【天龍プロジェクト】6.4『Osaka Crush Night 2022』試合リポート&天龍源一郎・総括

天龍プロジェクト『Osaka Crush Night 2022』
2022年6月4日(金)/大阪・豊中176BOX

天龍プロジェクトにとって3回目となる大阪大会。メインはDRAGON GATEのドン・フジイが入江茂弘、三原一晃と『アンコ3人衆』トリオで6人タッグベルトに挑戦した。かつて天龍源一郎率いるWARでスタッフとしてベルトを守ってきたフジイ。開始早々にラリアットで3カウントを奪い歓喜するも、試合は3本勝負。ぬか喜びの後、気持ちを切り替えて挑む挑戦者組だったが、新井健一郎が場外リングアウト勝ちで2本目を奪取。両軍入り乱れての決着戦も新井が死んだふりからの丸め込みでカウントを奪い、ベルトを守った。

セミファイナルでは天龍プロジェクトを引っ張る矢野啓太と拳剛が天プロリングで初シングル。11年ぶりとなるシングルマッチだったが、互いの手の内を知り尽くした者同士のぶつかり合いは時間切れドローに終わった。次回、新木場でIJシングルに挑戦する佐藤光留は船木誠勝とタッグを組んで第4試合に参戦。渡瀬瑞基・仁木琢郎を相手に“グラウンドテクニック教室”を披露して痛めつける。幾度となくエスケープで逃れた仁木・渡瀬組が最後まで粘るが、船木がハイブリッドブラスターで勝利を決めた。

▽第1試合・シングルマッチ/30分1本勝負
○冨宅飛駈[10分19秒 ギブアップ]吉田和正●
※裸絞め

大日本プロレスの若手・吉田とパンクラスのベテランファイター冨宅という異次元対決の第1試合。果敢にタックルを放ち、手首を取りにいくなど冨宅の土俵に飛び込んでいった吉田。冨宅はグラウンドで上になるとフェースロックで引き起こし、動けない状態にしてから足を痛めつけていく。身長で上回る吉田がボディスラムで反撃すると、冨宅はアームバー、ロープを挟んでロック、ヒザ蹴りと畳みかける。


吉田のエルボーに冨宅も張り手。ならばと放ったラリアットをかわした冨宅がすかさず背後を取ってチョークスリーパー。たまらず吉田がギブアップし、冨宅勝利となった。

吉田「くそ、また負けてしまった。全然ダメだ。やってる途中からもう、キャリアの差っていうのが自分で感じてしまって。悔しい。でもまだこれで終わらないから。絶対強くなってリベンジするんで。大阪はまだっぜんぜん爪痕残せていないけど、リベンジするんでまたお願いします。ありがとうございました」

▽第2試合・3WAYタッグマッチ/30分1本勝負
○男盛&レイパロマ[14:20 体固め]アルティメット・スパイダーJr.&菊タロー●
※もう1組は菅沼修&太陽塔仮面

SUSHI欠場で急遽参戦となったのはアルティメット・スパイダーJr.選手。曲者揃いのリング上にレフェリーが若干困り顔の中、ゴング。菊タロー、パロマ、菅沼が先発、手拍子で場内を煽る菅沼。3つどもえで組みあい、張り手合戦となるも余計に打たれる菅沼。ならばと島木譲二ばりの見得を切るもすべてオチを先に言われてしまい、怒りのままに菊タローとパロマをなぎ倒す。

続いて男盛とスパイダーJr.、太陽塔仮面にタッチ。マスクにふんどし姿で全身をキラキラさせている男盛に、やりにくそうな2選手。ダブルリストロックで男盛のお尻を四方へ見せつけた後に場外へ放り出し、スパイダーJr.は突進する太陽塔仮面をジャンプでかわしてヘッドシザーズ・ホイップと、手のあった攻防を見せる。

試合中盤「天龍さんに気に入られてるパロマが気に入らない」と私怨をぶちあげた菊タロー、菅沼組と組んでパロマを集中攻撃。場外では男盛の尻が観客に見せつけられる地獄絵図となる。大ピンチのパロマだったが、串刺し攻撃をかわすとヘッドシザーズで尻露出、一気に攻勢へ出る。男盛の尻攻撃でえづく菊タロー、太陽塔仮面を尻の餌食に献上すると漁夫の利を狙い混戦に突入。逃すまいと男盛のふんどしを捉えた菊タロー、あわや露出の場面で尻が顔面に落下。菊タローが息の根を止められ、試合終了となった。

負けた悔しさからか菊タローは菅沼を「たいした活躍もしていない」と煽りマイク。後輩からも見下される菅沼はパロマに八つ当たりし、シングルマッチを要求。なんとも言えない空気が流れる中、パロマは菅沼の対戦要求を「今度こそ完全決着だ、覚悟しろよ!」と受け入れるが、天龍はコメントで「中途半端で面白くなかった」と一刀両断した。

