『ノンフィクション』から始まった物語の終着点。長谷川美子、ラストインタビュー「私の人生で一番濃かった時間」

【アンチの声も力に変えて。ファンと共に掴んだタイトルマッチという名の誇り】
――約5年間のプロレス人生、欠場期間もありましたが、振り返ってみて最も印象に残っている試合はありますか?
長谷川:うーん……やはり、直近の鈴芽選手とのタイトルマッチですね。あれは、自分の中で一つのものに執着し抜いた試合でした。自分の得意技であるマフラーホールドだけで勝ちに行く、と決めて、そこに至るまでの伏線をたくさん考えた試合だったので、今一番心に残っています。
――引退が決まってからのタイトル挑戦については、一部から厳しい声も上がりました。
長谷川:はい、「引退前の思い出作りでベルトに挑戦するな」「ベルトを何だと思ってるんだ」と、たくさん言われました。私、昔からなぜか言われやすいタイプなんです……。

――デビューのきっかけとなったドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』の時から、そういった声は多かったと。
長谷川:もう、アンチだらけでした。放送開始1分後から「死ね」とか……。泣いてばかりいる姿に、いろんなことを言われましたね。DMもその当時は開放していたので、それはもう酷いものでした。一週間くらい、鳴り止まなかったです。
――それは壮絶な経験ですね……。
長谷川:でも、あのおかげで本当にメンタルが鍛えられました。叩かれすぎて、一度、感情をすべて失くしたんです。すべての言葉を受け取っていたら自分が壊れてしまうから、良い言葉も悪い言葉も、ただの「あいうえおの羅列」として見るようにして、心を遮断しました。
――その経験が、プロレスラーとしての強さに繋がった。
長谷川:それもありますし、何より「応援してくれるファンの方が圧倒的に多い」という事実に気づけたことが大きかったです。
――何かきっかけがあったのですか?
長谷川:くりぃむしちゅーの有田(哲平)さんに相談した時に、めちゃくちゃ怒られたんです。「あのさ、応援してくれる人に失礼じゃないの? たった一割程度の心無い言葉に惑わされてどうするんだ」って。その言葉でハッとして、ちゃんと応援してくださる方のコメントをしっかり見ようと。そうしたら、批判なんて10件に1件あるかないか。それよりも「頑張ってください」という温かい言葉の方がずっと多いことに気づいたんです。わざわざ時間を割いてコメントを残してくれるなんて、本当に応援してくれているんだなって。そこから、スイッチが切り替わりました。
――それでも、タイトルマッチへの挑戦には葛藤があった。
長谷川:はい。「ベルトを何だと思ってるんだ」という意見は、ごもっともだとも感じて。挑戦していいのか、すごく悩みました。でも、私がウジウジしている間に、鈴芽さんの持つベルトに他の選手が挑戦してしまうかもしれない。「それだけは嫌だ」と思って。鈴芽さんが防衛してくれたのを見て、お客さんに直接問いかけたんです。「引退する私がタイトルマッチに挑戦すること、どう思いますか?」って。そうしたら、皆さんが名前を呼んで後押ししてくださって……。あのお客さんの声があり、チャンピオンである鈴芽さんが了承してくれたから実現した試合なんです。すべての人の想いが詰まった、本当に感謝しかない、忘れられない試合です。

【命を懸けた5年間。プロレスが教えてくれた「人生で最も濃い時間」】
――そんなプロレス人生は、長谷川選手にとって、どのようなものでしたか?
長谷川:人生で一番、濃い時間でした。18歳から芸能活動をしていましたが、ここまで自分の命を懸けて何かに挑戦したことはなかった。プロレスは、ボディスラム一つとっても、大怪我に繋がりかねない危険なものです。自分の命と向き合い続けたこの5年間は、本当に貴重な時間でしたし、これからの人生で何かに挑戦する時の「覚悟」みたいなものを、凝縮して学ばせてもらった気がします。
――ご家族には、どのタイミングで引退を報告されたのですか?
長谷川:引退を発表する直前に連絡しました。父はデビュー戦は見に来てくれたんですけど、それ以来一度も会場には来てくれなくて。ずっと「プロレスを辞めろ」と言われ続けていました。
――大きな怪我をされた時は、特に心配されたでしょう。
長谷川:実は、首の骨を折ったことは、父には言っていないんです。
――そうだったんですか。
長谷川:はい。言ったら絶対に大騒ぎになると思って。父はSNSもやらないので、多分、今も知らないんじゃないかな……。「怪我には気をつけろよ」とはよく言われますけど(笑)。引退興行には来てほしいと伝えたんですが、かなり渋っています。

