“女子プロレス界のアイコン”岩谷麻優、新たな決意と再出発「後悔はない。私がマリーゴールドの入口になる」

女子プロレス団体マリーゴールドが5月4日、東京・後楽園ホールで旗揚げシリーズ「Rising Spirit 2025」を開催。記念すべき第1戦において、岩谷麻優が高橋奈七永との一騎打ちに勝利し、新天地での第一歩を鮮やかに刻んだ。
約2年にわたって保持していたIWGP女子王座を手放し、4月28日にスターダムを退団。5月1日にマリーゴールド入団を電撃発表し、わずか3日後にはリングに立った。
しかも、その相手はプロレス人生を語る上で欠かせない存在――高橋奈七永。13年前、デビュー間もない岩谷と対戦した因縁の相手である。
試合は、緊張感に満ちた空気の中で始まった。過去には「老害」とまで言い放った相手である。口にした言葉の重みを、もっとも感じていたのは岩谷自身であったに違いない。
序盤から高橋の巧みな戦術が冴えた。脚への集中攻撃、場外での鉄柵攻撃、さらにはスタンド階段からの転落――容赦ない攻撃の数々が、肉体と精神を削りにかかった。
だが、岩谷は倒れてもなお、立ち上がった。打たれても、打たれても、前に出た。
「スターダムを辞めて3日後に会見をやって、置いてけぼりにしてしまったファンの皆さんごめんなさい。これからも一緒にいろんな夢を見ていきたい。皆さんこれからもついてきてください」
その言葉通り、夢を追う姿勢がリング上にあった。試合終盤、執念と覚悟がぶつかり合う攻防を制したのは岩谷であった。渾身の丸め込みで3カウントを奪取。かつての恩師を乗り越え、新章の幕を開いた。
「老害って言ってごめんなさい。あんなこと言っちゃったから今日めちゃくちゃ怖かった。でも今日泣かないであなたの前に立つことができました。岩谷麻優成長しました。奈七永さんの強さを身に染みて感じて、あなたの強さは必ず自分たちの世代が受け継いでいきます」
涙なくして語れぬマイクであった。その言葉を真正面から受け止めた高橋も、目頭を押さえながら応じた。
「正直私が辞めた後のマリーゴールドは大丈夫かなと思ったけど、麻優がマリーゴールドに来てくれてよかったよ!ありがとう。岩谷麻優のプロレス最高だった。クソ!」
感情が爆発した熱き抱擁こそが、この試合の価値を物語っていた。
試合後には、スーパーフライ級王者・ビクトリア弓月がリングに現れ、挑戦を表明。かつての仲間であった後輩の挑戦に、岩谷は凛として応じた。
「弓月は成長したのかもしれない。でも岩谷麻優はもっともっと高いところにいるから。チャンピオンベルトその日まで守っておいてね。正々堂々と受けてやりますよ」
バックステージでは、移籍直後に寄せられた批判の声に悩んだ胸の内も明かした。
「がっかりしたって声が1番多くてすごく悔しかった。でもスターダムを辞めたことに後悔はない。これから自分が入り口になって『ハマったよ』って言う人が増えるようにしたい。そんでもってマリーゴールドの顔になりたいと思ってるし、みんなの手でマリーゴールドを世界一にしていきたい」
“スターダムのアイコン”という称号を脱ぎ捨て、“女子プロレス界のアイコン”として新たな覚悟を背負う。
その背中が“入口”となり、新たなファンを惹きつける日も遠くはない。
泣き虫でも弱さを見せても、リングの上で闘う姿こそが、多くの人を惹きつけてやまない。
リングに生き、リングに挑み続ける岩谷麻優の旅の第2章は始まったばかりである。
<写真提供:マリーゴールド>
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