菅沼「道頓堀プロレスの後輩に見下され、こうなったのは全部パロマのせいだ。この天プロのリングでシングルで決着つけてやるからな、(菊タローの「お前のせいやぞ菅原!」の声)「なんやとオイ…アアァァァァ!(声の方へ駆け出す)」

パロマ「おい沼、おまえのせいでひどい空気になったじゃねえか。俺は今日、大先輩の男盛さんを連れてきたのにお前のせいで台無しだよ。次はシングルできっちりカタつけてやるから、覚悟しとけ!」

 

▽第3試合・6人タッグマッチ/30分1本勝負
○TORU&児玉&谷嵜[17:13 体固め]ツバサ&YASSHI&椎葉おうじ●
※垂直落下式ブレーンバスター

先に入場したYASSHIが「対戦相手、IJのチャンピオンチーム(TORU=シングル、谷嵜&児玉=タッグ)やカス野郎!大阪の第3試合やからって油断してたらな、俺たちが足元すくってやるよカス野郎!この第3試合、チェックしとけカス野郎!!」とマイク。親切なマイクの内容通り、王者チームとはいえ決して気を抜けない一戦となる。

YASSHIの「もったいぶんなや、チャンピオン来いや!全員や!」の1人突っ込みの後、天龍プロジェクト参戦後の成長著しい椎葉と谷嵜が先発。リストの取り合いからヘッドロック、跳び技で先に谷嵜へ一撃。続いてツバサが児玉をコーナーへ引き込み、YASSHIの顔面・腰へのナックル攻撃からツバサのプレス、椎葉の低空ドロップキックと繋げていく。児玉がドロップキックで切り抜けると、流れを変えるべく王者チームが飛び込む。椎葉と向き合ったTORU、チョップ合戦で倒しところへ変型逆エビ。さらに児玉、谷嵜が追撃し、椎葉にとって試練の展開となる。

椎葉の奮闘に続き、YASSHIはトリプル急所攻撃で王者陣営をかき乱す。ツバサ、椎葉のプランチャからツバサがリング中央で児玉を捕獲。あわやの場面をTORUがカットして切り抜ける。ふらつきながらも粘る椎葉をTORUの強烈なラリアットがとらえ、谷嵜、児玉から地獄の断頭台。YASSHI、ツバサの救助を受け、丸め込みを狙っていく椎葉だったがカウント2。渾身の張り手を放つもドロップキックをくらい、最後は垂直落下式ブレーンバスターに沈んだ。

TORU「椎葉おうじ、いろんな技持ってるみたいだけど、最後の張り手が一番効いたぞ、おもろいやんけ。次の新木場で佐藤光留相手にこれ(IJベルト)防衛したら、ちょっと考えたってもええぞ。またやろうぜ」

谷口「楽しかったです。頼もしかったです。すごく頼もしかったです。またやりましょう」

TORU「(谷口に)近いんですけど…」

谷嵜「またチャンピオンズで組むことあったら、またよろしくお願いします」

谷口「ぜひぜひお願いします」

椎葉「やっぱりIJのチャンピオンの壁は分厚くて、まだまだ足元にも及ばないと思ってます。でもここで諦めずに上を目指してこれからもっと練習して、天龍プロジェクトで這い上がっていきます」

▽第4試合・タッグマッチ/30分1本勝負
○船木誠勝&佐藤光留[15分15秒 体固め]仁木琢郎&渡瀬瑞基●
※ハイブリッドブラスター(ツームストンパイルドライバー)

天龍プロジェクトの顔として次回新木場ではIJシングルへ挑戦が決まっている元タッグ王者・佐藤光留。大阪ではパンクラス船木誠勝と久々に組んで天プロの新世代組を迎え撃つ。
先攻で光留と仁木、ゴングも動かない光留。隙を見逃さないとばかりに組んですぐさま極めにいく。仁木がエスケープで逃れると両軍タッチし交代、船木がグラウンドへ持ち込み腕十字の体勢、渡瀬の抵抗を楽しむかのようにヒゲ面の船木がじわじわと攻めていく。エスケープでグラウンド地獄から逃れた渡瀬、仁木は果敢に船木の背後を取って投げを狙うも船木は許さず。逆に足を取ってヒールホールド。仁木がロープに逃げると船木は光留へタッチ。

光留はミドルからリストロック、アームバー。仁木は痛みをこらえてボディスラムで振りほどくと、今度は光留が腕十字。エスケープで逃れた仁木はドロップキックから串刺し攻撃、タッチを受けた渡瀬がフットスタンプで光留を悶絶させる。

