スターダム玖麗さやか「自分の思いを表現する」美術とプロレスの共通点

【WEEKEND女子プロレス#40】

 スターダムの玖麗さやかが、まもなくデビュー1年を迎える。玖麗は昨年のクリスマス、若手興行「NEW BLOOD」で上谷沙弥を相手にデビュー。その後、中野たむのコズミックエンジェルズに加入し、ここまでトータルで100試合を超えた。プロレス漬けとなる激動の一年だったわけだが、ほんの数年前まで、彼女はまったくプロレスを知らない、それどころかスポーツとはまったく無縁の文科系だったという。

「バイト先の居酒屋さんにプロレス好きのお客さんがいたんですよ。プロレスおもしろいよって言われて、それがスターダムでした。そこから見てみようかなと思って、高田馬場の大会(2022年9・24)に行ってみたんです。それがちょうど5★STAR GPの試合で、プロレスってこんなにおもしろいんだと感じました。それまで格闘技系って怖くて見られなかったんですけど、実際はイメージと違っていましたね」

 翌日も同所で大会があり、そちらにも足を運んだ。しかし…。

「あれ? 思ってたのと違う。プロレスってこうなのかな…」

 それは、エンタメやゲーム性に特化した別ブランド「ショーケース」の大会だった。もしもここで興味を失っていたら、彼女はプロレスラーにはなっていなかっただろう。

「そうですね。でも、ビッグマッチがあると教えてもらって、5★STARの決勝(10・1武蔵野の森)に行きました。このとき、あんなに豪華に入場できるってカッコイイなと思ったし、闘う理由があって全力で闘うのって気持ちいいんだろうなあって。とくに、たむさんとジュリアさんの決勝戦、舞華さんとひめかさんのドローになった試合を見て、こんなにすごいことを同年代くらいの女性がやってるんだ。だったら私も若いうちにやりたいと思って、即、応募したんです」

 思いたったらすぐ行動。なんでも自分でやってみたいタイプだと彼女は言う。当時の彼女は、美術大学をめざす浪人生だった。第1志望は超難関。何年も浪人するのが当たり前の世界だった。将来は油絵で生計を立てたいと考えており、勉強と同時に学費を稼ぐためにアルバイトをしていた。が、それはちょうど国公立の第1志望をあきらめ、私立の美大に行こうかと考え始めていた頃でもあった。そしてプロレスを知り、プロレスラーになろうと決めたのである。

「美術をあきらめたわけじゃないんです。プロレスでいろいろ経験してから描く絵って、もっといいものができるかもしれない。絵はあとからでもできるけど、プロレスはいましかないと思ったんですよね。だから美術はいったん置いておいて、いまはプロレスに集中しようかなって」

 とはいえ、スポーツ経験は「体育の授業だけ」。練習生になり、いままでとは正反対の生活が始まった。

「違和感ありました。後悔じゃないけど、自分は場違いだなって。無理かもっていう気持ちもよぎりましたね。でも、これ(練習)を乗り越えれば、きっとあの舞台でプロレスができる。だからがんばろうと思えました。自分がプロレスラーになったときを想像しながら練習していましたね。たとえば、こういう音楽で入場したいって、その曲を聞きながら道場に行ってたんです」

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