【ビッグベアー興行】佐野直、格闘探偵団との試合を『イデオロギー闘争』と位置づけ「素人のビッグベアーが無傷で終えれば、バチバチスタイルの価値が問われる」
「ビッグベアー興行TOKYO SQUARE in Itabashi」が2月22日に開催される。メインイベントでは、ビッグベアー軍が格闘探偵団・阿部史典&野村卓矢組と激突する。プロレスラー・佐野直は、この試合を「イデオロギー闘争」と位置づけ、「素人のビッグベアーが無傷で自分の足でリングを降りれば、バチバチスタイルの価値が問われる」と指摘した。
ビッグベアー興行 TOKYO SQUARE in Itabashi
日時:2025年2月22日(土)開始18:30 開場17:30
会場:TOKYO SQUARE in Itabashi
▼ビッグベアー軍 vs 格闘探偵団
仁義なき戦い 板橋代理戦争
ビッグベアー&佐野直
vs
阿部史典&野村卓矢
①ビッグベアー軍 vs 格闘探偵団、試合への意気込み
――ビッグベアー軍 vs 格闘探偵団の試合に向けた意気込みを聞かせてください。
実は昨日、2AWのナカ・シュウマの記事を読んでいたんです。格闘探偵団の試合が話題になっていたのですが、「俺たちの試合もあるのになんで注目されていないんだ?」と思って、今回プロレスTODAYさんに取材をお願いしました。こうして取り上げてもらえて、本当にありがたいです。
ビッグベアーさんというのは、完全に素人の方です。そんな方が、あのバチバチスタイルの阿部&野村と戦うわけです。普通に考えたら無謀ですよ。でも、もしビッグベアーさんが無傷で自分の足でリングを降りられたら、それは格闘探偵団のスタイルを否定することにもなるんじゃないか、とも思うんです。
――プロレススタイルの対立という側面もあるわけですね。
そうです。これは一種のイデオロギー闘争ですよ。普通のおじさんがバチバチスタイルの戦いに挑んで、もし生きて帰って来られたら、それだけで勝ちですよね。逆に阿部&野村からしたら、「格闘技の厳しさを見せつけなければいけない」という使命があるはずです。ここがこの試合の面白いところだと思います。
――阿部&野村選手は、かなりの実力者ですから、ビックベアー選手は大丈夫でしょうか?
もし手加減するようなことがあったら、それはもうプロじゃないです。手を抜いた料理を出すレストランなんて誰も行きたくないでしょう?同じことですよ。お客さんは戦いを見に来るわけですから。だから、彼らが全力で来ることは間違いないと思います。
でも、それこそがバチバチスタイルの試金石になると思うんです。普通なら、プロレスラーとしての鍛錬を積んでいる選手が戦うのが当たり前。でも、今回は違う。ビッグベアーさんはまったくの素人です。そんな相手に対して、彼らが本気で戦ったときに、果たしてどうなるのか?
――ビッグベアー選手にとっては、大きな試練になりそうですね。
だからこそ、僕は今回の試合で完全にサポート役に徹します。ビッグベアーさんを前に出して、どうなるのかを見守るつもりです。もしビッグベアーさんが無傷でリングを降りたら、それはバチバチスタイルが覆されることにもなるかもしれません。
――逆にビッグベアーさんはよくこの試合を組みましたね。
正直言うと、ビッグベアーさんは甘い考えを持っているんじゃないかと思っています。格闘探偵団の試合が人気だから、自分たちも呼べば客が来るだろう、みたいなね。でも、そんな簡単なものじゃない。なめてかかると大変なことになります。
ただ、僕はお客さんがこの試合にどんな反応をするのか、すごく興味があります。プロレスはエンターテインメントでもありますが、戦いでもあります。お客さんは何を求めているのか、そしてこの試合がどんな結果を生むのか、それが楽しみです。
――佐野選手自身は、この試合にどう臨みますか?
僕はあくまでビッグベアーさんのサポート役です。でも、試合の流れによっては、僕が前に出る場面もあるかもしれません。ただ、今回の主役はあくまでビッグベアーさんです。
格闘探偵団の二人がどこまで本気で来るのか、それによって試合の意味が大きく変わります。彼らがバチバチスタイルを貫くなら、それはプロレスの新しい可能性を見せることになるかもしれないです。だから阿部&野村は笑いプロレスに逃げれないと思います。
――確かに、プロレスのジャンルとしての純度が試される試合ですね。
そうです。プロレスにはさまざまなスタイルがありますが、バチバチスタイルはその中でも特にシリアスなものです。それを素人が体験してどうなるのか。これは単なる一試合ではなく、プロレスの本質に関わる大きな試みだと思っています。
――今回の試合、改めてどんな点に注目してほしいですか?
