【新日本】ジェフ・コブ涙の新日本ラストマッチ!棚橋弘至と最後の激闘に「ドウモアリガトウゴザイマシタ」

新日本プロレスは4月19日、東京・後楽園ホールにて『ナッツRV Presents Road to レスリングどんたく 2025』を開催した。シリーズ中盤戦として行われたこの大会では、4月26日広島、29日佐賀、5月3・4日福岡と続くビッグマッチの前哨戦が並び、各選手がその意地と誇りを賭けて火花を散らした。
第3試合では、「棚橋弘至ファイナルロード〜縁(えにし)」と題された特別な一戦が実現。対戦相手となったのは、今シリーズをもって新日本プロレスからの離脱を発表したジェフ・コブ。2017年の初来日以来、類まれなパワーと軽快な運動能力を武器にリングで存在感を示してきた。過去『G1 CLIMAX』でも棚橋に連勝しており、今回が両者にとっての節目の一戦となった。
観客の多くがコブの名を掲げた応援ボードを手に迎えるなか、リングに向かうコブの表情にはすでに熱いものがこみ上げていた。リング上では、互いに言葉を交わし、視線を交差させる。その一瞬に、これまで幾度となく拳を交えてきた両者の、言葉にできない絆がにじみ出ていた。
序盤、力の均衡が保たれる展開のなか、先に動いたのはコブだった。意表を突くスリングブレイドの披露に場内がどよめく。新日本ラストマッチとなるコブの気迫が、その一瞬一瞬に表れていた。これに対し棚橋も、自身の代名詞を駆使しながら反撃の糸口を模索。膝を痛める場面もあったが、ベテランらしい立ち回りで応戦した。
試合中盤、コブは棚橋を持ち上げてアリーナ内を行進するパフォーマンスを交えたが、それは単なる挑発ではなく、感謝の気持ちを込めた最後の舞台演出のようにも映った。自身の必殺技や得意技を交えながらも、どこか楽しそうに戦う姿からは、コブにとってこの場が特別なものであることが伝わってきた。
終盤、両者の意地がぶつかり合う展開の中、コブが再三、必殺のツアー・オブ・ジ・アイランドを狙うも、棚橋は土壇場で首固めに切り返し、劇的な3カウントを奪取。棚橋が大逆転勝利を飾った。
試合後、棚橋はリングに倒れ込むコブに歩み寄り、言葉を交わしたのち、勝者としての手を差し伸べ、互いに抱擁を交わす。そこにあったのは勝敗を超えたリスペクトであり、リング上の盟友としての最後の挨拶であった。
その後、UNITED EMPIREの面々がリングに現れ、コブがマイクを手に取る。「今日、負けるつもりはなかったんだけど。とにかく、感謝したい」。そう前置きしたうえで、支えてくれた裏方スタッフ、共に闘ってきた仲間たち、ファンに対する深い感謝の念を一つひとつ丁寧に口にした。
「これはさよならではなく、また会おうだ。ニュージャパンよ、ありがとう。ここにいる皆よ、ありがとう。本当にありがとう。ドウモアリガトウゴザイマシタ」。その言葉に、場内からは万雷の拍手が送られた。
最後は帝国メンバーと共にクラウンズアップポーズを決め、ロープをくぐって退場。目頭を押さえながら、静かにリングを後にした。
華やかさの裏にあるプロレスラーの旅路。その終着点と新たな出発点が交錯した一夜となった。棚橋弘至とジェフ・コブ――異なる道を歩みながらも、確かな縁で結ばれた者同士の戦いは、見る者の胸に深く刻まれた。
<写真提供:新日本プロレス>
Pages 1 2