【KAIRIインタビュー】スターダム復帰から約1年が経過した“海賊王女”が感じる現在

⑤今年のWWE年間最大の祭典「レッスルマニア」について

――先日、WWEの年間最大のイベント「レッスルマニア」がありました。KAIRI選手も以前出場されてましたが、いかがでしたか?

私、3年連続で出させていただいているんです。やっぱ内部にいたからこそ分かるんですけど、「レッスルマニア」ウィークというのは、レスラーにとっては忙しすぎるというか、その前からもちろんそのサイン会とか試合とか、そのPR含め本当に怒涛の1週間なんですよね。

――いつも以上に忙しいんですね。

本当に忙しい!選手によっては、スケジュール分刻みぐらいで。私も日本から来てる方の取材もありながら試合やって、移動して…とか。その中で試合考えたり体調管理しないといけないんで、本当にお祭りなんですよね、選手にとっても。

――すごい高揚感ですか?

でもすごい外の盛り上がり知ってるじゃないですか、内部はやっぱり日常というか、「この日に人生の全てをかける!」みたいなのはない(笑)。女子のロッカールームも「ついにレッスルマニアだね、会場広いね」みたいな話はするけれど、みんないつも通りのパフォーマンスを出せるようにいつも通りのアップをしてる感じ。

――そうなんですね。でも日本では考えられないような規模でやってるじゃないですか。会場に一歩入ったら…

「行くぜー!」みたいなのもなく。男子とかもどうかな?って見ても同じなので、逆にそれはほっとしたというか。

――平常心というのが大事なんですかね?逆に向けビッグマッチだから意気込み過ぎても怪我しちゃうとかあるんですかね?

そうそうそう!やっぱみんな(試合までの)持っていき方分かってるんでしょうね、自分なりの。レッスルマニアが最大でそこに焦点を合わせるというよりかは、いつも通りのパフォーマンスを、いつも通りぶれずに見せきるっていう。

――だって翌日にもすぐ試合がありますもんね。

そう!次の日RAWだから(笑)。ていうのはあるけど、やっぱり試合して思ったけど、宇宙空間のような、あんな不思議な気持ちになったのはレッスルマニアの会場が初めてという気持ちでしたね。

――やはりプロレス界頂点の祭典というか、そこを夢にしている選手がいっぱいいるわけじゃないですか。

特に女子はレッスルマニア10試合くらい組まれるけど、女子の試合ってチャンピオンシップ、タッグの試合、せいぜい3か4試合あるかないかでその枠を所属選手の女子、NXT合わせると6、70人いるなかで枠を争うわけで。今回IYOさんとASUKAさんがその枠に入っていることがまず…、日本の私達からするとニュースだけ見てるので、今年も出るんだくらいの感覚になってしまうかもしれませんけど。本当にすごいことで。ASUKAさん、チャンピオンシップで負けてしまったけど、抜擢されることの凄さが、だからこそ分かるし、決まるまでの流れはみんな気が気じゃない。

――どれくらい前に決まるものなんですか?

もうその前のストーリーで決まっていくから、年明けかな…。でもギリギリまで教えてもらえないんですよね。ただ、そういうストーリーラインにいるから、もしかしたらっていうのは感づいていたかもしれないけど。

――でもIYO選手ももってますよね。WBCの決勝で、IYO選手が写っていてびっくりしました。

Twitterでもトレンドになってましたよね。

――その後、大谷選手が所属するエンゼルスの始球式もやられてましたしね。

IYOさんもコロナがあったので、私もそうでしたけど、試合がなかなかない時期とか、苦しい時期を知ってるんですよね。それを乗り超えてチャンスをつかんでいるので、本当に嬉しいですね。

――その中で日本人選手のお二人、ASUKA選手、IYO選手が出場されたというのは嬉しいニュースでしたね。

ASUKA選手はね、もう絶大な信頼感なんですよね。ASUKAさんは誰と試合しても相手の良さを引き出すし、コンディションも外さないんですよ。

――大阪弁で暴言を吐くところもいいですよね(笑)

もう、全部必要な要素…、キャラクター、マイク、試合のうまさ、コンディション、強さとか全部をコンプリートしているんですよね。怪我も少ないし、だからもう会社の信頼度が男女含めて1番だと思います。

 

⑥これからの日本の女子プロレス界に向けて

――世界最高峰の団体WWEを経験したKAIRI選手が、今後日本女子プロレス界に向けてアドバイス等はありますか?

