レスリング一家の誇りを胸に“新三冠王者”デイビーボーイ・スミスJr.がさらなる高みを目指す 最強タッグリーグ戦から次なる闘いがスタート
©全日本プロレス
全日本プロレス、いや日本マット界の暮れの風物詩「世界最強タッグ決定リーグ戦」が開幕(9日、東京・後楽園ホール)。世界タッグ王者・斉藤兄弟と並んで優勝候補にあげられるのが、11・4北海道・札幌大会で誕生した新三冠王者・デイビーボーイ・スミスJr.とエース・宮原健斗の最高コンビだ。
開幕戦では「バカの時代」離脱を表明した諏訪魔、鈴木秀樹組を相手に熱闘を展開。スミスJr.が諏訪魔をブルドックボムで仕留めて三冠王者初陣を白星で飾った。
宮原が「全日本プロレス。最高ですか?」と呼びかけ、ファンの「最高!」から、スミスJrの「アイ・ラブ・ゼンニッポン」で大円団となった。
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スミスJrはプロレス界を代表する名門ハート一家の一員。父デイビーボーイ・スミス、叔父ダイナマイト・キッドを始めブレッド・ハートら多くの名レスラーがファミリーに名前を連ねている。
幼少のころからプロレスに囲まれて成長し、父スミスの日本土産を楽しみにしていた。8歳にして、それまで遊び場にしていた祖父スチュが設立した道場「ダンジョン(牢獄)」に正式に入門し、プロレス興行にも出場している。正式なデビューは2000年だが、39歳ですでにキャリアは30年を超えている。まさにプロレスの申し子である。
新日本プロレス、IGF、ノアなど日本の各団体や米WWEなど多くのリングに上がった。いくつものタッグ王座ベルトを獲得している。米国ではシングル戦線でもベルトを腰にしたが、今一つ本来の実力を発揮できずにいる印象だった。
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三冠王座は待望のベルトだった。父スミスも叔父キッドも手にできなかった栄光の証しに「これこそナンバー1王座。俺が真の王者になる」と嬉しさを爆発させた。
さまざまな格闘技が道場を構える日本が大好き。多くの外国人選手と交流も深い、伝昭プロジェクトマネージャー・藤井敏之氏は「とにかく研究熱心。一人でいろいろなジムや道場を訪れ、練習やスパーリングに汗を流す。遠隔地でも時間があれば自費で単身、出かけていく」と半ばあきれ顔だ。
※ライレージム京都で松並修代表とスパーリングするデイビーボーイ・スミスJr.【写真提供・藤井敏之氏】
先日はライレージム京都に新幹線から在来線に乗り換え訪問。英ランカシャー地方伝統のキャッチ・アズ・キャッチ・キャンに取り組んだ。基礎練習から実技練習を練習生たちとこなしスパーリング。松並修代表の指導に耳を傾け、実戦さながらの攻防を繰り広げた。シャワーを浴びる間もなく、新幹線に飛び乗って帰京している。
気になる格闘技道場があれば足を運ぶのだから、驚くほどの探求心、向上心だ。
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長年のファンからは「大型揃いの全日本のリングが合っているのでは。やっと報われ嬉しい」という声が多い。
三冠奪取後、リング上で「コンバンハ!」と日本語で挨拶すると、すぐ涙声になり「みんなに感謝したい。日本のファンのサポートに。そして自分の先輩たちにはとても助けてもらった」と感謝の言葉を述べた。トーキョー・ジョー(大剛鉄之助)の名前も挙げたのには驚いた。礼儀知らずが多い昨今、受けた恩や感謝を忘れずにいるとは素晴らしい。
さらに「父が亡くなってから、うまく行かないことが続いた。でもそんな時でもいつも夢を持っていた。三冠王者になるという夢だ。ファンのみなさん、あなたたちがいなければ何も成し遂げられなかった」と魂のこもったコメント。温かい声援と万雷の拍手に包まれた。日本そして日本のファンへの愛が伝わって来た。
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スミスJrにとっては三冠王座に加えて最強タッグ優勝からの世界タッグ王座奪取。ズバリ五冠王さえも通過点だろう。ハート一家のプライドを胸に、強さの頂を目指して走り続ける。(敬称略)
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