タッチを受けてゆっくりとリングインした船木、ミドル連打から張り手。渡瀬も雄叫びとともにエルボー。張り手を返した船木、不意打ちのロー。ブレーンバスターで一撃食らわせた渡瀬だったが、3カウントには至らず。最後は船木がハイブリッドブラスターで渡瀬を沈めた。

船木は健闘を称えて握手の手を差し伸べたが、渡瀬、仁木はこれを拒否。天龍源一郎は「プロレスというスポーツの見本のような試合だったと思います」とコメント。船木・光留の実力と、食らいついていった渡瀬・仁木の頑張りを評価した。

光留「どこにもないでしょう、この緊張感。これもプロレスですよ」

船木「これもプロレス。あれもプロレス」

光留「みんな始まったら手拍子起こしたり、何とか盛り上げようとして、宴会じゃん、あれじゃ。でも、それもプロレス。でも、」

船木「これもプロレス」

光留「はい、息ピッタリです」

船木「これもプロレス、あれもプロレス。俺たちは塩、こしょう」

光留「ありがとうございました」

仁木「最後、握手なんか、できるわけないでしょう。正直、今日は完敗でした。だけど、もう1回、いやもう2回、3回、何十回、何百回。船木誠勝、佐藤光留、やってくださいよ」

渡瀬「記憶は飛ばされたかもしれない、体は動いてないかもしれない。でも、俺の目を見ろ。まだ死んでねえぞ!」

仁木「何回でもあの2人相手にやってやる。やらしてください! 以上です」

 

▽セミファイナル
シングルマッチ/30分1本勝負
△矢野啓太[30:00 時間切れ引き分け]拳剛△

IJ前王者にしてUWA世界Jr.王者の拳剛と、前回の新木場大会でIJタッグから転落した矢野の約11年ぶりとなるシングルマッチ。矢野が差し伸べた手を拳剛も握り返し、クリーンに握手からスタートする。

リング中央ロックアップ、矢野が拳剛の腕を取ると、拳剛もまた取り返す。矢野は組み合って拳剛をゆっくりと倒し、腕を一度踏んでからアームバー。拳剛はショルダータックルからエルボー、ネックロック。矢野はフェイスロックと、会話のような技の攻防が続くも、徐々に展開は矢野のペースに。ヒジによる顔面攻撃にレフェリーが注意が入るが、髪の毛を踏む、つま先を噛むなど矢野の嫌がらせ的な攻撃が続く。


 

流れを断ち切るかのように、コーナーの矢野を拳剛がたたき落とし、場外ファイトで痛めつけるとリングに引き戻しフットスタンプ。ダメージを受け立ち上がれない矢野を引き起こした拳剛、エルボー。垂直落下式ブレーンバスターでカウントを迫るが矢野の足がロープへ伸びる。

ふらつく矢野、ロープ際で場外へ逃れ後頭部を押さえてダメージ大の様子。一瞬の隙をついて拳剛のタイツを引き、引き倒してすかさずエビ固め。拳剛が返すともう一度丸め込むがこれも返される。20分経過、リング中央で背中合わせに組み合った両者、矢野が競り勝って押さえ込むがこれもカウント2。ダイビングボディプレスをヒザ剣山で返された拳剛がうめく中、矢野が逆4の字。

拳剛は逃れるとブレーンバスター。残り5分、両者ふらつきながらもフォールを奪おうと競り合う展開に。残り3分、矢野が拳剛の足を極めると拳剛は逆足でキック、リング中央でゆりかもめを狙う。逃れた矢野が4の字に極めたところで残り30秒、逆4の字に切り返す拳剛。両者技を解かないまま時間切れドローとなった。

拳剛「俺らの戦いは30分じゃ足りないって、かっこいいこと言いたいですけど、今日は完全に時間に救われましたね。あんまこういうこと言うと俺らしくないですけど、あと10分長かったら負けてたかもしれないです。そう思ってしまいました。また1から出直すつもりで修行したいと思います。ありがとうございました」

矢野「あっという間、30分。まぁ拳剛選手とならまだまだ短すぎたって感じだけど、タッグのベルト失って、マイナスになったわけじゃないから。フラットに戻った。また出直しって意味でやらせていただきました。そうしたらまた好カードで。また天龍プロジェクトを盛り上げていく。以上、ノーコメント!」

