になっている実感があって、そして会場を押さえて毎回やっていますから、差分は唯一、お客様を入れることですね。オフィススタッフには、現地でオペレーションの洗練をさせています。また会社を立ち上げた時のプランとして、闘魂ショップLA店を実は開こうと思っていました。もともとの構想として。だから…、そうか(カレンダーを見て)、今頃から工事入るぐらいのプランでいたんですよ。1年後と思っていましたから。それをコロナ影響で180度転換して、スタッフには苦労をかけましたが、先にTOKON SHOP Global(闘魂ショップグローバル)というECサイトにして春に実現しました。日本ではやらないようなこともトライしながら年商数千万円のレベルまで来ています。
※柴田勝頼。2018年3月に新日本プロレス・ロサンゼルス道場の新設に伴い、ヘッドコーチに就任し後進を育成している。
--海外の闘魂ショップですか。
大張社長 本当は日本から世界に越境ECというのが念頭にあったのですが、意外と、日本からアジアは多いんですが、北米中心にECで進出していこうとする会社、ECで物が売れる会社が他になくて。ノウハウも物流もほとんどないんです。あっても高い。以前、私はアメリカに留学していたたこともあり、そこで学んだこととして、ECは物流が支配します。そしてその物流は日本をハブに越境するよりも、アメリカからやった方が合理的なんですよ。アメリカからなら世界中に物販できる物流があるんです。だから向こうで立ち上げよう、新日本全体の経営課題の解決策をアメリカ法人で担おうと。だから有観客興行以外ではコロナ影響の中でアメリカはすごく進められました。目に見える興行こそやってないですけど、会場周りのオペレーションや、先ほどの選手発掘の面もそうだし、ECの面も洗練されてきてるから、コロナから立ち上がれるタイミングが来たら、海外事業の加速度は凄いですね。
--なるほど。もう仕込みをどんどんやってるっていうことですね。
大張社長 待ち行列があったとするじゃないですか。ゲートの前に。でも障害物が置かれたので、順番と形を組み替えて、それをすり抜けられるやつ(ビジネス)を前にこう持ってったんですよ。グローバルは無観客で選手発掘とEC。だから先頭にいて実施してた興行を一番後ろに組み替えて。今後は障害物が取り除かれたらお客様にお越しいただきますという。まだ言えないですが別の取り組みも進行中で、そういう意味では、アメリカもすごく進んだという状況です。
--手応えはすごく感じてるということですね。
大張社長 ありますよ。戦略っていう意味で、時系列を持っていつまでにっていうのはちょっと外部環境に影響するから確定的に言えないですけど、それが興行ができるタイミングになったら爆発する感覚はあります。ずっと待ってくれているお客様だけでなく、順番の組み替えに付き合ってくれた、現地スタッフや理解を示してくれた選手達にも感謝です。
--なるほど。これアメリカは市場規模ももちろん大きいですし、そういう意味ではすごく重要で、過去にもパンデミックが起こった後、10年とか20年サイクルですごく経済が伸びているんですよね。爆発的に伸びる瞬間というのがやっぱりあるので、それがうまくマッチするような気がします。
大張社長 マーケットって将来に渡っては言えないですけど、中長期で見たときに、過去ずっと右肩上がりなんですよ。何が起きてもですよ。だから特にアメリカって、それが一番顕著に現れてる国なので、そこに張っておいて準備をしていくってのはとっても大事です。こういうお話をすると国内軽視と言われるケースがあるんですが、それは違います。要はグローバルで勝っていかないと、日本中心のビジネス自体も飲み込まれちゃう可能性があるんです。ビジネスの切り口で因数分解すると冷たく聞こえるかもしれないですけど、外貨を稼ぐのはとても大事です。国外のファンをたくさん集めて新日ファンの仲間になってもらって、それこそやっぱりメインはね、「イッテンヨン東京ドーム」という最大イベントがあるわけですし、そこに向けて国内も海外も盛り上げていく。新日本がどこかへ行ってしまうわけではなく、勝ち残ってより身近に感じて頂けるようになる道のりだと思います。
--ちなみに国内に関してはいかがですか。
大張社長 国内に限っていませんが、私は縦と横という分解の仕方で戦略を捉えます。縦方向はお客様が新日本プロレスを楽しむ接点の種類や数なんですよね。会場に来て試合をご覧いただく、会場でグッズを買ってもらう、ワールドを見てもらう、スマホ会員で情報を得てもらうとか。新たに始めた事前通販を含めたECもそうですね、新日コレクションというアプリを企画して育ててきましたが、選手や技のカードをスマホの中で集めるなど、新日本を楽しめる商材のラインナップをまず増やしていくことが縦なんです。それが、ここにAさんBさんCさんDさんが並んでて、日本から海外もあるんですよね。これをたくさんの人により多くのマスを埋めてもらう、この作業をしていくのが、横方向なんですよ。とある雑誌では、デジタル・グローバル・露出、そしてまず先立つのは、コロナ対策だと四つの柱をお伝えしましたが、今日は縦横で話しています。縦の方向の拡充。新日本を見ていく、楽しんでいく中で遊べる楽しめる。この縦を生み出して育てていくのは一朝一夕ではできないので、ずっと仕込んできています。縦方向のラインナップ拡充は、近々お話できると思います。
--では何か発表があるんですね。
大張社長 その時が来れば発表します。
--なるほど。ファンの皆さんが喜ぶような企画になってると。
大張社長 そうですね。で、そこのラインナップや中身、同じ商品商材であっても常時バージョンアップ、ブラッシュアップするという作業も欠かせません。なので、下手なものは出せません。
--なるほど。
大張社長 あとは横ですね。横は露出の強化が大事で、社長になって始めたわけではないということと結びつくんですが、テレビ朝日さんとの関係性の維持・発展の責任者も経営企画部長着任以来ずっと務めてきました。
--そうなんですね。あの「新日ちゃん。」も新たに始まりましたし。
大張社長 まさに、国内の方々に新日本プロレスに意図せず接触してもらう。“狙って”見ることはできるんです。“意図せず接触してもらう、視聴してもらう”機会が、やはりそのファンを増やす横方向を伸ばすためにはとっても大事じゃないですか。だからテレビは強いし、もちろんデジタルメディアも駆使してきてますけど、特にこれだけ50年弱続くブランドなので、私も祖母の影響を受けてるんですけど、テレビを通じれば2世代3世代伝わるものだと思うんですよね。親父がテレビつけてたとか、ワールドもテレビで見られます。それを傍から見てて最初何だろう?と思っても、なんだこの選手!この動き!ってなるわけですよ。例えばそういう視聴機会を「ドラえもん」、「(クレヨン)しんちゃん」、そして「ワールドプロレスリングリターンズ」として実現しています。さらに34年ぶりの金曜8時生放送までやってしまいました。
これはBS朝日さんですから、日本中から数千万人の方が視聴できます。それこそ、例えば視聴率が1%でも4、50万人にお届けできる。で、その後ろで見てる少年たち、アニメからの繋がりで見てくれてる少年たちも、もしかしたら旦那さんが見ていて、その奥様も、会場に足を運んでくれるようになるわけですよ。そういう露出の強化、新日ちゃん。もそうですね。そういうところと、海外。アメリカは失われた1年がありますよね。アメリカでの放送が、向こうのマネジメントの変更で、途絶えてしまった。そこが来年2021年には解決しておくべき重要な課題になるかなと思いますね。もちろん、解決に向けて動いています。
--なるほどですね。ギリギリのラインを教えていただいて、これからたくさんの発表を仕込んでらっしゃると思いますので、楽しみにしたいと思います。
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