里村明衣子vs鈴木みのる。最初で最後の一騎打ちに込められたメッセージ


「写真提供:新井宏」

 その後、里村は活動拠点を海外に移し、コーチ兼任としてWWEの一員となった。WWEでは21年6月にケイ・リー・レイ(現アルバ・ファイア)からNXT UK女子王座を奪取し、NXT女子王者との2冠戦(トリプルスレットマッチ)に敗れるまで1年3カ月に渡り保持したのである。

 そして、昨年7月のWWE日本公演時に25年4月での引退を発表。キャリア30年目、9カ月にわたる引退ロードがスタートを切ったのだ。

 ホームに本格復帰した里村は、仙女以外にもさまざまな団体に参戦、可能な限り海外での試合にも登場した。そのすべてが引退を前提としたものであることからも、里村の功績が世界でリスペクトされている事実がわかるだろう。


「写真提供:センダイガールズプロレスリング ペペ田中」

 そして迎えた鈴木との一戦。きっかけは、今回もまた鈴木からの電話だった。引退ロード真っ最中の里村も、鈴木のことは気になっていたという。

「引退前、最後に対戦したいと言ってはいたんです。でも、実際にシングルとかは考えてなくて、どうしようかとずっと悩んでいたときに鈴木さんの方からお電話いただいたんですよね」

 鈴木からの連絡はズバリ、シングルでの対戦要求だった。

「鈴木さんからこう言われました。このまま引退してしまったら絶対に後悔するからシングルしようと。道場だっていい。(無観客で)オマエのところの道場でもいいじゃん。オレはどこでもいいよって」


「写真提供:センダイガールズプロレスリング ペペ田中」

 さすがに無観客の道場はどうかと思ったというが、さいわい、仙女の新宿大会でカードが組めた。くしくも、両者がリング上で初遭遇した会場である。

試合は、昨今の里村の試合とは一線を画す内容となった。いまどきの男女の闘いともまた違う、当事者同士による思い出作りでもない、メッセージ性の強い試合になっていたのである。

「腕を取りにいっても取れない。脚を取ろうとしてもいっさい取れない。身体に触れさせてくれなかったですね。キックしようとしてもガードされる。私も何回か試みたんですけど、鈴木さんから張り手をされたんですよ。その一発で記憶が遠のいてロープに座り込んでしまったんですよね。そこで正直、たじろいでしまって…。それがたぶん、鈴木さんからの一発目のメッセージだと思います。この試合を通じて、いろんなメッセージをいただきました」

Pages 1 2 3 4

◆プロレスTODAY(LINEで友達追加)
友だち追加