里村明衣子vs鈴木みのる。最初で最後の一騎打ちに込められたメッセージ


「写真提供:センダイガールズプロレスリング ペペ田中」

 では、鈴木から里村へのメッセージとはなんだったのか。里村がつづける。

「オマエの海外での経歴とか、DDTなど男子とも闘ってきたこれまでの経歴とかいっさい関係ないぞと受け取りました。そこのところ、オレはまったく違うんだぞって。いままでの男子レスラーとは違う。オレは、簡単には倒れないよと」

 試合中、里村には道場でのスパーリングが脳裏をよぎった。それはとくに、GAEA時代のものだろう。

「関節技を中心に1時間くらいスパーリングをやらされるんですね。そのスパーリングで50分くらい経過したような感覚がありました。身体に力が入らない状態。それが開始5分でおきました」


「写真提供:センダイガールズプロレスリング ペペ田中」

 とはいえ、これはむしろ里村が望んでいたスタイルでもある。鈴木もまた、当たり前のようにこれに応えた。リングに上がれば、対戦相手はすべて倒すべき敵。里村は厳しい試合を通じて、時代を紡ぐ後輩たちにその姿勢見せたかったのだろう。

「ハイ、もちろんそうですね。いまの私にとって、挑む試合ってあまりないじゃないですか。(3・19代々木では)橋本に対しても受ける立場でしたから。ただ今回は、鈴木さんが対角に立ったとき、自分でも自分がチャレンジャーだなと思いました。男子ともやってきた、海外でもやってきた。その自信をすべて背負ってやったんですけど、さすがは鈴木みのる。その経験さえもすべて転がされましたね」


「写真提供:新井宏」

 かっこ悪い姿を見せても構わない。そんな思いが里村にはあったのだ。案の定、その通りになってしまったが、その姿がむしろかっこよかったのではないか。そんな里村は最後に、「鈴木さんに一生ついていきます」と言った。それはいったい、どんな意味なのか。

「私と鈴木さんは、あの試合(の厳しさ)にいっさいの迷いがなかったです。これを見ていまの世代がどう思うか。私には、すべて現在進行形の鈴木さんの考えの影響がすごくあるんですよ。(両者とも)厳しい時代を生き抜いてきた。いまいろいろありますけど、(プロレスに)ある程度の厳しさは必要だと思いますから」

鈴木からメッセージを受け取った里村。同時に、里村から後輩たちに送りたいメッセージも、そこにはあった。

 試合後のバックステージでは、先に退場の鈴木が里村を待ち、ハグをかわした。厳しい闘いは、プロレスへの、対戦相手への愛情があってこそ。里村vs鈴木の一騎打ちには、これからの仙女、女子プロ界、プロレス界へのヒントが隠されている。


「写真提供:新井宏」

インタビュアー:新井宏

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