棚橋弘至との一戦(4・5両国大会)がラストチャンス 海野翔太の未来は開けるのか

【柴田惣一のプロレス現在過去未来】

不退転の決意でNJC決勝戦(3・20新潟・長岡決戦)に臨んだ海野翔太だが、デビッド・フィンレーに敗れた。坊主頭で挑んだものの結果はついてこなかった。

新日本プロレスの新時代を担うはずの若武者は、迷い道くねくね状態だ。引退を9か月後に控える棚橋弘至社長と「棚橋弘至ファイナルロード~継(つなぐ)」(4月5日、東京・両国国技館大会)で再スタートを期すが、なかなか袋小路からぬけだせないままだ。。

思えば海野へのファンの声は厳しい限り。1・4東京ドーム決戦で、IWGP世界ヘビー級王座挑戦を何のプロセスを経ないまま認められて失敗。2・11大阪決戦でグレート・O・カーンに屈した。自ら頭にバリカンを入れ、喝をいれたが、ファンの失望感は増すばかりだった。

海野が他の若手選手たちよりもチャンスを多くもらっているのは間違いない。だからこそ、自ら這い上がる選手を待ち望むファンにしてみれば、素直に応援できないのだろう。

正統派エースを目指す海野は、体制に弓を引くこともない。会社の方針に異を唱えるわけでもない。「また初心を思い返して、立ち上がり続けるだけだ」と再起を誓う。まっすぐで素直な男そのものだ。

プロレスに非日常を求めるファンは多い。会社や社会の不条理への不満をプロレスラーの大暴れで解消したいのだ。もちろん団体を守る正義の使者を推す人たちもいるが、反体制を訴える選手を応援する傾向が強い。

ジャイアント馬場に牙をむいたアントニオ猪木から始まり、猪木の後継者と目された藤波辰爾に「俺はお前のかませ犬じゃない」と噛みついたた長州力、余裕のエース・ジャンボ鶴田に「もっと熱くしてやる」と真正面からぶつかっていった天龍源一郎、新日本プロレスに注文を付け狼軍団を立ち上げた蝶野正洋、棚橋弘至に「お疲れ様でした」と面と向かって言い放ったオカダ・カズチカ、団体の痛いところを指摘した内藤哲也…反乱分子が支持を集めてきた。

現在もただガナるだけではなくエスプリの効いた発言で、辻陽太が歓声を浴びている。アンチ戦士が、団体のサポートを受けているエース候補よりも、人気を集めやすいのは、歴史が物語っている。

ノアでも先輩選手の私生活や道場での不条理な指導法を明かして嘲笑する暴露系・OZAWAがブームを巻き起こし、聖地である東京・後楽園ホールのチケットがプラチナペーパーとなっている。

海野が苦しい立場に置かれているのは間違いない。同じように当初は厳しい声を浴びせられた棚橋が手を差し伸べている。海野のやるせない想いに誰よりも共感しているのが棚橋だろう。

ただ、結局は本人次第。ファンのクールな視線をはね返すファイトと、体からにじみ出る人間性を磨くしかない。

昨年、全日本プロレスの安齊勇馬が三冠王座に輝いた。絵にかいたような優等生エースとして、旋風を巻き込み王道人気復興のきっかけとなっている。

タイトルマッチ始め注目カードがズラリと並んだ4・5両国大会で、海野は棚橋相手にファンの厳しい見方を一転させられるのか。大勝負の一戦となる。

新しいスターの誕生を望むファンもいれば、ベテラン選手の頑張りに熱いエールを送るファンもいる。

多士済々の新日本プロレスでトップを取るのは大変なことだ。並の努力ではのし上がれないし、機を見るに敏、時流に乗ることも大切だ。

成功の秘訣は運鈍根(うんどんこん)という。幸運、鈍感力、根気が不可欠だが、海野は今、もがき苦しんでいる。何が足りないのか。新日本プロレスを支え、人気を博し社長にまでなった棚橋との一戦でその答えを自ら見つけるしかない。(敬称略)

<写真提供:新日本プロレス>

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