【新日本】葛西純、死闘の末に散るもデスペラードに託した再会の招待状!10年後の再戦を約束「葛西純の全盛期は10年後だ!」

新日本プロレスは6月24日、東京・後楽園ホールにて『”DEATH PAIN” invitacional supported by ROLLING CRADLE』を開催した。
『”DEATH PAIN” invitacional supported by ROLLING CRADLE』
日時:2025年6月24日 (火) 17:00開場18:30開始
会場:東京・後楽園ホール
観衆:1,481人(札止め)
メインイベントではエル・デスペラードがWGPジュニアヘビー級選手権の6度目の防衛戦として、“デスマッチのカリスマ”葛西純(プロレスリングFREEDOMS)と激突した。
会場に設置された蛍光灯、ガラスボード、有刺鉄線ボード、イスなどが示すとおり、今回のタイトルマッチはデスマッチ形式で行われた。デスペラードと葛西はこれまで3度にわたって対戦しており、その因縁に決着をつけるべく両者は”ラストシングル”の名のもとに対峙した。
立会人として新日本プロレス社長の棚橋弘至がリングに上がると、葛西はバラで彩られた蛍光灯ボードを手に登場。続いて白いコスチューム姿のデスペラードが、有刺鉄線が巻かれた十字架ボードを携えてリングに姿を現した。ゴングの前には、両者が贈り合ったバラと招待状をリング外の蛍光灯ボードへ投げ込み、戦いの火蓋が切られた。
序盤はリストロックからヘッドロックへの流れで探り合いが続いたが、葛西の「ラストシングルだぜ、こんなおとなしくていいのか?」という挑発がスイッチを入れる。両者は蛍光灯を手に取り、頭部を打ち合う激しいチャンバラへ。葛西は十字架ボードへデスペラードを叩きつけ、さらにはイスで追撃。割れた蛍光灯を相手の頭部に押しつけ、容赦のない攻撃を見せた。
対するデスペラードも、ガラスボードを使った反撃で応戦。場外ではエルボー合戦が展開され、葛西が「後悔してねえか、社長!」と叫ぶと、デスペラードも「社長、逃げないでくださいよ!」と返すなど、リング外も熱を帯びていた。
中盤、葛西は蛍光灯束を設置した上での突進や、自身も巻き込むガラスボードへの河津落としなど、捨て身の攻撃を連発。デスペラードもイスに蛍光灯を固定してのギターラ・デ・アンヘル、マッドスプラッシュなどで対抗する。リング中央には破片が散乱し、両者の肉体は次第に血に染まっていった。
終盤、葛西はガラスボードを6脚のイスに立てかけ、コーナーから雪崩式攻撃を狙う。これを回避したデスペラードは、ラダーを利用しての打撃戦を展開。葛西の額には竹串が突き刺さり、場外の蛍光灯ボードへの転落も受けた。それでも葛西は「刺激をくれ!」と叫び、激闘の続行を望んだ。
両者は互いに得意技を放ち合い、デスペラードはピンチェ・ロコ、リバースタイガードライバーで畳みかける。葛西も掟破りのピンチェ・ロコで応戦し、最終盤には蛍光灯を自らの胸で割るという狂気の行動に出た。だが、最後はデスペラードが垂直落下式リバースタイガードライバーからのピンチェ・ロコを炸裂させ、壮絶な死闘に終止符を打った。
<試合結果>
▼メインイベント(第5試合) 60分1本勝負
IWGPジュニアヘビー級選手権 蛍光灯&ガラスボード+αデスマッチーI’m so glad I met youー
<第98代チャンピオン>
エル・デスペラード 〇
vs
<チャレンジャー>
葛西 純 ×
29分31秒 垂直落下式リバースタイガードライバーからのピンチェ・ロコ→体固め
※デスペラードが6度目の防衛に成功
戦い終えたリングに響いたのは「デスペ」コール。大の字に倒れる葛西を前に、デスペラードは上体を起こし、両腕を突き上げると、深々と座礼。場内は惜しみない拍手に包まれた。立ち上がったデスペラードが勝ち名乗りを受けると、ふたたび鳴り響く「デスペ」コール。そこへ現れたのは新日本の現社長、棚橋弘至。棚橋がIWGPジュニアのベルトを手渡すと、思わず抱擁を求めるデスペラード。しかし棚橋は少し後ずさり、観客からブーイング。だが直後に笑顔で抱擁を交わし、リングを下りた。
その後、マイクを握ったデスペラードは、涙を浮かべながら魂の叫びを上げた。
「これが、死んでもいい覚悟を捨てて、強くなったエル・デスペラードです!」
一時は心が折れかけた過去。仲間と比べ、自信をなくし、自らを“ダメだ”と責め続けた日々。葛西との初対決でアゴを骨折し、『BEST OF THE SUPER Jr.』も欠場。何もかもに意味を見出せず、生きる気力さえ失いかけた時期──だがそんな自分を変えたのが、葛西との死闘だった。
「生きたくても生きられないヤツがたくさんいる中で、プロレスができているって、本当に幸せなんだって……。死んでもいい覚悟なんか捨てろって言われてから、ここまで来られました!」
観客から大きな拍手と歓声が贈られるなか、デスペラードは深く感謝を込めた言葉で締めくくった。
