スターダムで「帰れコール」まで出たSareeeのブーイング騒動

【WEEKEND女子プロレス♯81】

 今年の夏、女子プロレスで大きな話題をかっさらったのが、Sareeeをめぐるブーイング騒動だ。2011年にディアナでデビューし、WWEも経験したSareeeは23年5月から自主興行「Sareee―ISM」を継続して開催中。と同時に、フリーとしてさまざまな団体で活躍しており、なかでもスターダムが現在の主戦場と言っていいのだろう。

 昨年度の女子プロレス大賞受賞者でもあるSareeeだが、今年に入るとマリーゴールド、シードリングでシングル王座を失い、引退を控える里村明衣子との一騎打ちにも敗れてしまう。それでも、3月自主興行でスターダムの朱里と一騎打ち(時間切れ引き分け)をおこなったあたりから“太陽神”に復活の気配が漂い始めた。長きにわたり切望していたIWGP女子王座獲りに照準を絞り、4・27横浜アリーナに来場。1年前に敗れた岩谷麻優の王座陥落で対戦相手こそ変わってしまったものの、新王者・朱里との決着も含め、目標が完全に定まったのだ。


写真提供:Sareee-ISM ペペ田中

 これを機にSareeeのスターダム参戦が具体化するわけだが、そんななかでワールド王者・上谷沙弥とSNS上で“本物のプロレス論争”が勃発。地上波テレビ出演でリングとは別の顔も見せる上谷に疑問を呈し、自主興行7・14新宿ではタッグながら初対戦にたどり着いた。その前に、スターダム参戦は親友なつぽいの要請から5・31大田区でさくらあやと対戦、6・8後楽園では朱里率いるゴッズアイの若手、八神蘭奈と闘った。この試合はタイトルマッチ実現に煮え切らない態度を見せてきた朱里への苛立ちや、八神への判官贔屓もあり、ファンがSareeeをヒールとして見るきっかけにもなっていたのではないか。

 八神戦後、朱里が海外でIWGP女子王座防衛を果たして帰国したことからSareeeとのタイトルマッチが正式決定。6・21代々木でのIWGP女子王座戦は一種異様な雰囲気のなか、Sareeeが悲願の王座奪取。スターダム側からすれば王座流出となるだけに、ヒール視される土台が完全に出来上がったとも言えるのだ。

Sareeeは、上谷とのやりとりで「本物のプロレス」を主張してきた。が、それは彼女のなかではごく自然な言葉にすぎなかった。というのも、Sareeeは全日本女子プロレスの流れをくむディアナでデビュー。井上京子に常日頃から「本物のプロレスラー」になるよう指導を受けてきたのだ。会場でも、「本物のプロレス!本気のプロレス!」といったキャッチフレーズが聞かれたものだ。


写真提供:Sareee-ISM ペペ田中

「私が中学生でデビューめざして練習していた頃、ずっと京子さんから言われていたのが『本物のプロレス』『本気のプロレス』で、『リングで本物をやれ』『本物のプロレスラーになってくれ』と言われていたんです。だから私にとっては当たり前なんですよね」

 だが、スターダムのファンや選手から、“スターダムが偽物”“スターダムが弱い”と受け取られてしまったこともまた事実である。

「べつに私はスターダムが偽物とは思っていないし、むしろスターダムという団体はすごく魅力的だと思っていました。だって、日本の女子プロレス界でトップなわけじゃないですか。お客さんも入って、華やかな演出のビッグマッチ。あんな最高の舞台ができるのも、スターダムだからですよね」

 しかしながら、ネガティブな噂ほど拡散しやすいのは世の常ということなのか。Sareeeの考えが曲解されて広まってしまう。


写真提供:Sareee-ISM ペペ田中

IWGP女子王者として乗り込んだリーグ戦「5★STAR GP」では、大ヒールとして迎え入れられてしまった。開幕戦で対した小波には悪の軍団H.A.T.E.のメンバーにも関わらず大声援が送られ、Sareeeは何をやっても大ブーイング。デビュー以来ずっと応援される立場だった彼女には、もちろん初めての経験だ。これが影響したか、初のレフェリーストップ負けという屈辱まで味わった。

ちなみに、新人時代には御大ジャガー横田とタッグを組んでの実地教育を受けていたのだが、ジャガーが若手の伸び悩む当時の女子プロ界を憂い、Sareeeら若い選手を「泣かせてやる」との思いからヒール転向、CRYSISを結成したといういきさつもある。それも含め、Sareeeは女子プロ界のレジェンドに何度も押し潰されてきた。その経験がいまでは役立っているものの、当時は常に脚光を浴びる若手中心のスターダムにジェラシーをおぼえていた。「いまに見てろよって、ずっと思ってました」。考えてみれば、Sareeeとスターダムは11年デビュー&旗揚げの“同期”にあたる。Sareeeはずっとスターダムを意識してキャリアを積み重ねてきた部分があるのだ。

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