【宝城カイリ インタビュー・後編】旅立ちの決意。選手に、そしてファンに贈る言葉
宝城カイリインタビュー後編は退団について、後輩へのメッセージ、ファンに贈る言葉をお届けします。
<退団の決意。世界中の人を元気にするプロレスラーへ>
――スターダム退団を決めたポイントは何だったのでしょうか?
宝城:年齢とキャリアと自分の将来について、去年くらいから悩むようになりました。脳震盪を起こした時には引退も考えたりもしましたけど、今後の人生について考えて、最終的に「今なのかな」という決断に至りました。誰にも相談できることではないので、この決断に至るまでは本当に悩んだんですが、後輩たちも自立して活躍していますし、……今行かなくて後悔するよりは、前に一歩進んだ方がいい。
――その気持ちは止められない。
宝城:スターダムという団体で五年間やってきて、すべてにおいて全力で、すべてをささげてきた。巣立つというか、もっと大きく、人間としてもレスラーとしても、もっともっと学ぶことがあると思うし、一から修行して自分を高めて、帰ってきたいと思います。
――理想とするレスラー像は?
宝城:プロレスには、デスマッチがあったり、みんなを元気にするコミカルなプロレスがあったり、壮絶な試合もあったり、いろいろなジャンルがあります。私はどれもが凄いと思うし、どれがダメとか、どれじゃなきゃダメというのもありません。プロレスは戦いですから、それをベースにしつつ、入場などでもっともっと人を楽しませるレスラーになりたい、世界中の人を元気にするレスラーになりたいと思ったのと、もっとプロレスの神髄、もっと深い部分を知りたいと思ったので、長い旅に出て学んでみたいと思いました。
――いやあいいですね。頑張ってきてほしいです。メチャクチャ応援しています。アイアンハートで頑張ってきてください(笑)
<他人と比べずに、自分は自分の一番になればいい>
――後輩の選手に対して、カイリさんからメッセージやアドバイスしたいことはありますか?
宝城:自分が旅に出ることを決めた段階で、後輩をひとりひとり遠征中に呼んで、(旅立つことを)伝えていったんです。その時期あたりから、目に見えて後輩たちが変わった。ここ三ヶ月くらいで(宝城カイリ・紫雷イオ・岩谷麻優・美闘陽子の)四人からはキャリアの差がある、HZK・(ジャングル)叫女・(美邑)弘海・(刀羅)ナツコ。(渡辺)桃は怪我したけど気持ちは凄く強いし、あとは他団体から参戦中の小波ちゃんとか、キッズのメンバーではあずみちゃんとかも、試合内容が格段に良くなったし、みんな格段に強くなったなという印象があります。自分もそうだったし、みんなそうだと思うけど、本当に変わりましたね。
――カイリさんも、選手の離脱を経験した時にスイッチが入ったかと思います。それに似ている? 自分が支えなければいけないという使命感が出てきたのでしょうか。
宝城:自分がいなくなるまでに、試合を通しても、プライベートでもリングの下でも、後輩に伝えてきたつもりです。「一番を目指して、一番になってよ」って、全員に言ってます。
――一番になるというのは、みんなのゴールですよね。
宝城:「一番」にはいろいろな形があります。私の言っている一番は、自分が決めたこと、たとえばジャンプだけは一番高くきれいに飛ぶことでも、ベルトを巻いてトップになることでも、人気でトップになることでもいいので、自分の自信があるところを見つけて、それを極めていってほしいという気持ちです。あとはレスラーなので、強くあってほしい。一番を目指して、全員で切磋琢磨すれば、素晴らしい団体になります。
――いいメッセージです。
宝城:みんなそれぞれ、いいところって違うし、そういう意味では誰もが一番になれるんです。
――なるほど、女子プロレスの世界って面白いですね。
宝城:面白い! コツは「比べないこと」だと思いますね。他人と比べてしまうと、「私はあれができない、みんなはあれができる、いいなあ」と思ってしまって、自分のできないことばかり考えてしまいます。だけど、自分の中で、「私はこれがいい」と思ったことを流されずに極めていれば、ナンバーワン=オンリーワンになれます。
――個性を磨くのが大事。
宝城:プロレスはキャラクターが大事なので、個性や存在感が大事なんです。
――宝城さんは、自分という個性を見つけることの天才ですね。
宝城:最初は全然ダメでした。自分がめちゃくちゃ失敗しているから、他人と比べてしまって、「才能がない、向いていない、怪我ばっかり、自分は下手なんだ、辞めたほうがいい」って、ずっと思ってました。
