力道山や猪木に続けとレフェリーデビューのジャッジメント征矢 奮闘したが…

【柴田惣一のプロレス現在過去未来】

力道山に猪木…先人たちに続けとばかりレフェリーを務めた「情熱一直線」征矢学だったが、ほろ苦いレフェリーデビューとなった。

征矢は裏切り者・タダスケへの制裁をより確実にするために「ジャッジメント征矢」として、レフェリーに名乗りを上げ、ノア5・3東京・両国国技館大会のタダスケvs HAYATAを裁くことになった。

情熱RATEL‘Sを脱退しTEAM2000Xに走ったタダスケに鉄槌を下すのはHAYATA。ラフファイトにもちろんTEAM2000Xの乱入も予想され、情熱RATEL‘Sの盟友・征矢が「きちんとリング上で完全決着をつけるため」立ち上がったのだ。


「写真提供:柴田惣一」

福田明彦・元レフェリーに弟子入りし、レフェリーのイロハを教わって出陣。ヘアスタイルは七三分け、上は白、下は黄色の、いかにも「情熱レフェリー」というスタイル。リングに上がった姿はジャッジメント征矢そのものだった。

シャツの背中に入った「情熱」の文字が似合う熱血レフェリングを披露。タダスケが手にしたイスを取り上げ、ロープブレイクで両者の間に割って入る。見事なジャッジメントぶりに、会場からは征矢コールが轟いた。

HAYATAが押さえ込むとカウントが多少、早かったりしながらも試合は進む。激しい攻防に巻き込まれた征矢がダウンしたスキをついてタダスケがHAYATAの金的を攻撃。

イスを持ったタダスケと征矢がもみ合う。HAYATAが巻き込まれてダウン。「HAYATA、(フォールを)返せ!」という征矢の大声が国技館の隅々まで響く中、3カウントを入れるしかなかった征矢だった。


「写真提供:柴田惣一」

思惑が外れて落ち込む征矢。HAYATAも征矢に詰め寄る。そこに欠場中の稲葉大樹が飛び出してきた。「情熱、情熱!」と叫びながら走り回る。情熱RATEL‘S入りのアピールだが、征矢もHAYATAも無反応。稲葉の空回りばかりが目立ってしまった。

勝ったTEAM2000Xのタダスケは「ジャッジメント征矢、良いレフェリングだった。これからもレフェリーとしてノアを盛り上げてくれ」と高笑い。

征矢は「申し訳ない。ちゃんとレフェリングしようとして、ああゆうことになってしまった。それだけはわかってくれ」と謝るばかり。HAYATAは征矢の肩を軽くたたく。一抹の不安はあるが、両者にわだかまりは残らなかったようだ。二人がインタビュースペースを去ると「情熱、情熱…」と稲葉が駆け抜けて行った。稲葉の今後はどうなるのか。


「写真提供:柴田惣一」

ジャッジメント征矢のレフェリーデビューは想定通りとはいかなかったが、力道山、猪木らバリバリの現役レスラーがレフェリーとしてリングに上がることは、これまでも多々あった。

選手への文字通りの直接指導であったり、遺恨が重なり不穏なファイトが避けられないと思われる時に、きっちりと試合を成立させるためのレフェリーである。

日本プロレス時代に、BI砲を組んでいた馬場の試合を猪木が裁いたこともあった。当時から猪木は馬場への激しいライバル心を秘めており、馬場に厳しい猪木レフェリーに注目が集まった。


「写真提供:柴田惣一」

藤波辰巳(現・辰爾)vs木村健悟のワンマッチ興行では上田馬之助がレフェリーだった。

ジャッジメント征矢が一戦限りに終わるのか、これからも征矢に限らずレスラーがレフェリングに立つことがあるのか。

いつもは裁かれる側のレスラーが、逆の立場になって試合を裁くのも新たな発見があるだろうし、今までは見えなかった新鮮な気付きもあるはず。何事も経験だ。今後の征矢のファイトに深みが出ることも期待できる。

プロレスの奥深さを知り、新たな楽しみ方を再認識した5・3両国決戦だった。(敬称略)

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