スターダム鉄アキラ、入社式直後のプロレス観戦でデビューを決心!
そして間もなく試合がスタート。客席から見た景色から、いままでとは違う感覚を味わった。
「座席に座って、すごく楽しみにしながら始まるのを待っていました。試合が始まると、いままでとは見方が違うというか、リングの内側の景色ってどうなんだろうと考えたんです。好きなことやってるのってすごく素敵だし、その景色を内側から見てみたい。そのためにも自分もやってみたいなと思ったんです」
自分もプロレスが好きだ。好きだったら自分でもやってみればいい。就職こそしたものの、それが果たして自分のやりたいことなのか、自問自答。実際、1,2カ月ほどその会社で働いた。が、好きなことをやりたい、プロレスラーになりたいとの気持ちがまさるようになり、仕事を辞めた。それは、スターダムのオーディションで一次審査に合格したから。彼女は入社式からの観戦後、スターダムのオーディションを知り、応募していたのだ。そして1次合格の通知が届くと、会社を辞めた。とはいえ、この時点でプロレスラーになれると決まったわけではない。
「そうなんですよ。でも、1次の結果が来た時点でスパッとやめましたね(笑)。2次がどうなるかわからないけど、全力でやりたかったので、もうここに懸けようと思って」
「写真提供:スターダム」
さいわい、2次審査も通り、練習生になることができた。が、特にこれといったスポーツ経験はない。趣味でダンスや水泳をやっていた程度だという。
「同時期に入門した同期と比べると、自分ってなにもないんです。ただ、練習の厳しさは覚悟していました。プロになるためなんだから、きつくて当たり前。きつい練習を乗り越えてこそプロレスラーになれるんだと。実際、想像していた通りにきつかったです(苦笑)。でも、自分が望んでいたことだったし、そう思っていたから耐えられましたね」
アキラには道場での練習に加え、リング上での公開スパーリングも課せられた。同期の姫ゆりあとともに、昨年12月24日の後楽園から今年1月23日の新木場まで、4回リングに立ったのだ。これはスターダムにとって新しい試み。そこにはまた、グラウンドをはじめ基本的な攻防をきちんと見せたい、アスリート性をより前面に打ち出したいという団体の姿勢がうかがえた。
「スパーリングとはいえ、興行の一番最初に出ていく。興行の価値を決めるのって最初の試合だと父が言ってたし、自分でもそう思っていたので、まだリングに立てるほどではないにもかかわらずやらせてもらえてありがたいのと同時に、すごく緊張しましたね。スパーリングのあとには先輩方に反省とか伺って、いまは技術はいい、後々だからと。でも気持ちとか、いままで練習してきた基本的なところは大事にしないといけないよと何度も何度も教えていただきました。公開スパーリングを何度もしてきたおかげで、デビュー後はほとんど緊張しなくなったんですよ」
「写真提供:スターダム」
実際、デビュー戦では鈴季から「私の血の気を騒がせてくれたよ」との評価を得た。それでもスパーリングと実戦の違いを痛感。
「ごっつかったです。すずさんの一撃一撃がホントに重たかったし、間の取り方とかもホントに別でした。これがプロレスなんだなって。いままで自分とゆりあがやってたものとはまったく別物だなと感じました」
また、高田馬場2連戦でアキラとゆりあを立て続けにデビューさせたのも団体の戦略といっていいだろう。鉄アキラと姫ゆりあ。漢字一文字と、かな三文字。リングネームをあえて同じ構成にしたのは、2人を競わせるためと言っていい。2人が現役でいる限り、常に比べられる宿命なのだ。