【天龍プロジェクト】11.4『最後の後楽園』、代表・嶋田紋奈が描く未来図「天龍源一郎から連なる何かを、絶対に絶やさないこと」

「父であり、天龍源一郎という一人の人間を守りたかった」

その悲壮なまでの覚悟で、コロナ禍の最中に、天龍プロジェクトを再始動させた、代表・嶋田紋奈。

彼女にとって、この15年間は、偉大な父の名を背負い、その光と影に向き合い続ける、闘いの日々だった。

そして、一つの時代の終わりを告げる、「最後の後楽園大会」。

その豪華絢爛なカードには、彼女がプロモーターとして、そして、一人の娘として紡いできた、数多の“点と線”の物語が込められていた。

父からかけられた、最高の褒め言葉。リングの上で、共に夢を追いかける「仲間」たちとの絆。

そして、『最後の後楽園』の、その先に見据える、天龍プロジェクトの新たな未来とは。

後編では、父から娘へと受け継がれた、血と魂の物語の核心に迫る。

前編:【天龍プロジェクト】代表・嶋田紋奈が背負った15年の覚悟「父であり、天龍源一郎という一人の人間を守りたかった」 

■カード編成の哲学。「天龍源一郎との“点と線”が、そこにある」

――後編では、11.4後楽園大会のカード編成、そして、天龍プロジェクトの未来について伺います。まず、この豪華な対戦カード、代表として、最もこだわった点はどこでしょうか。

嶋田:うちの団体には、所属選手がいないんです。でも、その「所属がいない」ということが、決してハンデにはならない、ということを、まずはお見せしたかった。

ここに集まってくれた選手たちは、それぞれ所属団体も違えば、フリーの選手もいる。でも、このプロレスという小さな村で生きる者として、全員が、どこかでつながっている、親戚みたいなものだと、私は思っているんです。みんなが仲間であり、ライバルでもある。そういう、気概を持った人たちの集まりだということが、一番大事なこと。

そして、一見、天龍源一郎とは何の関係もないように見える選手でも、必ず、どこかで“点と点が線で結ばれる瞬間”があるんです。お客様が知らないだけで、そこには必ず、物語がある。その人生の面白さ、縁の不思議さを、このカード編成で感じていただけたら、嬉しいですね。

――例えば、メインイベントの、鷹木信悟&拳剛 vs 岩本煌史&海野翔太。ここにも、様々な“点と線”がありますね。

嶋田:そうですね。鷹木選手は、ご自身でも「龍魂」を掲げて、父をリスペクトしてくださっていますし、海野選手は、お父様(レッドシューズ海野レフェリー)とのご縁で、小さい頃から知っている。岩本選手も、拳剛選手も、天プロのリングで、常に熱い戦いを見せてくれている。それぞれが、それぞれの形で、天龍源一郎という存在と向き合い、このリングに上がってくれる。そういう、魂のぶつかり合いを、メインに持ってきました。

――そして、スペシャルシングルマッチ、矢野啓太 vs ザック・セイバーJr.。このカードは、紋奈さんにとって、特に思い入れが強いと伺いました。

嶋田:はい。正直に言えば、このカードが叶わなければ、今回の記念興行自体、やらなかったかもしれない。それぐらい、私の中では、絶対に実現させなければいけない試合でした。

――と、言いますと?

嶋田:感謝、ですね。この大会には、ネームバリューのある選手も、チケットを売れる選手も、たくさん出てくれます。でも、そういうこととは全く違う次元で、私たちが一番大変だった時期を、共に歩み、支え続けてくれた選手たちがいる。矢野啓太も、佐藤光留も、拳剛も……挙げればキリがないですが、彼らがいたから、今の天龍プロジェクトがある。

この業界で、まっすぐに、正直に生きていると、裏切られたり、嫌な思いをしたり、夢を諦めそうになる瞬間が、誰にでもあると思うんです。父も、そうでした。でも、そういう時に、腐らずに、手を抜かずに、まっすぐ生きていれば、必ず、誰かが見てくれている。そして、「諦めないで良かった」と思える瞬間が、必ず来る。

矢野啓太という、誰よりもプロレスを愛し、探求し続けてきたレスラーに、ザック・セイバーJr.という、世界最高峰の相手とのシングルマッチをプレゼントすること。それは、彼だけでなく、彼を信じ続けてきた全ての人たちに、「夢は叶うんだ」ということを、私が証明したかったんです。

――カードの一つ一つに、深い意味と物語が込められているのですね。

嶋田:はい。本当は、お客様に想像を膨らませていただきたいので、本来はマッチメイクの意味なんでいちいち説明すべきではないと思うんですが、でも今回は「最後」なので。選手たちへの想いも込めて、少しだけ、注釈をつけ させていただきました。

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