丸くなった!?中島安里紗、レスラーからスタッフへの転身でSEAdLINNNGの未来を創る!

 プロレスラーとして他人から見られる立場ではなく、選手たちを見る立場になった。闘うのは選手たちで、自分はそれをサポートする。ときに「悪魔」とも呼ばれた怒れる中島安里紗はレスラーとしてひじょうに魅力的だったが、これからも同じでは、「ヤバいですよね、ヤバいです!(笑)」。気持ちはもう完全にスタッフだ。

「大会に向けての事務作業はもちろん、今年はスポンサーも獲得していかないといけないと思っています。新人たちを売り込む仕事もそうですし、プロデュース的なこともしないと」と、中島。選手たちにかける言葉も、現役時代とはまったく異なる。

「自分がスタッフになったとき、一番最初に若い子たちに言ったのは、『私はもう選手じゃないから気軽になんでも言ってきて』ということでした。先輩レスラーだと思うと気を使ってしまうし、こっちも現役だとプロとして甘やかすわけにはいかないから線を引いてしまうところがあるんですよね。選手だとやっぱり負けたくないから、どうしても壁を作っちゃうんですよ。ここから先には入ってこないでって。でも、いまは全然(笑)。私はもう違うからなんでも言ってきてほしいと伝えているし、メンタルケアもしっかりして相談に乗ってあげたい。なんでも言いやすい環境を作ってあげないといけないと思っていますね」

 また、現役時代の経験も活かし、コーチも兼任。ただそこに関しては、さすがにまだ負けたくない部分があるようで…。

「スパーリングではまだまだ若い選手に負けられないと思ってます(笑)。1カ月、1年は絶対に取られないぞという気持ちですね。というか、向こう3年は粘ろうかなって(笑)。技術的な部分は南月さんで、私は基礎的な部分と手分けして(教える)。パッと見てシードリングの選手だとわかる選手を育成していきたいです。バチバチの女子プロレス、魂の女子プロレス、本当の闘いを見せられる選手」

 そこには、現在の女子プロ界に対する危機感がある。昨年は中島が引退し、今年は4月に里村明衣子、5月に高橋奈七永が現役を退く。“闘い”を標榜してきたベテランが次々と去ってしまうのだ。

「いま、入場して向かい合ったときに緊張感のない選手が多すぎると思ってて。向き合ったときにお客さんがグッと手に汗握るくらいの緊張感をしっかり出せる選手。リングに上がったら、やるかやられるか。そこをしっかり見せられる選手を育てたいんです」

 1月30日には中島がマネジャーになってからはじめてのプロテスト。練習生2名が参加し、基礎体力やスパーリングを1時間近くに渡りおこなった。中島と南月が審査し、1名(練習生ゆき)が当日追試の末に合格、3・20カルッツかわさきでのデビューをめざすことになった(リングネームは後日発表)。もう1名は故障もあり練習の成果を出すことができず、後日、再試験がおこなわれることに。

「本人たちはもちろんですけど、私もドキドキでした。というのも、審査する私たちだけではなく、ほかの人たちも見てるわけですよ。こっちが教えてきたものが見られるから、私がテストされているような気持ちにもなりましたね。『コイツらなにを教えてきたんだ?』と思われたくないですから。結果的にひとりが合格になりました。追試でしたけど、あれは南月さんの考え。私は最初から合格だったんですよ、いいんじゃないですかって(笑)。でも南月さんが、もうひと踏ん張りできるかの気持ちを見たかったんでしょう。それで、見事合格。落ちた子にはヒザの痛みがあったので、やってほしいとは言ってないんです。前日に病院に行って大丈夫との判断から、やるかやらないか、あとは自分で決めなさいと。ふだんから無理はさせないし、痛かったら(練習を)抜けなと言っているんですが、でもプロになる限りは無理しないといけないときって絶対にあるんですよ。なので2人とも、気持ちを確かめるためのテストでもありました」

 プロの厳しい目も持ちつつ、優しさも兼ね備える。両方の立場を知る中島の存在は、これからのシードリングにとって大きな武器となるだろう。

「スタッフになって興行全体を見られるようになったと思います。選手のときは自分の試合が一番だと思ってたし、対戦相手にも絶対負けないつもりで闘っていました。ほかの試合の選手にも負けたくなかったですから。でもトータルで見るようになって、最初から最後までメインみたいな試合が続くって微妙だし、似たような選手、似たような試合っていらないと思うようになりましたね。そこで思ったことを今後のシードリングに活かしていきたいし、今年はシードリングの10周年イヤーなんですよ。8・22後楽園が記念大会になります。ホントだったらそこで大きなことぶち上げればいいんですけど、いま所属の若い選手が2名(光芽ミリア&花穂ノ利)で、練習生が2名。まずはこの子たちを一人前にすることが先決です。そのための一年間にしないといけないと考えているので、私としては新生シードリングの一年目という意識が大きいんですよね。中島安里紗がいなくなったから闘いがなくなったじゃダメだし、そこをフリー、他団体に頼るのもダメ。それを誰が見せるのか、アナタたちだよって。シードリングには道場もあっていつでも練習できる環境が整ってるんだから、そのための時間と全精力をプロレスに注ぎ込んでほしいなって思いますね」

 人数こそ少ないが、シードリングにはプロレスに対するしっかりとした考えがある。中島が描く女子プロレスがどこまで若手に伝わり体現されるのか。今後のシードリングを長い目で期待したい。

インタビュアー:新井宏

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