この試合は僕らプロレス業界関係者ももっと注目しなくちゃいけないと思います。お客さんには、ビッグベアーさんがどう戦うのか、そして阿部&野村がそれをどう受け止めるのかをしっかり見てほしいです。この試合は単なるメインイベントではなく、一つの実験でもあります。果たしてバチバチスタイルはどこまで通用するのか、それとも覆されてしまうのか。ぜひ会場で見届けてください。
②阿部、野村選手の印象
――阿部史典、野村卓矢選手の印象について
阿部は名古屋のスポルディーバにいて、デビューする前に僕がそこで自主興行をやったときに、彼はプロレスを辞めようとしていたんです。辛くて、キツくて、一度は諦めかけていた。でも、僕の興行を見て「こんなに楽しそうにやってるプロレスがあるんだ」と感じたらしく、それで踏みとどまったそうなんです。
それを後から本人から直接聞いたんですが、「それは俺じゃなくてマスコミに言え」と伝えました(笑)。僕に感謝するのはいいけど、それを周囲に広めてもらったほうがいいですからね。実際、今の阿部選手があるのは、少なからず僕の影響もあると思っています。でも、これを僕自身が言うと格好悪いので、ぜひ彼自身の口からもっと語ってもらいたいですね(笑)。
それくらい彼とは長い付き合いで、レスラーとしては赤ちゃんの頃から知っていて、2015年に僕が両国国技館で自主興行を行った際、阿部は名古屋から新幹線でわざわざ観戦に来てくれました。チケットも自分で購入して。その時のことを考えると、僕の世代の少し下の選手たちの中では、最も関係が深い存在だと勝手に思っています。
ただ、面白いことに、彼はSNSやマスコミの前ではそのことをまったく言わないんですよ。でも、僕には直接言ってくる。「いや、それは俺じゃなくてマスコミに話せ、周りから聞くや記事で見たい」といつも思うんですが(笑)。
――今回、格闘探偵団入りした野村選手についての印象は?
正直に言うと、全く分からないですね。おそらく挨拶くらいはしているかもしれませんが、顔を見ても気づかないレベルです。つまり、まだしっかりとした接点がないんです。
でも、予備知識を入れない状態でリングに上がりたいですね。「この選手はこんなに強い」「こんな技を使うんだ」といった情報が頭に入ってしまうので。だからこそ、何も知らないまま試合に臨むのも、ある意味ではフレッシュで面白いかなと思います。
もしかしたら会場ですれ違いざまに挨拶したことがあるかもしれませんけど、ほんとに分からない選手です。
③佐野選手から見た今大会注目の試合は?
――今回のビッグベアー興行で佐野選手が注目する試合はありますか?
いや、特にピックアップしたいカードはないですね(笑)。まあ、いくつか試合はありますけど、どれも「これ!」というものではないです。
――そうですか?
ビッグベアーさんって、いいところも悪いところもあって。毎年1〜2回くらい興行をやるんですけど、普段は王子のBasement Monsterっていう小さい会場を使うんですけど、毎回札止めになっちゃうくらいなんです。選手の人選がめちゃくちゃなんですよね。主催のビッグベアーさん、お酒が好きな方で、いろんなお店で隣に座ったレスラーと飲んでるうちに「試合出てよ!」みたいな感じでどんどん選手が増えていく(笑)。結果、控え室が足りなくなるし、満員札止めになってもギャラが追いつかない、みたいなことがよくあるんです。
――今回の興行もそうやって集まった選手が多い?
たぶん、そうでしょうね。ビッグベアーさんが、どこかで飲んで一緒になったとか、そういう感じだと思います。
――そういう人脈で広がっていく興行なんですね。
人脈って言っていいのか分かんないですけどね(笑)。でも、そうやって集めた選手でカードを組むのがビッグベアー興行の特徴だし、そこが魅力でもあるんです。例えば今回、「仁義なき戦い 板橋代理戦争」や「栃木から東京は意外と近いよ!!」サブタイトルがついてますけど、どれもさぶっていうのばかりです(笑)。でも、そういうところが面白いし、ビッグベアーさんらしさなんですよ。
――そういう独特の雰囲気があるんですね。
そうなんですよ。ビッグベアー興行っていうのは、結局のところ、ビッグベアーさんの世界観が好きな人たちが集まってるんですよね。観客もそうです。会場は老若男女、プロレスファンもいれば、普段プロレスを見ないような人も来る。だから、興行としては否定できないんですよね。初めて来る人も楽しめるし、リピーターもいる。よくある「○○株式会社提供」とか、スポンサー名がバン!と出るスタイルとは違って、例えばビックベアーさんがよく行く喫茶店のお母さんとかが花束贈呈に来るんですよ。身近な人たちが支えてる感じが強いですね。
――そういうのは他の団体ではあまり見ないスタイルかもしれません。
だから、ビッグベアーさんのプロレスに関しては何も肯定できないんですけど(笑)、興行はすごいなと思いますよ。普通、プロレス興行って利益を出すのが前提じゃないですか。でも、ビッグベアー興行がちゃんと利益を出してるのかは分からないけど(笑)、それでも毎回やれてるってことは成立してるんですよね。
――佐野選手から見て、ビッグベアーさんってどんな人なんですか?
嘘つきですね(笑)。
――えっ?
いやいや、悪い意味じゃないですよ。憎めない嘘つきというか(笑)。大熊さんていう本名ですけど、僕らは大ウソさんて呼んでます。ビッグベアーさんって、大きいことを言っちゃうんですよね。でも、それが詐欺的な嘘じゃなくて、例えばスクワット100回しかやっていないのに「500回くらいやってる」みたいな、どうでもいい嘘ばっかりつく(笑)。後からバレるんだけど、本人は全然気にしてないし、こっちも「まあ、いいか」ってなるんですよ。
――そういうキャラクターだからこそ、人が集まるんでしょうね。
憎めないし、ウソがバレたときのはにかんだ顔がまた可愛らしくて(笑)。年上だけど、そういうところが魅力的なんですよ。でも、これは僕が仲いいから言えることであって、もし仲悪かったらめちゃくちゃ腹立つと思いますよ。ただの嘘つきのオッサンですから(笑)。
――(笑)。
でも、そういう人柄だからこそ、人が集まるし、ビッグベアー興行が成り立ってるんでしょうね。普通のプロレス興行とはちょっと違うけど、そこにしかない魅力がある。それは間違いないです。