【SSPW】藤波辰爾、恩人へ捧げた勝利も悔しさ残す「あんなファイトやってたら新間さん怒るな」

6月12日、後楽園ホールで行われた「ストロングスタイルプロレス Vol.34」。この大会は、4月21日に90歳で他界した“過激な仕掛け人”新間寿氏の追悼興行として開催された。

初代タイガーマスク・佐山サトルが主宰するこの団体において、新間氏は会長として尽力。かつてアントニオ猪木とモハメド・アリの世紀の一戦を仕掛け、プロレス界の常識を覆した男の死に、多くのレスラーがリング上で敬意を表した。

第5試合に登場したのは、藤波辰爾&スーパー・タイガー組。対戦相手は村上和成&ブラック・タイガー。昭和から令和へと続く“ストロングスタイル”の象徴たちが交差する中、試合は緊張感と重みを持って進んだ。

序盤、村上のパンチとキックを主体にする戦法に対し、藤波は巧みに立ち回り、経験値で主導権を握る。

中盤には相手の連携に揺さぶりをかけ、ついには隙を突いてブラック・タイガーを捕らえると、藤波が必殺のドラゴンスリーパーでギブアップを奪い勝利した。

試合タイムは8分21秒。華麗でありながらも、静かな火花が散る一戦だった。

勝利の余韻が漂う中、バックステージでの藤波は晴れやかな表情とは程遠かった。

▼バックステージ

藤波「今日はタイガー1人で良かったね。あんなファイトやってたら新間さん怒るな。カンピオン、なにやってんだって新間さんの声が聞こえたよ途中で。ちょっと焦ったな最後は。もうだから最後は本気出すまでもなかったんで。でも本当にまだまだもっともっと頑張らないと。今後も続けてく、しっかりハッキリ頑張っていきたいと思います」

――新間さんへの思いは?

藤波「新間さんの追悼ということで僕自身も意識したし、もうちょっと俺をね、イジメてくれると自分の燃える思いが湧いてきたんだけどね。セレモニーでいろんな功績をね、自分がここにいれるのも新間さんの行動力とプロレスを愛するそういう気もので1人のレスラーが生まれたという。僕だけじゃなくて、佐山タイガーもそうだし、猪木アリ戦もそうだし。だからなおさら今日は悔しい!もうちょっと燃えるものが欲しかったな、うん。2人でイライラしました」

さらに、藤波のパートナーを務めたスーパー・タイガーも、先輩の背中から得た熱をこう語った。

Sタイガー「まだまだ先輩の燃える闘魂というもの、この炎の熱さがしっかり伝わったんで」

藤波は試合前のセレモニーでも静かに目を閉じ、恩人の功績に思いをはせていた。1978年にMSGでジュニアヘビー級王者となった日、そこに至るまでを陰で支えたのが新間氏であったことは、周知の事実である。

「藤波辰爾はあなたの作品です」――これは、藤波自身が新間氏の告別式で述べた言葉だ。その意味を深く噛みしめながら、70歳を超えてなお藤波はリングに立ち続ける。

勝利に満足するのではなく、「悔しい」と口にする。その姿にこそ、プロレスという“物語”を生きる男の矜持がにじむ。まだ燃え尽きてなどいない。その背中が、次世代レスラーへ何かを託し続けている限り、ストロングスタイルの火は絶えることがない。

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