そして、静かにマイクを手渡された葛西純。葛西もまた、涙を堪えきれなかった。
「デスペ氏、オマエだけじゃねぇ。俺もオマエと出会って、もっと強くなりたいって思って生きてきた。人生を狂わされちまったよ。今日という日が来なければいいと思ってた……。でも、終わっちまった……!」
嗚咽を交えながら語るその言葉に、場内の空気は一層熱を帯びる。葛西は続けた。
「俺っちの最初で最後のワガママ、聞いてくれよ。葛西純の全盛期は10年後だ! 2035年、『DEATH PAIN inviⅡ』! これはその招待状だ! シングルはそれまで封印だ! 受け取れ!」
手渡された招待状を手に、デスペラードは再びマイクを握った。
「おかしいな……防衛したのは俺なのに、すげぇ負けた気がします」
そして、力強く宣言した。
「10年後、もう一回、やりましょう! せっかくだから、みんなも一緒に。この招待状、アンタたち全員に渡されたと思ってくれ!」
観客、スタッフ、実況陣、そして棚橋社長にまで笑いを交えながら呼びかけ、「10年後、ここでまた会いましょう!」と締めた。
その後、リングアナ・阿部が改めてデスペラードの名をコール。テーマ曲が流れる中、葛西からバラの花を受け取ると、二人は固く握手。デスペラードは葛西の腕を高々と掲げて健闘を称え、「葛西」コールが場内を包み込んだ。
再び交わされた握手の後、葛西はデスペラードに熱烈なキスを贈り、静かにリングを後に。残されたデスペラードは四方に向けてIWGPジュニアのベルトを掲げ、最後は蛍光灯を自身の頭に叩きつけるパフォーマンスで観客の大歓声を浴びながら、血と誇りを背負いリングをあとにした。
■試合後バックステージコメント
試合後のバックステージでは、床に置かれたジュニアのベルト、バラの花束、そして2035年の招待状。傷だらけの姿で腰を下ろしたデスペラードは「すみませんね、こんな格好で喋るのもカッコ悪いんだろうけど……」と前置きしながら、荒い息を整えながら語り出した。
「必死のパッチですよ。世界中で名を轟かせる葛西純。その首を狙ってるヤツは山ほどいる中で、自分を“特別な相手”として選んでくれた。それが、何にも代えがたい財産なんです」
静かな語り口のなかに、ひときわ熱を帯びた瞬間があった。それは“ストロングスタイル”について触れたときだ。かつて鈴木みのるから“ストロングスタイル”の名を預かったデスペラードは、その看板を胸にしまいながらも、自分なりの在り方を貫いている。
「面白い試合をする。アイテムも使う。それで“ストロングスタイルじゃねぇ”って言われてもいい。それがその人の理想なら。でも、俺のストロングスタイルは、ずっと腹の中にあるんです」
だからこそ、葛西純という“バケモン”が相手であっても、負けるわけにはいかなかった。IWGPジュニア王者として、何度も敗れるわけにはいかない。だからこそ、防衛という結果を得るために、すべてを賭けた。
「葛西さんは俺のワガママに乗っかってくれて、本当にありがとうございました」
深々と頭を下げたデスペラードは、王者としての責任を語りつつも、自身の選択にも触れた。葛西戦を実現するために主導して組まれたこの興行。その中で、自らが推した藤田晃生のブッキングについても「悩んだ」と本音を漏らした。
「余裕なくて観れてないけど、MJとの試合、楽しかったんじゃない? 藤田は俺と似たような色気を持ってると思う。帰ったら観る。でも今日は断酒してたから、酒飲むぜ。ありがとう」
すると、そこに姿を現したのがその藤田晃生だった。
「ちょっと待ってくれ。ゴタゴタ言って水を差すつもりはない。ただ一つ言いたかったのは、俺の判断は間違ってなかった。アンタを信じて良かった。リングで待ってます」
静かに去っていく藤田に対し、デスペラードは「カッコいい……負けらんないね」と笑みをこぼした。
一方、激闘の末に敗れた葛西純は、片ヒザをつきながらカメラに向かって叫んだ。
「見たか!27年間アンダーグラウンドを歩んできた俺が、新日本プロレスの後楽園のメインで、IWGPジュニアに挑戦したんだぞ!」
20代、30代、40代と門前払いされてきた舞台。その頂点で、今年51歳になる男が、デスマッチという極限で、新日本の象徴であるIWGPのベルトに挑戦した。「年齢なんて関係ねぇ。尊敬と嫉妬心を持てる人間がいれば、レベルアップできる」と拳を握る。
そして高らかに宣言した。
「10年後が全盛期だ!2035年、『DEATH PAIN inviⅡ』、パート2で、もう一度デスペとやる!年齢を言い訳にしてるヤツら、葛西純の背中を見ろ!」
両者の魂と魂がぶつかり合った“ラストシングル”。だが、その幕は静かに、そして確かに、次の10年へと続いていく布石でもあった。リングに残ったのは血と破片と、そして希望の招待状──。
新日本プロレスで異彩を放つジュニア王者と、狂気をまとったデスマッチレジェンドが交差した夜は、10年後へと繋がる確かな絆を刻み込んだ。
<写真提供:新日本プロレス>