【みちのく】病魔と闘うフジタ”Jr”ハヤトが高橋ヒロムと3分間再起の電撃エキシビション「俺は絶対に帰ってくる!」

病魔との闘いを越えた3分間――フジタ”Jr”ハヤト、リングに立つ

プロレスの聖地・後楽園ホールが、忘れ得ぬ3分間の闘志に包まれた。6月13日、みちのくプロレスのフジタ”Jr”ハヤトが、高橋ヒロム(新日本プロレス)との再会を果たした。

再発したがんの治療中という現実を背負いながら、闘いを選んだその姿は、プロレスという枠を越えて観る者の胸を打った。

ハヤトは2018年にがんを公表。過酷な闘病を経て2022年にリング復帰を果たし、再びベルトを巻いた。

だが2024年初頭に病が再発し、1月4日の東京ドームでの試合を最後にリングを離れていた。

そのハヤトが、今回はみちのくプロレスのコミッショナーとして、後楽園大会をプロデュースした。

大会のメインイベントが終了し、余韻冷めやらぬ中、場内にどよめきが走った。

リング上に現れたのは、試合用コスチュームに身を包んだハヤトであった。体調は万全ではない。それでも観衆を前に立ち、正面を見据えて言った。

「本当は今日、この格好で試合がしたかった。ちょっとどこまでできるかわからないけど、3分でいいので俺と殴り合ってもらえませんか?」

呼びかけられた高橋ヒロムは即答した。「いろんな意見なんてクソくらえだ。やろうぜ」。

その瞬間、空気は一変し、エキシビションマッチが即時決定。病と闘う男と、今をときめくスターが、まさかのリングで拳を交えることとなった。

ゴングが鳴ると、ハヤトは初動から力強いエルボーで前に出た。

ヒロムも強烈な一撃で応じ、場内はたちまち熱気に包まれた。技の精度や動きの鋭さではない。

そこにあったのは、プロレスラーとしての本能と、リングへの執着である。

限られた3分間の中、ふたりは互いの存在を確かめ合うように、幾度も立ち上がりぶつかり合った。

試合終了のゴングが鳴った時、ハヤトはマットに倒れ込んでいた。それでもマイクを握り、言葉を絞り出した。

「俺なんかが上がっていいリングじゃないってことも、自分で分かってます。しんどくてしんどくて仕方がない。でも、試合を見てると悔しい」

リングから離れてもなお、プロレスラーとしての矜持を手放せない。その葛藤と執念が、言葉ににじんだ。

続けて、「やっぱ俺はレスラーだって」と力強く語り、そして叫んだ。「俺は絶対に帰ってくる!」

この言葉に、観客は惜しみない拍手を送った。病との闘いの最中にあっても、再びリングに立つという意志。その叫びは、単なる自己表現ではなく、同じように困難と闘う者すべてへのエールとなった。

一方、ヒロムもリング上で語った。

「ハヤトさん、俺、あなたとやったシングルマッチが忘れられないんだよ。エルボー、ヘッドバット、キック最高に効きました。でも、あなたがもう一度みちのくプロレスで完全復帰するまでは、アンタの蹴りをくらって倒れるわけにはいかねえんだよ」

 

リングに戻る者への敬意と、再戦への期待を込めた言葉であった。

バックステージでは、「怖かった。でも、それはプロとして失礼だと思ったからやった」と本音を明かしたヒロム。「完璧以上、最強になって帰ってきてもらわないと」と語り、ハヤトに再起を促すエールを送った。

またこの日、会場にはかつての宿敵である拳王の姿もあった。

トークショーに登場し、かつての因縁を思い起こさせた拳王を見据え、ハヤトは「俺とシングルで蹴り合おう」と挑戦の意志を表明。ヒロムだけではなく、拳王とも再び交差する未来を口にした。

病を抱えながらもリングに立ったフジタ”Jr”ハヤト。その3分間には、命を削ってでも闘い続ける覚悟と、リングでしか見せられない人間の美しさが詰まっていた。

この日、後楽園ホールの空気は温かかった。プロレスは時に、勝ち負け以上のものを見せてくれる。あの3分間こそが、その証明であった。

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