ジェラシーこそレスラーの原動力 OZAWAへの嫉妬でN-1連覇を狙う清宮海斗

【柴田惣一のプロレス現在過去未来】

ノアのシングル・ナンバー1決定リーグ戦「N―1 VICTORY 2025」が、いよいよ8日、東京・後楽園ホール大会で開幕。GHCヘビー級王者・KENTA、ノアの救世主OZAWAらが優勝を狙っているが、V2を目指す清宮海斗も不退転の決意を固めている。

ノアのプリンスだった清宮は、今年元日、OZAWAにGHC王座を奪われたばかりか、主役の座からすっかり引きずりおろされてしまった。

歓声、声援までOZAWAに集中。ここ数年の清宮の活躍もあっという間に記憶のかなたに弾き飛ばされている。

「暴露系」OZAWAに言いたい放題に「口撃」され、反撃もままならなかった。清宮の絵にかいたような爽やかなプリンスぶりは時代遅れとばかりに、OZAWAの悪くて格好いい「黒」のエース像がノアマットに定着してしまった。

持ち前の運動神経やポテンシャルをフル活用したOZAWAの技の切れ味はさすが。清宮や他の選手の得意技を、本家以上にいとも簡単にやってのけるのだからたまらない。

エスプリの効いたコメント、SNSの活用の仕方もOZAWAにはかなわなかった。泣き言とは無縁だった清宮の口から恨み節が飛び出している。

やっと清宮も「衣」を脱ぎ捨てた。「ノアのエースたるもの、こうあるべき」というエース像にがんじがらめに自ら縛られていたのが清宮だった。

それがついに「反逆のプリンス」と言われるようになった。「プリンス」がついているようでは、正直まだまだ生ぬるい。「プリンス」でなく「戦士」に変わることが求められている。

思えば激しい「嫉妬」がレスラーの原動力になる。アントニオ猪木のジャイアント馬場への「反骨心」、藤波辰爾(当時は辰巳)の木戸修への「カール・ゴッチにマイサンと可愛がられた悔しさ」、その藤波へは長州力の「咬ませ犬発言」、小林邦昭の初代タイガーマスクへの「盟友が故の負けたくない想い」、橋本真也の武藤敬司への「なぜ俺がこいつの後ろに」、川田利明の三沢光晴への「いつまで先輩面」…名勝負を展開してきたライバルたちの間には「嫉妬」が渦巻いていた。

嫉妬は人間の感情の中で一番深く、そしてなかなか消えないと言われる。相手の嫉妬に押し潰されてしまうことや、自分自身の嫉妬に身動きが取れなくなる場合もあるが、嫉妬をマイナスではなくプラスに昇華させ、飛躍した選手も多い。

闘争心、精進を忘れずに体をつくり、技の完成度、心・技・体のいずれをとってもOZAWAに負けていないはずだ。なのに何故? 悔しい! 清宮の心を支配しているのは、もはや嫉妬だ。さらには先輩の意地もある。ノアの先頭に立ってきた実績を胸に、このままOZAWAの風下に立ち続ける気はないはず。

OZAWAは清宮が手にしていないプロレス大賞MVP取りを堂々と口にしている。ノアだけではなく日本プロレス界全体を見渡してのMVPだけに、時代の風の後押しも欠かせない。

 

今年は2011年以降、新日本プロレスが独占してきたMVPを他団体も狙える情勢だ。OZAWAが時の運も持っているのは間違いない。N―1を制し7月に失ったGHC王座に返り咲けばMVPに王手である。

全日本プロレスの三冠王座を守り続ける斉藤ジュン、新日本プロレスではG1で優勝しIWGP世界王座を視野にとらえたKONOSUKE TAKESHITAが日米3団体所属の大暴れもあって急浮上している。

とはいえ膠着気味だったノアの世代交代を一気進め、話題を振りまくOZAWAも推す声も強い。いや本命と言っていいだろう。

清宮にしてみれば、OZAWAにMVP取りで先を越されるのは何よりも我慢ならないはず。そのためにはN-1でV2を果たし、GHCベルトも取り戻す。これしかない。

OZAWAとは別ブロックにエントリーされた清宮。決勝戦(9月23日、後楽園ホール)に進出しOZAWAを迎え撃つしかない。

清宮が嫉妬を原動力に、すべてをかなぐり捨て「狂乱戦士」になれるのか。今年のN―1の見所はジェラシーの炎に身を焦がした清宮の「狂乱ぶり」かも知れない。(敬称略)

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