【新日本】棚橋弘至、丸藤正道との共闘に涙と誇り「僕がレスラーとしてやってこれた、今日の大会がその証明だと思います」

新日本プロレスが誇る”エース”棚橋弘至が、自身の引退ロードを彩るプロデュース大会「TANAHASHI JAM~至(いたる)」を6月29日、愛知県体育館で開催。集まった観衆4,570人の前で、2試合に出場し連勝を飾った。
第1試合では藤波辰爾、高橋ヒロム、LEONAと相対し、海野翔太、田口隆祐とトリオを組んだ棚橋。懐かしさと尊敬が入り交じる中、LEONAからテキサスクローバーホールドで勝利を奪い、リング上に健在ぶりを示した。
そして迎えたダブルメインイベント。プロレスリング・ノアの丸藤正道と手を組み、新日本の若獅子・大岩陵平とノアのエース格・清宮海斗と対峙した。
激闘の中、清宮と大岩の連係で苦しめられた場面もあったが、丸藤との息の合った連携と、得意のハイフライフローで決着をつけた棚橋。25年間のキャリアを背負った身体が、再び宙を舞い、正確に相手の胸板を捉えた。マットを叩く3カウント。万雷の拍手が場内を包んだ。
試合後、棚橋は「同じ時代を創ってきた仲間として、お先に引退させていただきます」と語り、丸藤に感謝の言葉を贈った。「棚橋引退まで、残り200日を切ってしまいました。1日1日を大事に、全力で、そして来年1月4日東京ドームで走り切るので、皆さん見届けてください!」と、揺るがぬ覚悟をにじませた。
メインイベントを終え、バックステージに戻った丸藤正道の言葉には、棚橋弘至への深い敬意と複雑な想いがにじんでいた。
--丸藤選手、あらためてこのメインイベント、棚橋選手との闘いを振り返っていかがでした?
丸藤「やっぱり、なんだろう……太陽よりもまぶしい太陽ですよね、彼は。年齢もさほど変わらず、キャリアも変わらず。ま、そんな中で、まあちょっと言ったことかもしんないですけど、棚橋弘至という人間にかかわった人間、レスラー、そういう人たちがたぶん組んだり闘ったりした中で、まあ今日、こういう機会を設けてくれて、僕はほんとに光栄に思いますし……。そうだな、1対1……わかんない……あるかどうかわかんない。でも、お互いが望んで、ファンの皆さんが望めば、それが実現するんじゃないですか」
--あらためてになりますが、同年代というか、同じ時代を生きてきた棚橋弘至というレスラーを、丸藤選手自身はどんな風な目でご覧になってたんでしょうか?
丸藤「いやいやもう、ずっと、いい意味でジェラシー感じてましたよ。同じ場にいなくても、同じ闘いをしなくても、やっぱりどっかで気になってるし、どっかで比べられるし。まあ、そんな中で棚橋弘至という、まさしく太陽のような存在、俺に持ってないものを持ってる存在……嫉妬しまくりでしたよ。でも、先に彼が引退するということで、俺はもうちょっとこのプロレスのリングで闘い続けますよ」
--棚橋選手とはリング上でいろいろと絡んできましたけど、一番印象に残ってる闘いは?
丸藤「いや、どうですかね、全部ですよ。あの……U-30(のタイトルマッチ)から始まって、『G1』(で)もやりましたし、今日は今日で俺の中でメチャクチャ素敵な思い出になったし。この素敵な思い出に、もしかしたら続きがあるかもしれない。ないかもしれない。わかんないけど。彼との闘いはすべて、俺にとって最高でした」
--棚橋選手が先に引退しても、丸藤選手の引退ロードの中で呼ぶのはどうですか?
丸藤「いや、1度引退した人間をね、呼ぶわけにはいかないと思うので。いやでも、新日本プロレスの社長として残るんで、必ずまた、会うこともあると思うし、もしかしたらリングじゃなくてビジネスの話になんのかもしれないし、わからないんですけども、これからもお互い……俺らもね、NOAHという団体が今、勢い、だんだん増してきてるんで、新日本プロレスに負けないように、俺らも闘い続けます。楽しかったです。ありがとうございました。最高です」
棚橋「お疲れ様でした」
――お疲れ様でした。疲れて……
棚橋「疲れてないです」
――退場するまで満員のお客さんといろんな言葉を交わして、いろんな感情を話されたと思います。今のお気持ちいかがでしょう?
