IWGPのGは後藤のG 新日本プロレスの荒武者・後藤洋央紀が悲願のIWGP世界ヘビー級王座取りに挑む

【柴田惣一のプロレス現在過去未来】

荒武者・後藤洋央紀の好きな寿司ネタはカンパチだという。出世魚のひとつで、地域や大きさで呼び名が変わっていく。

まだ若手選手の一員だったころ、後藤と「まずはヤングライオン杯優勝。続いてG1制覇。そしてIWGPヘビー級ベルトだね」と言葉を交わした。出世魚・カンパチになぞらえて、新日本プロレスでのし上がっていく後藤の勇姿を思い浮かべたものだった。

2003年のデビュー後、05年のヤングライオン杯を勝ち取った。初出場した08年のG1を「G1のGは後藤のG」との雄叫び通り見事に制した。


Ⓒ新日本プロレス

棚橋弘至、中邑真輔、真壁刀義らとともに新日マットのトップ戦線を争い、IWGPベルト奪取もすぐにでも実現すると見守っていた…。

頭角を現わしてきた内藤哲也に「あんたは新日の四天王にふさわしくない」とかみつかれたこともあった。IWGPヘビー級王座を獲得できないでいた後藤への痛烈な指摘だった。この後の対戦では内藤を退けたものの、IWGPヘビー級王座取りでは内藤に先を越されている。誰よりも後藤自身が悔しい思いをしているはずだ。

NEW JAPAN CUP、IWGPインターコンチネンタル王座、NEVER無差別級王座などシングルタイトルを奪取しているのに、IWGPヘビー級(現IWGP世界ヘビー級)ベルトは手に入れていない。

「若武者」と呼ばれた後藤も45歳。2・11大阪大会でIWGP世界ヘビー級王者ザック・セイバーJrに挑むが、9年ぶり9度目の頂点への挑戦だ。


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後藤と言えば多くの必殺技を生み出してきた。GTR、昇天、ゴトウ・スペシャル、村正、牛殺し、地獄車、昇龍結界、野武士固め、後藤式、回天…さまざまな投げ技、絞め技、丸め込み技、フィニッシュホールドを考案してきた。


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パワーに加え、器用さを兼ね備えており、野武士の様な出で立ちから変幻自在なファイトを披露。最近はキャリアを重ねた巧みの動きも披露している。

23年のプロレス大賞でYOSHI‐HASHIと最優秀タッグチーム賞、24年にはベストバウト(vs辻陽太)と、ここ2年続けて受賞したように、衰えは感じないが、若返りが進む新日マットではラストチャンスになりかねない。


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後藤も決意を固めている。昨年2月に亡くなった父に思いを馳せ「ベストバウト受賞という良い報告ができた。2・11大阪大会での挑戦という流れは、亡き父がくれたもの。引き続き天国の父に最高の報告ができれば」と熱い。

最愛の父は電気関係の仕事に従事していた。三重県桑名市の実家には当時も珍しかった個人宅用エレベーターが設置されていたが、これも父のおかげだった。

観戦に訪れた子どもたちをリングにあげるなど、家族愛にあふれているのも、父を始め後藤一家が幸せな家庭であることの証しだろう。


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1・19千葉・佐倉大会で王者ザックとタッグマッチで激突。バックドロップ、牛殺しで叩きつけ、激しい打撃戦を展開。「俺は時代を戻そうなんて思ってない。新しい時代を作るんだ。後藤革命についてこい」と豪語した。

ザックに「G1のGは後藤のGじゃない。IWGPのGも後藤のGじゃない」と毒づかれたが、もちろん2・11大阪大会でベルトをいただくつもりだ。

父へ悲願のIWGP獲得を「IWGPのGは後藤のG」と報告できるのか。後藤の晴れ姿が楽しみだ。

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