【新日本】タイガーマスク、後楽園で電撃引退表明「30年のタイガーに、来年7月でピリオドを打ちます」

新日本プロレスは7月6日、東京・後楽園ホールにて『NEW JAPAN SOUL 2025』最終戦を開催した。
『NEW JAPAN SOUL 2025』
日時:2025年7月6日 (日) 17:30開場18:30開始
会場:東京・後楽園ホール
観衆:1,489人(札止め)
第3試合では「棚橋弘至ファイナルロード~縁(えにし)&タイガーマスクデビュー30周年記念試合」が行われ、かつて2006年5月、新宿FACEでシングルマッチを戦った両者が、およそ18年の時を経て再び一騎打ちの舞台に立った。
序盤、両者は互いのリスペクトを示すかのように握手を交わし、試合が幕を開けた。タイガーはローキックから先手を取り、素早いロックアップからリストの取り合いへ。棚橋はカニ挟みからグラウンドに持ち込み、主導権をうかがった。
徐々にペースを掴んだ棚橋は、低空ドロップキックでタイガーの膝を攻め立て、レッグロックからインディアンデスロックへとつなげる。これに対し、タイガーもチョップを繰り出して反撃。ロープへ逃れたが、棚橋の脚攻めは止まらず、試合は緊張感を保ったまま進行していった。
タイガーも意地を見せる。場外戦ではトペ・スイシーダで棚橋をなぎ倒し、リングへ戻ってからは雪崩式アームドラッグ、タイガードライバーと得意技を次々と繰り出す。だが棚橋もカウント2で粘りを見せ、流れを渡さなかった。
終盤、タイガーの4の字固めや膝十字が決まりかけた場面もあったが、棚橋はスリングブレイドで形勢を逆転。ツイスト&シャウトから3連発のスリングブレイド、そして渾身のハイフライフローを炸裂させ、30分超の死闘に終止符を打った。
試合後、棚橋はタイガーを抱擁し、右腕を高々と掲げてその健闘を称えた。
バックステージで棚橋は、「ゲイブ戦のダメージ、そんなこと言ってる時間は俺にはないから。その日、その日、持ちうるだけの力で全力でやるだけ」と語り、「WRESTLE LANDでのシングルマッチを思い出しました。あの頃よりも今の自分の方が良くなっていると感じました。今日は忘れ物を取りに行って見つけたような感覚です」と充実感をにじませた。
一方、30周年記念の試合を終えたタイガーは、深く一礼したのち静かに口を開いた。
「意地見せたかったけど……見せられたかな?」と、試合直後に語ったタイガー。その視線の先には、長年の盟友・棚橋弘至がいた。「棚橋弘至は太ったって、体重が増えてコンディションが悪いとか、ケガをしてるとか……やっぱり腐っても棚橋弘至ですよ」と敬意を込めつつ、「僕も彼と同じ時期にベルトを持ってこの新日本を盛り上げてきたつもりはいます」と、時を共に歩んだ戦友との関係性に思いを馳せた。
2000年代初頭、みちのくプロレスから新日本に活躍の場を移したタイガーは、タイトルを獲得することで確かな存在感を示してきた。そのキャリアのスタート地点である後楽園ホールにて、節目の30周年を記念する一戦を行えたことに深い感謝を滲ませた。
「今日来ているお客さん、全国のファンの方……そういう方がいたからこそ、この30周年というのは自分の中で意味があった」と語ったうえで、「来年の7月、引退することにしました」と静かに口にした。
突然の発表に場がざわつく中、続けてその理由にも触れた。
「自分がデビューした時から佐山(聡)先生と作り上げてきたタイガーマスクというものが、30年という年月を経て、やはり自分の中で納得できなくなってきた」と、胸の内を打ち明けたタイガー。体力の衰えやケガではなく、長年抱えてきた“タイガーマスク”というキャラクターとの精神的なギャップにこそ、決断の背景があるとした。
「自分の中のタイガーマスクというものが薄れてきている」との率直な言葉とともに、「残された1年間は、今まで以上のタイガーマスクを見せる」と誓った。
そして、引退までの残り1年をどう過ごすかについては明確なビジョンを示した。「みちのくプロレスから始まって、日本全国、メキシコ、アメリカ、イギリス、イタリア……すべて世界中のファンがいたから続けてこれた。だからこそ、残りのシリーズは一つ一つまわっていきたい」と全国行脚を宣言。「東京だけじゃない。その土地、その人に、最後のタイガーマスクを見せたい」と語った。
引退日として設定されたのは、自身のデビュー記念日でもある「7月15日」。2026年のその日をもって、31年目のキャリアに幕を下ろすこととなる。
最後に改めて、ファンや関係者への感謝の言葉で締めくくった。
「タイガーマスクを応援してくれた方への感謝。それが僕のケジメです。あと1年、しっかりとやっていきます。今日はここで、その区切りを発表させていただきます。ありがとうございました」
記念試合での敗戦を越えて届けられた、潔い引退表明。伝説の覆面レスラーとしてリングを駆け抜けてきた30年の重みが、タイガーの言葉一つひとつに込められていた。残された一年、その闘いがどんな足跡を刻むのか。最後のタイガーマスク伝説が、いま静かに幕を開けた。
<写真提供:新日本プロレス>
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