――一番近くで支えてくれたご友人には、いつ頃お話を?
長谷川:今一緒に住んでいる友人には、ガンプロを退団したあたりから、引退のことは何となく話していました。だから、彼女からすれば「やっと決めたんだね」という感じだったと思います。私が体の痛みで動けない時には料理を作ってくれたり、本当に心身共に支えてもらいました。彼女がいなかったら、とっくに心が折れていたかもしれません。
――そして、恩人である有田さんにも報告を。
長谷川:はい。月一回、有田さんが主催するサッカーゲームの会でお会いする機会があるので、その時に直接お伝えしました。すごく驚かれていましたけど、「よく頑張ったよ」と温かい言葉をかけてくださって。
――大会当日は、その有田さんがスペシャルゲスト解説として来場されます。
長谷川:これも、そのゲーム大会の時にダメ元でお願いしてみたんです。「何かご一緒できませんか?」って。そしたら「おー、いいじゃん!」と快諾してくださって。さらに「実況も入れたい」という私のわがまままで聞いてくださり、関係各所に交渉までしていただいて……。本当に感謝しかありません。昔、お笑いをやっていた頃、夜中の2時に呼び出して、クソつまらないネタを見せていたのが嘘のようです(笑)。本当に、お世話になりっぱなしですね。
※今大会ではYouTube番組『有田哲平のプロレス噺【オマエ有田だろ!!】』とのコラボグッズも販売される。

【熟女キャバクラからタクシー運転手まで!?ベールに包まれた引退後のビジョン】
――引退後の予定についてもお伺いしたいのですが、今のところは白紙、という感じでしょうか。
長谷川:そうですね。何も考えていなくて。でも、ありがたいことに、引退を発表してから、いろんな就職のお話をいただいているんです。
――それは素晴らしいことですね。どういったお話が?
長谷川:それが、本当に色々で……(笑)。ルームメイトに家業の内装業と声をかけてもらいました。なぜか「タクシーの運転手やりませんか?」っていうお話が来たり。私、つい最近免許を取ったばかりなんですけどね。他にもエステサロンとか、バーの店員とか、イベントに来てくださったファンの方からは「プールの監視員はどう?」とか。皆さん、私が引退後、路頭に迷うと心配してくれているみたいで(笑)。
――面白いオファーがたくさん来ていますね。
長谷川:自分では、有田さんの番組でも話した「熟女キャバクラ」も選択肢の一つとして、どこにあるんだろうって調べたりしています(笑)。プロレスを辞めて時間に余裕ができたら、また色々なことにチャレンジしてみたいと思っています。

【集大成を見届けてほしい。ファンへのラストメッセージ】
――それでは最後に、約1週間後に迫った引退興行へ向けて、ファンへのメッセージをお願いします。
長谷川:はい。デビュー前の『ノンフィクション』の時から本当に色々なことがあって、辛いことの方が多かったかもしれないけれど、それを跳ね返せるくらいプロレスが大好きになりました。大きな怪我をして欠場しても、「絶対にこの場所に戻りたい」と思えた。そんな私の5年間のプロレス人生、その全ての集大成を、皆さんに絶対に見届けていただきたいです。当日は有田さんも来てくださいますし、きっと普段とは違う東京女子プロレスが見られる、特別な一日になると思います。ぜひ、会場にお越しください。お願いします。
――7月8日、長谷川選手のレスラー人生最後の勇姿を、しっかりと目に焼き付けたいと思います。本日は、本当にありがとうございました。
長谷川:ありがとうございました!

インタビュアー:山口義徳(プロレスTODAY総監督)

【大会名】長谷川美子卒業記念興行「NonfictioN」
【日 時】2025年7月8日(火) 開場18:30 開始19:00
【会 場】東京・新宿FACE
▼長谷川美子卒業記念試合~1vs27ハンディキャップマッチ
長谷川美子
vs
瑞希&中島翔子&ハイパーミサヲ&鈴芽&辰巳リカ&伊藤麻希&上福ゆき&愛野ユキ&
渡辺未詩&らく&原宿ぽむ&桐生真弥&宮本もか&遠藤有栖&荒井優希&鳥喰かや&
上原わかな&HIMAWARI&凍雅&鈴木志乃&風城ハル&芦田美歩&キラ・サマー&
七瀬千花&高見汐珠&小夏れん&アイビー・スティール
▼瑞希&鈴芽&遠藤有栖&風城ハル vs 荒井優希&上福ゆき&上原わかな&高見汐珠
▼中島翔子&ハイパーミサヲ&愛野ユキ vs 辰巳リカ&渡辺未詩&凍雅
▼伊藤麻希&芦田美歩&小夏れん vs キラ・サマー&七瀬千花&アイビー・スティール
▼第12回東京プリンセスカップ最終予選
宮本もか vs 鳥喰かや
▼第12回東京プリンセスカップ最終予選
原宿ぽむ vs HIMAWARI
▼3WAYマッチ
らく vs 桐生真弥 vs 鈴木志乃
※長谷川のみ、試合とセレモニーでの紙テープの投げ入れ可能。














