柔道からプロレスへ──ウルフ アロン「すべてを表現したい」新日本プロレスで描く第二の闘い

柔道界の頂点から新日本プロレスのリングへ。2025年6月23日、ウルフ アロンの入団記者会見が東京都内で開かれた。五輪金メダリストとして世界を制した実績を持つウルフは、プロレスへの転向を発表し、晴れて新日本の一員となった。
会見後の囲み取材では、柔道とは異なる環境への挑戦に向けた覚悟と、基礎からの鍛錬に励む現在の状況を率直に語った。
「まずはこの入団会見をやり終えて、今はホッとしています」
言葉の端々からは緊張と安堵が入り混じった心境がうかがえた。プロレスという未知の競技において、基礎中の基礎すら手探りで習得している日々を「一つ一つに重みを感じている」と表現。リング上ではシューズを履く文化や、マットと畳の違いといった環境の変化にも順応しようとしている。
「今はまず自分の土台を作って技術を伸ばしていって、できなかったことができるように、できることを伸ばしていく。その段階かなと思います」
柔道技の導入についても、あくまで本格的なプロレスの動きを習得した上で加味するという冷静な構想を明かす。「まずはちゃんとしたプロレスをできるようになってから」と語ったように、自身の柔道スタイルを無理に持ち込まず、ゼロからの構築を選択している。
プロレスにおけるスタイルの志向や方向性についても「今のところはないですね」と語り、己の適性を見極めながら成長していく構えを見せた。スタミナ面や肉体の調整についても言及し、「東京五輪の頃の肉体に戻せるように準備したい」と語る。
目標について問われると「IWGPヘビー級を獲りたい気持ちはあります」と口にしながらも、「今考えることではない」と即答。柔道と同様に、目の前の一歩一歩を積み重ねることで到達するという信念を崩していない。
同じ柔道界から転向した小川直也や吉田秀彦らの道のりについては「そこまで参考にはしていない」と語り、自らのスタイルを模索する意志をにじませた。プロレスという表現の場に身を投じた理由について、「すべてを表現したいという気持ちが強い」と話すように、試合だけでなく、試合前後も含めた生き様を届けるという想いがある。
一方で、新たな舞台への戸惑いも正直に語った。「受け身が違うなと毎日感じている」と明かし、マットと畳の違いが身体に与える負荷を痛感しているという。
新日本プロレスからのオファーは、永田裕志とのYouTube共演がきっかけとなった。入団に際しては棚橋弘至社長、木谷高明オーナーとも面会しており、正式な契約は複数年に及ぶ。
デビュー戦の舞台となるのは、1月4日・東京ドーム。ウルフは「まずはシッカリとしたプロレスをやりたい」と語り、この半年間で一人前のプロレスラーとしての基礎を固めると誓った。
体重は110kgを目標に調整中で、現在は122kg前後。コスチュームについては「華やかなものでもいいなと思います」と語り、柔道由来の要素を活かしつつ、自分自身の表現を模索している。
新日本プロレスのリング上で意識する存在としてはグレート-O-カーンの名前を挙げ、「どういうふうに可愛がるのかなというふうには思っています」と冗談交じりに話した。
「この半年間という準備期間を長く感じず、短く感じようと思っている。一秒一秒をしっかりと準備していく必要があると思っています」
柔道で世界を制した男が、今度はプロレスという異種格闘技の頂点を目指す。ウルフ アロンの新章が、東京ドームから幕を開ける。
<写真提供:新日本プロレス>
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