【スターダム】岩谷麻優、退団発表 「スターダムのアイコン」14年の軌跡に幕

女子プロレス団体スターダムが、大きな節目を迎えた。団体の顔とも言える岩谷麻優が、4月28日付でスターダムを退団すると発表したのである。


©STARDOM 

前日、横浜アリーナで開催されたビッグマッチ。岩谷は朱里を相手にIWGP女子王座10度目の防衛戦に挑み、敗れた。クロスアーム式朱世界に沈み、ついに長きにわたって守り続けたベルトを手放した直後、マイクを握った。

「このスターダムのリングが大好きです。けど、そのベルトなくなったから、そのベルトの未来は朱里さんに託します。そのベルト本当に本当に重たいベルトです。岩谷麻優から取ったベルトなんだから、これからも防衛し続けてください。スターダムのアイコン岩谷麻優は新たな道を探します」


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その言葉を聞いた瞬間、会場の空気が凍りついた。スターダムとともに歩み、スターダムを象徴する存在だった岩谷の「新たな道を探す」という宣言。これは別れの予感をはらんでいた。

岩谷麻優は、2011年1月、スターダム創設とともにデビューした一期生である。芸能活動経験もなければ、格闘技経験もなかった普通の少女が、リングで輝きを放つようになった過程は、多くのファンに夢を与えた。

デビュー2年目にしてアーティスト王座を初戴冠し、シンデレラ・トーナメント連覇、5★STAR GP制覇、ワンダー王座、ワールド王座、そしてグランドスラム達成――スターダムの歴史を語る上で、岩谷の存在を抜きにすることはできない。

その岩谷が、自ら「アイコン」と名乗り、団体の中心に立ち続けた年月は、スターダムの成長と拡大の歴史そのものであった。国内はもとより海外進出にも貢献し、IWGP女子王座を巡る戦いでメルセデス・モネ(元サーシャ・バンクス)を破った瞬間、世界に向けて「岩谷麻優」の名を轟かせた。


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だが、時の流れは残酷である。強すぎる光は、やがて影を落とす。守り続けたベルトを手放したとき、岩谷は静かに次のステージを見据えていた。

「アイコン」という称号を手にしながら、それにすがることなく、自ら新たな挑戦を選んだ姿に、プロレスラー・岩谷麻優の矜持が滲む。

退団という決断は、もちろん簡単なものではなかっただろう。スターダムは、岩谷にとって故郷であり、居場所であったはずだ。だが、プロレスとは、リングとは、挑戦の場である。過去の栄光に甘んじることなく、常に未知の未来に向かって歩み出す者だけが、新たな景色を見ることができる。


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岩谷麻優は、その覚悟を胸に秘めて、スターダムのリングを去る。

当然ながら、団体にとっても大きな痛手である。絶対的エースが抜ける穴は、そう簡単に埋まるものではない。

だが、だからこそ、スターダムに残る選手たちにとっても大きなチャンスである。次代を担うスターたちが、自らの手で「新たなスターダム」を作り上げていかなければならない。

アイコンの退団は、終わりではない。新たなスタートである。

かつて、棚橋弘至が沈みかけた新日本プロレスを救い、オカダ・カズチカが新たな黄金時代を築いたように――プロレス界は常に「世代交代」の中で生き続ける。

スターダムもまた、今まさに次なる夜明けを迎えようとしている。岩谷麻優が築き上げた土台の上に、どんな未来が築かれるのか。それは、これからリングに立つ者たちの手に委ねられている。

そして、旅立つ岩谷に、心からのエールを送りたい。

リングのどこかで、再び輝くその姿を、信じて待ちたい。

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