新日本プロレスの「エース」棚橋弘至の引退ロードを見逃すな

「エース」棚橋弘至の引退(2026年1月4日、東京ドーム)が一日一日と迫っている。新日本プロレスのみならず日本いや世界プロレス界にとっても大きな衝撃である。
「疲れない男」は、ひたすら走り続けている。6・15大阪城ホール大会では「ファイナルロード~継(つなぐ)」で、上村優也に胸を貸す。だが、もはや胸を貸すのではなく「介錯される」のかも知れない。
辻陽太、海野翔太、大岩陵平らと並んで新日本の新時代を背負う上村との一戦。上村は見た目や繰り出す技など、棚橋との共通点が多い。棚橋も「継(つなぐ)」重みをヒシヒシと感じているはず。
新世代の出世レースは、6・15大阪城大会でゲイブ・キッドの挑戦を受けて立つIWGP GLOBALヘビー級王者・辻が一歩リードしているが、上村にしてみれば棚橋戦はビッグチャンス。棚橋社長に勝利すれば一気に巻き返せるだけに、それこそ全力で結果を求めてくるはず。
もちろん棚橋にとっても、ラストマッチの半年以上前に引導を渡されては立つ瀬がない。ここは意地で踏ん張るしかない。
そして6・29名古屋大会の「TANAHASHI JAM~至(いたる)」。愛知県体育館が移転新築されることになり、新日本の数々の名勝負が繰り広げられてきた現アリーナが姿を消す。何度もメインイベントを張って来た棚橋にとっても、思い出深い会場だ。自らのファイナルマッチの前に愛知県体育館で有終の美を飾りたいところだ。
自らプロデュースする同大会で、棚橋は何と1大会2試合のダブルヘッダーに出陣する。
メインイベントで丸藤正道と組み、清宮海斗、大岩組と激突する。ノアの「エース」丸藤にノアの「新エース」清宮、そして大岩は昨年ノアに“国内留学”しており、ノア勢の中に棚橋が飛び込む感もある。
近年のマット界では団体間の交流は盛んになっており、違和感はないがファイナルロードに突入した棚橋には、丸藤も清宮も改めて体感しておきたい選手だろう。
ノア留学中に清宮とタッグを組んできた大岩は、新世代闘争にも名乗りをあげている。新日本の未来のためにもメインイベント参戦は大きい。
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追加発表されたのが「時空を超えた縁(えにし)と継(つなぐ)」棚橋、海野、田口隆祐組vs藤波辰爾、高橋ヒロム、LEONA組。
藤波といえば新日本社長も務め、今は自身の団体ドラディションで「生涯現役」を目指すリビングレジェンドだ。様々な団体に乗り込み多くの選手に、猪木イズム始めプロレスラーの吟司を伝えている。棚橋引退後も実戦での伝授を続行するはずで、まさに「時空を超えた縁と継」そのもの。
いく度となくささやかれた引退説をハネ返したり、自ら行った引退発表を撤回し現役を続けている藤波にしてみれば、棚橋の引退は「まだまだ早い」だろう。ファンも、棚橋が藤波より先に引退するとは思ってもいなかった。71歳にしてリングに立ち続ける藤波とのバトルに、棚橋が何を思うのか。今から気になるところだ。
6・15大阪大会、6・29名古屋大会の2連戦は、年明けの引退マッチに向けても大切になるが、6月15日は父の日。棚橋も2人の子どもの父である。
棚橋がまだ小さかった上の娘さんを連れてテレビ朝日・野上慎平アナウンサーの結婚パーティーに参列していた姿を思い出すと、今でも頬が緩んでしまう。
いつもは会場を回って挨拶を欠かさない棚橋が、かいがいしく娘さんの面倒を見ていた。膝に乗り甘える愛娘を、優しく見つめる棚橋の表情が忘れられない。
サンリオの展示会に一家で訪れたこともある。2人のお子さんと楽しそうにサンリオキャラクターの品々を見て回る様子も、優しいパパだった。
2016年には「ベスト・ファーザー イエローリボン賞」に輝いている。同時に「ベスト・ネクタイ賞」もダブル受賞しているが、実は私のネクタイ友達、和田匡生㈱成和ネクタイ研究所社長との会食がきっかけだった。棚橋の生き様に共感した和田社長が推薦してくれてダブル受賞につながった。
ファンの顔と名前を覚え、サイン会で一言かける。自ら席を移動し多くのファンと会話を交わす…棚橋のファンファーストの姿勢は変わらない。スターにして好漢・棚橋弘至のレスラー人生も残り半年余り。一瞬たりとも見逃せない。
<写真提供:新日本プロレス>
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