君はJ・J・JACKSを知っているか 蘇る「怨念坊主」飯塚高史の若き日の勇姿

【柴田惣一のプロレス現在過去未来】

「怨念坊主」飯塚高史が地獄の底から蘇った。新日本プロレス9・14北海道・登別大会に殴り込んでくる。

まさかの展開に驚いた。登別ランボーと銘打たれた時間差バトルロイヤル。20選手が登別温泉入浴券を争うが、参加レスラーに飯塚がエントリーされた。

2019年2月に引退した飯塚だが、今年の1・4東京ドーム大会のニュージャパンランボーに突如、姿を現し大暴れ。鍛え上げられた肉体は健在で、コンディションも良く、アイアンフィンガー・フロム・ヘルを自由自在に操っていた。

お約束だったテレビ朝日の野上慎平アナウンサーを「裸にネクタイ」にするテロ攻撃も健在。多くのファンを喜ばせた。

坊主頭にヒゲ。迫力ある表情は現役時代そのままだったが「怨念坊主」に変身する前は、イケメンファイターの一人として人気を集めていた。

1985年に入門し86年にデビュー。ヤングライオン時代から女性ファンの視線を集めていた。本名の孝之から「タカちゃん」と呼ばれ、シャイな性格で恥ずかしそうに照れまくっていたが、それがかわいいとますます女性たちのハートをつかんでいる。「あの人、素敵ね」と女子レスラーからの人気も高かった。


©新日本プロレス

93年には同じく女性人気の高かった野上彰(現AKIRA)と「J・J・JACKS」(ジャパニーズ・ジョリー・ジャックス=日本の陽気な男たち)を結成。カラフルでヒラヒラがまぶしいド派手なコスチュームでリングを縦横無尽に動き回った。

当時としては画期的なチーム名であり、コスチュームだったが、どちらかというと堅実な性格の二人は照れてしまい、ぎこちなさを隠せなかった。特に飯塚は控えめでおとなしい。となるとファンも乗り切れず、せっかくの個性的なチームも人気の波には乗れないまま解散してしまった。

後日、AKIRAは怨念坊主に化身した飯塚の姿に「あ~あ、こんなになっちゃって。まさかって感じ。信じられないよ」とタメ息。「あの時、照れを吹っ切り、陽気な男たちになり切っていたら、俺たちはどうなっていたかな。アイツも俺ももっと違ったレスラー人生を送っていたかも」と複雑な表情だった。


(写真:柴田惣一)

日本プロレス史に刻まれたJ・J・JACKS。他にも棚橋弘至、鈴木健三(当時)、佐々木健介、ブルー・ウルフのスウィング・ロウズや、ロード・ウォリアーズのホーク・ウォリアーと佐々木健介が変身したパワー・ウォリアーのヘルレイザース、スコットノートンとヘラクレス・フェルナンデスのジュラシック・パワーズ、そしてドラゴンボンバーズなど、今や伝説のユニットも懐かしい。「あ~あった、あった!」と忘れていた記憶が蘇り、当時の思い出に花が咲くこともある。

もはや飯塚は新日本プロレス道場近くの等々力渓谷にある祠に「飯塚高史」の魂を封印し、クレイジー坊主に生まれ変わってしまった。口から出て来るのは「ウガ、ウガ」のみ。息遣いなのか雄叫びなのか、もはや言葉も忘れている。

故郷・室蘭市に近い登別大会に地獄の底から人間界に戻って来る。登別ランボーを制し、名湯に体を浸せば、封印した魂を取り戻せるのか。目が離せない。


(写真:柴田惣一)

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