棚橋「僕は毎日の試合を、日々の練習を、仕事を全力でやる。そういった部分で気持ちは振り切っているんだけども、ファンの皆様、長年応援してくれた皆さんというものはやはり……(※涙ぐみながら)さみしいのかなと思いますけど、僕はリング上では常に元気で疲れずに観に来ていただいたファンを少しでも楽しんでもらって、プロレスって本当にそういうものだと信じてやってきたから。まだ早いよ、まだ6月だから。(※涙をぬぐって)すいません……僕のせいです。大丈夫です、もう大丈夫です」
――メインイベントでは丸藤選手と並び立っての闘いとなりました。あらためて、いかがでしたか?
棚橋「IWGP U-30王座を闘った頃、NOAHの天才、箱舟の天才……太陽の天才児もいたんですよって。でもどうしても、丸藤選手の素晴らしい動き、運動能力、そういったものに比べて自分はぜんぜん届いていないなっていう想いがあったんで。団体を越えた選手として意識していましたね。そして今日組めるっていうのが、長くプロレスをずっと続けてきたご褒美かなと思います」
――1対1でというお話もありましたね。
棚橋「棚橋シングル戦線は行列ができていますので、まあ……ちょっと考えます」
――そして対戦相手には大岩選手、清宮選手というこれからのプロレス界を支えていく選手たちとの対戦でした。
棚橋「清宮選手もちょっと見ないうちにすごい変わっているし、大岩は本当にあの身体に無限のエネルギーを溜め込んだ、新日本の中でほかに似てる選手がいないというか。強いて挙げるなら棚橋の若い頃のような。(※筋肉を強調する仕草で)僕もこんな……いや、誇張しすぎた。とにかく団体は違えど、こうして闘った。そして厚みを感じた。期待していますよ」
――今日の第1試合では藤波辰爾選手との闘いもありました。
棚橋「プロレスラーになって藤波さんのような大きい選手をなんとか倒せるようにと、僕は絶対にヘビー級でやっていくんだっていうキッカケをくらた選手なんで。この先、今日が最後かもしれないし。藤波さんの張り手、効きました」
――そのあと藤波選手には解説席に入っていただいて、「引退にドラゴンストップかけないといけない」なんておっしゃっていました。
棚橋「気持ちは嬉しいです。でも僕はもう覚悟を決めてますんで」
――今日の大会は棚橋選手のいプロデュースということで、魅力のたくさん詰まった試合がずっと続いていきました。大会全体の印象というのはいかがしたか?
棚橋「1人のレスラーが25年という月日をかけていろんな選手と闘って、いろんな団体に上がって、敵対していたこともあるけど、怒りも憎しみもあったけど、そういったものを越えて今日という大会ができたことが、僕がレスラーとしてやってこれた、今日の大会がその証明だと思います」
――その場所がこの愛知県体育館という、いろんな思い出がある場所だと思います。
棚橋「若手の頃から、IWGPのチャンピオンシップから、いろいろやらせてもらって。今日で愛知県体育館は終わりですけど、今日の思い出、この体育館の歴史、紡いできたレスラーのエネルギー。そういったものを忘れずにこれからも名古屋を盛り上げていきます」
――年明け1月4日までまだまだ道が続いていきますし、もう(対戦を)列をなして待っている選手がたくさんいます。この先に向けてどうですか?
棚橋「ああ、ダメだ……感情がすごく不安定。ダメだ、泣いたり普通に戻ったり……ちょっとシッカリします、社長なんで。エースなんで。まあ見ててくださいよ。必ずいい流れ作ります。今日はありがとうございました」
リングの内外で“太陽のような存在”として輝き続ける棚橋弘至。引退ロードはまだ続くが、その背中には確かに、時代を共にした仲間と、未来を担う選手たちの視線が注がれている。
<写真提供:新日本プロレス>
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