進化するスターダムにマッチメークの妙 ユニット超越や同門対決で注目カード続出!


<写真提供:スターダム>

 結果、羽南&飯田はNBタッグを防衛し、ゴッデス戴冠はならなかった。立場としては変わらないが、彼女たちにとっては大きな経験となっただろう。代々木大会終了後、羽南&飯田に一連の闘いを振り返ってもらった。

「ずっとタイトルマッチをやってる気分でした。STARS同門で手の内を知ってるからこそやりづらい部分もあって、前哨戦を含めすごくアタマを使いましたね。そこにNBタッグもあって、ふたつのタイトル戦はそもそも作戦が変わってくるし、立場の違いからプレッシャーも大きかった。どちらかというと、NBを守る方がプレッシャーでした。前哨戦の連続から始まり、こんなに大変な2日間(タイトル2連戦)はなかったです(苦笑)。でも、このカードによって2人でプレッシャーを分け合い、お互いのチャレンジ精神を高めていけたと思います。自分たち、会社に試されているんだろうなとすごく感じました。今回、ゴッデスは取れなかったけど、乗り越えた意味では100点かなって(笑)」(羽南&飯田)


<写真:新井宏>

 また、これらのカードはNBタッグに挑んださくら&玖麗にも試練だった。ベルトが懸かった試合とはいえ、ふたりはまだ自力未勝利。玖麗にはシングルでの白星があるが、反則勝ちという不本意なもの。そんなふたりがタイトルに挑んでいいものか。賛否あるのは当然だろう。それでもふたりはシングルでの前哨戦も含め果敢に挑んだ。結果、今回のNBタッグ戦は若手ブランド「NEW BLOOD」屈指の好勝負となったと言えるのではないか。さくら&玖麗の必死さが、NB本来のテーマを最大限に体現したからである。

「勝っていない状態での挑戦は不安でしたし、若手が揃ってるユニットってここしかないから選ばれたんだろうという感じがして、素直に喜べなかったです。でも、ふたりの初勝利で揃って初戴冠となれば過去に例がない結果になるので、みんなをぎゃふんと言わせてやろうと、ポジティブな気持ちで臨みました」(さくら&玖麗)

 結果的にはこちらも敗れ、初勝利も初戴冠も持ち越しになった。が、最初から飛ばしに飛ばした勢いが衰えず、気持ちも折れなかった。これこそがさくら&玖麗にとって最大の収穫ではないか。今後の飛躍が期待できそうだ。


<写真提供:スターダム>

 また、4・27横浜BUNTAIで大江戸隊を追放されたスターライト・キッドは、中野たむに勧誘され、岩谷麻優にも古巣復帰を促された。無所属となったキッドは以来、ユニットめぐりの旅に出る。全ユニットとのチームを結成したことで、興味深いカードが続出したのである。

「最初は無理やり中野選手と組ませたんですよね。でもキッド選手からは、『どうせならこの期間を楽しみたい』と伺いまして、じゃあいろいろなユニットと組ませてみようかなと思ってカードを決めていきました。また、キッド選手と組みたいと声を出す選手もいれば、出さないユニットもあるわけです。だったら声を出さないところと組ませたらどういう反応が起こるのかと思い、組んだカードもありますね」(岡田社長)

 これにより、キッド絡みのあらゆる組み合わせが実現した。大江戸隊入りでヒールの適性が開花したキッドながら、全ユニットとのチーム結成から、あらためてさまざまな可能性が感じられた。見る方には新鮮で、キッド本人にもさまざまな発見があっただろう。さらには声を上げなかったユニットにも、いろいろな意味で気づきがあったに違いない。


<写真提供:スターダム>

 ユニットを超越し、今後の道を模索していったキッド。ユニット超越と言えば、タイトルマッチの前哨戦でも通常の枠にとらわれないマッチメークが施されていた。近いところでは、6・22代々木に向け6・16大阪で組まれた舞華&葉月&コグマ組vsジーナ&羽南&飯田組の6人タッグマッチだ。これはワールド・オブ・スターダム王者・舞華とゴッデス王者の混成トリオが挑戦者と対戦する図式。ともに同門対決で、赤いベルトを争う舞華とジーナはE neXus V(イーネクサスヴィー)でアーティスト・オブ・スターダム(6人タッグ)王座も保持している。

それに遡る4・27横浜前の4・21大阪では、舞華&岩谷&安納サオリのシングル王者トリオが実現、舞華の赤に挑む渡辺桃、安納の白に初挑戦する羽南との前哨戦がユニットの枠を越えておこなわれた。

「ユニットでの闘いが基本にありますがプロレスは個人闘争でもあるので、こういうカードもありかと思います。守る側と取りにいく側、お互いに気持ちって一緒だと思うんですよ。横に並ぶことによって、たとえば王者側が『こっちのベルトの方があのベルトより上だ』というプライドを持って前哨戦を闘ってもらえれば、もっともっと新しい化学反応が生まれると思うんですよね。あと、もったいぶるのはやめようかなと思って。いまのサイクルの早いスポーツ界、エンタメ界でもったいぶっていたら旬を逃すような気がするんです。もちろん特別なときのために取っておく試合もありますけど、ウチは試合数が多いのもありますし、だったらいろいろ組んでいった方がいいと思うんですよね」(岡田社長)


<写真提供:スターダム>

 6・22代々木では、刀羅ナツコ率いる大江戸隊がクイーンズクエストを事実上の解散に追い込んだ。独りとなった上谷沙弥、追放処分のAZM、妃南、レディ・C、天咲光由の去就はどうなるのか? そしてこの日、キッドはすず&星来とともに新ユニット結成の動き。選手の言動、結果に応じたカードがこれからも組まれていくだろう。本稿掲載日(6月28日)から新日本プロレスの子会社になるスターダム。今後のマッチメークからますます目が離せなくなりそうだ。

インタビュアー:新井宏

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