▽メインイベント 

天龍プロジェクト認定WAR世界6人タッグ選手権試合 60分3本勝負

【第20代王者チーム】○新井健一郎&佐藤耕平&河野真幸[16:00 2-1]ドン・フジイ&三原一晃&入江茂弘●【挑戦者チーム】
※王者組が初防衛に成功

・1本目=○フジイ[1:46 片エビ固め]耕平●
※ラリアット

・2本目=○新井[7:10 場外リングアウト]三原●

・3本目=○新井[16:16 エビ固め]入江●
※ファイヤーボールをかわして

かつて、WARのスタッフとしてベルトを守ってきたドン・フジイがプロレスラーとなり、天龍プロジェクトのリングでそのベルトに挑戦する一戦。誰よりもベルトに対して思い入れの強い男が、入江・三原とアンコ型三人衆で王者組に立ち向かう。

先発は耕平とフジイ、ゴング直後からチョップ合戦が始まると、突っ張り連打で耕平をコーナーへ。すぐに入江、三原が飛び込んで重量級串刺し攻撃を放つ。サンドイッチラリアットから片エビでいきなりフジイが一本目を先取する。

3本勝負ということを忘れ、ぬか喜びの挑戦者組。レフェリーに抑えられて気を取り直し再スタート。不意を突かれた格好の耕平、コーナーの入江・三原に一撃を加えてからフジイを自軍コーナーへ引き込み、河野にタッチ。三原とのエルボー合戦からヒザを放ち、アラケンへ繋げる。チョーク攻撃からダウンと見せかけての不意打ち・場外戦と、自身のペースで挑戦者組を操るアラケン。カウント7で自身のみリングへ戻り、三原を蹴り落としてまんまとリングアウト勝ちを拾った。

両軍1-1からの決勝戦、狙われたのはアラケン。握手から三原の不意を突こうにも通じず、入江からキャリスプラッシュ、フジイから羽折固めと集中攻撃。なんとかフジイののど輪落としを切り返すことに成功。王者組の河野がジャンピングニー、耕平がミドルから2人がかりのブレーンバスターと連携して入江、三原を蹴散らしていく。
入江もアラケンの丸め込みを封じると、救助に入った河野をアラケンの上にパイルドライバー。さらに三原のエビルベアーボム。虫の息となったアラケンがバッタリ倒れる。救助に入った耕平へ入江がファイヤーボールを放つと、すかさずエビ固め。策士ファイトを貫いてベルトを守った。

フジイは耕平、河野の手をしっかりと握って握手。アラケンには一瞬殴りかかるような様子を見せたが、改めて向き合って握手を交わした。

入江、三原「フジイさんすみません」

フジイ「いやいや、1本目取ったし。あの流れで……ちょっと俺ら勘違いしてたね。喜び過ぎて隙が出来た」

三原「(リングアウト)20カウントだと思ってました」

フジイ「ちょっと俺ら、そういうところ無知だったかも分からん」

入江「あとは新井健一郎、許さん。フジイさんの夢であるWAR、この3人で僕、巻きたいんですよ」

フジイ「リング上でもまた組もうって約束したし、もう1回、また俺らの意気込みを認めてくれたら。またやろう。もう1回、リターンマッチでやりたい気持ちは俺ら3人強いから。負けたけど燃えてきた(がっちりと3人で握手)」

三原「必ず取るぞ次は!」

耕平「今日はアラケンさん。よく言えばテクニック、悪く言うと策士プレイが全開で、助かりました」

アラケン「コレが私の生きる道ですから。そこは信頼してもらっていいですよ、僕を。でも今後、どっか1チームくらいは、新井健一郎狙いじゃなくて、このデカイ2人から取ってやろうっていう気骨のあるやつをね、待ってます」

河野「募集します」

アラケン「最初、この3人でベルト巻くときは、どうしましょうと思ったけど。なんだかんだと言って安心できるというか、世代が固まるとね、いいですよ」

耕平「試合通してはまった感じですね」

河野「安心して繋げば大丈夫」

アラケン「天龍さんはじめ、最高のパートナーと最高のお客さんで今日もまたいい夢が見れました。私は今後まぁどう考えてもビッグなお金を残すレスラーにはなれないでしょう、でも私はこれからもずっとずっと夢の中で生きていきますから。次の挑戦者が誰か分からないけど」

耕平「楽しみにしましょう」

3人「ありがとうございました!」

天龍源一郎・総括

「レベルは高かったと思いますけど、セミファイナルしかり、何試合かは戦い慣れている者の攻防が、俺の目には“見られた景色”に見えた部分がありました。それをお客さんがどう捉えたかは分からないけど、相対的には面白かったと思います。もう一皮むけるためには、今の戦いからどれだけレスラー諸君が殻を破って新しいものにチャレンジしていけるかっていう勇気だけだと思います。そうしないと同じ景色と同じ背景になってしまわざるを得ないというのが、プロレスの行き着くところだと思うからそこは肝に銘じて。お客さんが命の次に大切なお金をはらって見に来ているわけだから、重々にレスラー諸君も認識して頑張って欲しいと思います」

<写真提供:天龍プロジェクト>

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