【新日本】ゲイブ・キッド、恩人棚橋との激闘制し咆哮「棚橋さんがいなかったら生きてなかったかもしれない」

新日本プロレスは7月4日、東京・東京武道館にて『NEW JAPAN SOUL 2025』第8戦を開催した。

『NEW JAPAN SOUL 2025』
日時:2025年7月4日 (金) 17:00開場18:30開始
会場:東京・東京武道館
観衆:1,377人

メインイベントとなった第7試合では、IWGP GLOBALヘビー級王座を巡る世代超越の一騎打ちが行われた。王者ゲイブ・キッドが、“ファイナルロード”を歩む棚橋弘至を迎え撃ち、全身全霊の死闘を経て初防衛に成功した。

序盤、互いにロープ際でクリーンブレイクを見せ、静かな立ち上がりとなったが、それも束の間。試合が進むにつれ、緊張感は張り詰め、鋭い技と気迫が交錯していく。

ゲイブはグラウンドを主軸に組み立て、試合のペースを掌握しようとするが、棚橋もエルボーとドラゴンスクリューで応戦。リング外でも攻防は白熱し、棚橋が場外フェンスを使ってのドラゴンスクリューを見舞うなど、巧みに主導権を奪い返す。

中盤には両者の技が火花を散らす。棚橋は必殺のスリングブレイドを軸に、セカンドロープからのフライング攻撃でゲイブを追い詰めた。

一方のゲイブは、力強いラリアットや掟破りのスリングブレイド、さらには棚橋の代名詞とも言えるハイフライフローを繰り出し、挑発とも受け取れる攻撃でエースのプライドを揺さぶった。

終盤、両者の体力は限界に達しながらも、意地と意志だけで立ち上がり続けた。棚橋は渾身のスリングブレイドからハイフライフローを炸裂させるも、ゲイブは驚異的な粘りを見せカウント2でキックアウト。

さらには二発目を回避し、強烈なO-KNEEとパイルドライバーで勝負を決めにかかる。なおも抵抗を見せる棚橋に対し、最後は張り手からパイルドライバーで突き刺し、3カウントを奪った。

<試合結果>

▼メインイベント(第7試合) 60分1本勝負
IWGP GLOBALヘビー級選手権試合
<第5代チャンピオン>
ゲイブ・キッド 〇
vs
<チャレンジャー>
棚橋 弘至 ×
23分58秒 パイルドライバー→体固め
※ゲイブが初防衛に成功

試合終了後、ゲイブはダウンした棚橋を抱き上げ、マイクを手に語り始めた。

「2022年、オレ、メチャ、精神的病気ネ。棚橋サン、1時間、2時間、FaceTime……(涙)」と、かつての苦悩を吐露。そして「棚橋さんがいなかったら生きてなかったかもしれない」と感謝の言葉を贈り、「棚橋サン、マダ6カ月、プロレス人生ネ。アト、シャチョー人生、ガンバッテナ」と笑顔でエールを送った。

続く言葉は、自らの覚悟と信念を表すものだった。

「俺の身体も人生も新日本プロレスに捧げる。俺は100%、500%、1000%、イツモ新日本プロレス、イチバン! 『G1 CLIMAX』チャンピオンはゲイブ・キッドだ!」

力強くベルトを掲げ、ファンの声援に応えながら退場していく姿には、新世代の台頭を象徴する風格が宿っていた。

■試合後バックステージコメント

IWGP GLOBALヘビー級王座の初防衛に成功したゲイブ・キッドが、試合直後のバックステージで胸の内を語った。3年前の復帰以来、思い描き続けた舞台は「おとぎ話のようだった」と回顧し、全身全霊で迎えた“エース”棚橋弘至との大一番に、感傷を押し殺しながら語り始めた。

「俺はこの瞬間を復帰した3年前から考えてきた。まるでおとぎ話のようなもので、感傷的になりすぎた。性格が丸くなったと言われるけど、どうでもいい。俺は夢の人生を築き上げたんだ」

かつて精神的に極限まで追い詰められた日々。ゲイブが語る棚橋との深い絆は、ただの先輩後輩の関係を超えたものだった。

「病気の時、ヒロシ・タナハシが毎日FaceTimeをしてくれなかったら俺は生きていなかったかもしれない。俺が意味不明なことばかり言っていた時だ。アイツは新日本を救った男だ。2008年、新日本を救った」

ゲイブは、新型コロナ禍で冷え込んだ新日本プロレスの道場に1年半身を置き、静かに牙を研いでいた。その背中を常に追っていたのが、エース棚橋だった。

「他のヤツらに何を言われても、自分が置かれた立場がどうであれ、俺はトップまで行けると信じてた。そして実際、成し遂げた。自分の力で」

自身の再起と成長には、仲間の支えが不可欠だったとしながらも、「情熱と目的を持って行動に移さないといけない」と語気を強める。挫折や葛藤を重ねた末に、エースに勝利した今、確かな自信が芽吹いていた。

「正直、俺は今自信に満ちている。倒そうと思ったら10分で倒せた。だけど俺はアイツに火をつけたかった。昔の棚橋が欲しかったんだ」

試合は壮絶を極めた。棚橋のハイフライフローを受けた直後は「終わったと思った。息ができなかった」と告白。それでも、「そんなアイツとリングで対峙したかった」と、リング上での一体感と敬意をにじませた。

試合後、次なる目標を問われると、視線ははっきりと前を向いていた。

「そして次に考えてることは『G1 CLIMAX』だ。まさしく、チャンピオンズリーグだ。このトーナメントが全てなんだ。本当の最強を決める場所」

過酷なブロックに振り分けられたこともむしろ歓迎した。

「以前は新しいことに挑戦するのが怖かった。でも今はそれが良いと思う。真の姿が明らかになるから。止めるのか、進み続けるのか? ゲイブ・キッドは最後まで進み続ける。『G1 CLIMAX』決勝まで行く。そして制覇する」

さらには、視線はもう一つのベルトにも及んだ。

「この王座と一緒にIWGP世界ヘビー級王座を掲げるぞ。サイゴーのこの身体を見てくれよ。最高のコンディションだ。アルコールゼロのビールが必要だ。カンパイ、アリガトウ」

一方、惜しくも敗れた棚橋は、村島トレーナーに支えられながら現れ、そのまま床に大の字となった。

「すいません、今日はこのままで」

身体のダメージは大きかったが、それ以上に心を揺さぶったのは、世代の変化であった。

「自分の引退という時間軸、早いと思ってたけど、それ以上に周りの若い選手の成長が頼もしくもあり、悔しくもあり、悲しくもあり……。なんだろう、この感情は……。なぜ負けて悔しいのか……」

しばらく沈黙の後、ゆっくりと立ち上がり、目を伏せたまま言葉を絞り出した。

「まだ俺のプロレスラーとしての炎は消えてないってことだから。最後の最後、最後のその日になるまで、残り1秒になるまで頑張ります」

燃え続ける意志と、受け継がれる覚悟。闘いの果てに、それぞれが示した姿勢は、新日本プロレスの歴史と未来を繋ぐ“魂の継承”であった。

<写真提供:新日本プロレス>

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