やっぱり広げてブームを起こしていくには、ライトな層をファンとして獲得していかないといけないから、そういう人にも伝わりやすい、見やすい、分かりやすいように。キャラクターや見た目もだし、試合内容もだし、マイクとかももっともっと。日本にもみんないい選手いっぱいいるんで。

――ライト層へのアプローチですね。以前ヨシタツ選手から、日本ではマニア層に向けてプロレスをやっているけれども、アメリカでは子供に向けてやっていると。そうするとお父さんお母さん含めて誰か連れてきてくれて、子供が段々育つとまたさらに次の世代が…といういい循環になっていると伺いました。選手もキャラクターとして、フィギュアがおもちゃ売り場だけでなく、ドラッグストアなどの手軽な場所にも売っていることで、マーケットの捉え方が広いと。

そうなんですよね。選手を見に来ているというか、技とか試合内容というよりかは、この選手が見たくて来ているっていうのが多い感じはしましたね。これは関係ないかもしれないけど、WWEでは技を減らしていけと教わるんですね。いかに削って洗練していくか、だからジョン・シナとかでも超シンプルな技しかしない。上になればなるほど、本当に技をしない。こちらを焦らしてくれるというか。もうゴングが鳴って仁王立ちしているだけでお客さんは最高潮なんです。何故かというとそこまでに深く濃いストーリーとドラマがあるから。トリプルHからはよく、技も大切だけどとにかく《MAKE STORY》=サイコロジーを学び、考え、ドラマを作りなさいと言われました。頭や首から落とすなどの危険技は禁止ですし、張り手も基本的にNG。且つレフェリーが絶対的権限を持っていてとにかくルールが細かいので、そういった制限がある中でどうやって盛り上げるかをひたすら考えていました。そうして学んだことも踏まえつつ、スターダムの試合のテンポ感とどう融合させていくかが自分の課題です。

――なるほど。

加減が難しいからこそ、試行錯誤が楽しいです。パワーファイターやハイフライヤー、十人十色のレスラーがいるように世界中で色んなプロレスの伝統スタイルやリズムがあって、そのどれもが素晴らしいと思うし、闘い方に正解がないのがプロレスなので。「みんな違って、みんな良い」ですね。だから信念は持ってますが自分の考えを誰かに押し付けることはしたくないです。聞かれればなんでも答えるスタイル(笑)。

――選手層が厚くなってきているので、いろんなキャラクタ―がいる中で違いを見せるのが難しい面はありますよね。まずはいろんなところに情報発信をしていくのも非常に大事かと思います。

そうですね、やっぱり時代に合わせてPRというか。今はTikTokとかもね、流行ってるし。私もやらなきゃなとは思うけど…。ただ、発信をする上で言葉選びにはすごく気を遣わないといけないなと。ちなみになんですが、WWEでは差別用語をSNSで使うと直ちに全体ミーティングで厳重注意、罰金もしくは謹慎処分になります。対戦相手への煽りで相手の容姿や体型なんかについて言うこともNGです。

――その辺、日本は少し遅れている感じがありますね。

向こうはいろんな人種がいるからなおさらですけどね。少しずつ日本でもそういう波が来ると思います。

ーー多岐に渡るお話を伺えて有難うございました。

こちらこそ、有難うございました。

インタビュアー:山口義徳(プロレスTODAY総監督)

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