――キャリアがないと、最初はみんなそう思うでしょう。
宝城:できないって思いこんじゃうんです。それは自分の体験でもそう。3人娘の中でも、イオさん・麻優さんと当然比べられる。イオさんは一回転したり凄い飛び技ができて、麻優さんも凄い受け身ができて、ハイスピードで凄い試合をしている。だけど私は速く走れないし、クルっと回れない……って思っていた時期があったけど、だったら自分は感情を爆発させて、ダイビングエルボーで、気持ちを込めて戦うと決めました。それからは楽になった。あきらめるより、人は人、みんなそれぞれいいところも悪いところもあるんです。
――感情を爆発させるというと、岩田美香(現・白姫美叶)さんの試合(2015年11月15日)が終わった後に、すごく気持ちよかったとおっしゃっていましたが。
宝城:あの子は自分と似ているんでしょうね。戦いながら、やられればやられるほど目が光ってくると思ったんです。私もそうだから、ああいうバチバチになるんです。向かってこない選手なら終わらせちゃいますけど、彼女はやればやるほど、ギラギラして、いい顔になってくる。
――アドレナリン出まくりですね。
宝城:楽しかったですね。またやりたいと思いました。この前は別の撮影(5月29日発売『週刊プレイボーイ』)で会ったんですけど、頑張ってほしいと思います。
――現時点のパートナーである美闘陽子さんは、一緒にやってみてどうでしたか?
宝城:陽子さんが帰ってくるって、ここ最近の中ではとてもいいニュースだったんです。過去にやっていた選手、しかも一期生のスターだった選手が戻ってきたわけですから。ずっと(宝城カイリ・紫雷イオ・岩谷麻優の)三人でやってきて苦しい時期だったので、嬉しかったです。天性の華があって、格闘技をやっていた強さもあるし、負けん気の強さもあり、だけどリングを降りたらおっとりして優しい。同性からしても魅力があります。
――刺激を受けることはありましたか?
宝城:タッグでBY宝を組めて、アメリカにも二人で遠征できました。陽子さんはいいギャップというか、ONとOFFの使い分けが巧いですね。試合になるとスイッチが入って、格闘家ってかっこいいなって思いました。
――イオさんは意識していた存在かと思うんですけど、カイリさんにとってはどんな存在でしたか?
宝城:イオさんは自分にとって縁のある選手ですし、かけがえのない存在ですね。イオさんがいなかったら今の自分はいなかった、ここまで来れてないと思いますし、イオさんは先輩なんですけど、私含め、後輩たちに個性を伸ばすための練習を見てくださったり、みんなのいいところを潰すことなく伸ばしていける指導ができる方だし、団体愛というか、自分のこと以外にも目を向けている、視野の広い先輩だと思います。で、自分も選手会長だったんですけど、その時にイオさんも支えてくださった。性格もファイトスタイルも、私とイオさんは正反対。だからこそバランスがよかったんです。これが全く同じファイトスタイル、同じ性格だったらどうなってたかわからない。
――違う個性のぶつかり合いだからこそ、よかったですね。
宝城:お互いの良さが出ました。お互いをお互いで光らせることができたのではないかと思います。尊敬しますね。
――イオさんからカイリさんへのメッセージはありましたか?
宝城:(5月31日号の)『週刊プロレス』にも書いてあったんですけど、「私にとって宝城は運命の相手、これからも試合をしていきたい……」と。
――ぐっとくる。
宝城:ご縁もあるし、違うからこそいい、という感じですよね。
――太陽と月みたいな、お互いが光を放つ存在。プロレスに対するスタンスも?
宝城:マジメですよね。
――ひとつのものに対してストイックです。
宝城:男っぽいのかな、ふたりとも? 仕事が好きというか……
――キャピキャピした会話はありますか?(笑)
宝城:キャピキャピはないなー(笑) たまにアニメの話をします。イオさんがアニメにすごく詳しくて、イオさんも私も、『はりもぐハーリー』とかが大好きなので。
――かなり昔の作品ですね(笑)
宝城:昔の作品もめっちゃ知ってて、そういうのが大好きで、盛り上がったりします(笑)
――世界のどこかで一緒に戦う舞台があるかもしれないと考えると、楽しみです。
宝城:どうなるかわからないですけど(笑)
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