30年と2週間の現役生活にピリオド 里村明衣子のラストスパートを振り返る

【WEEKEND女子プロレス♯62】 

 クラッシュギャルズで一世を風靡した長与千種が、1995年4月15日、新団体GAEA JAPANを旗揚げ。団体は新人中心の構成でスタートし、当日デビュー戦をおこなった一期生の中でもひときわ目を引いたのが、当時15歳の里村明衣子だった。あれから30年と2週間、「女子プロレス界の横綱」とまで呼ばれるようになった里村は、プロレスラーとしての産声を上げた東京・後楽園ホールで、現役生活にピリオドを打った。

2005年にGAEAは解散してしまったものの、早くから長与の後継者として指名されていた里村は、みちのくプロレス・新崎人生の導きから宮城県仙台市を拠点にセンダイガールズプロレスリング(仙女)を旗揚げ。「グローカル」というグローバルでローカルな団体方針を掲げ、里村自身も2010年代中盤すぎあたりから本格的に海外に進出、世界最大のプロレス団体WWEと契約し、選手兼コーチとして活動してきたのである。


「写真提供:センダイガールズプロレスリング」

そして昨年7月、WWE日本公演で“来日”していた里村が翌年4月での引退を発表。それに伴いWWEも退団となり正式に日本マットに復帰、9月から8カ月間にわたる引退ロードがスタートを切ったのだ。

女子レスラーの引退ロードといえば、ゆかりある選手やこれまでかなわなかった選手との対戦が多く実現する傾向にある。里村の場合も例外ではないだろう。だがそれ以上に、とくに今年に入ってからの振り幅はすさまじく、それでいて引退を控えるレスラーとは思えぬほどの好調さをキープ、むしろ勢いを増していったから驚いた。だからこそ、本欄では里村のラストスパートをあらためて振り返ってみたいと思う。

昨年12月に仙女ワールド王者となった里村の25年は、1・3大田区マリーゴールド初参戦で始動。GAEA、全日本女子プロレスと所属団体こそ異なるものの、対抗戦ブーム後の女子プロ界を牽引してきた高橋奈七永とタッグで対戦(奈七永&石川奈青組vs里村&YUNA組)したのである。ここでは奈七永5月引退の日程も発表されたなか、和田京平レフェリーの後押しから1・31ジャイアント馬場追善興行でのシングルマッチが決定をみた。


「写真提供:センダイガールズプロレスリング」

1・5新宿では、ホーム仙女で団体の未来を託したい愛海とシングルマッチ。5日後の同所ではJTOのリングに上がり稲葉ともかと一騎打ちで、若い選手との対戦が続いた。

里村引退のニュースは海外の団体も動かした。1月18日にはドイツに飛び、約5年ぶりとなるwXwオーバーハウゼンでステファニー・メイズと対戦。メイズはキックを主体とし、ヘビー級男子とも闘う格闘系の選手だ。

 1・23新宿では、デビュー戦の相手をつとめたSareeeの自主興行に参戦してシングルマッチ。14年前、Sareeeはディアナ旗揚げで里村と対戦し玉砕した。あれからSareeeは、里村の足跡を追うようにアジャコングらレジェンド勢との激闘も体験してきた後継者的存在だ。しかし試合は、今回も里村が勝利。里村は最後の最後まで壁であり続けようとしていたのである。

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