【コラム】WWEスーパースターたちの“日本愛”が爆発した2日間!中邑、AJ、アスカ、カイリ、イヨ、ジュリアが示した故郷へのリスペクト
世界最大のプロレス団体WWEが、10月17日、18日の二日間にわたり、両国国技館を揺るがした「WWEスーパーショージャパン」。
それは、単なるスーパースターたちの競演ではなかった。
我々が愛し、追いかけ続けてきたレスラーたちの「人生」という名の物語が、国境や団体の垣根を越えて交差し、そして新たな伝説へと昇華した、まさに“魔法”の二日間であった。
この物語の“語り部”となったのは、間違いなく“キング・オブ・ストロングスタイル”中邑真輔、その人であった。

©WWE
■海を越えた“戦友”への送辞
初日の17日。凱旋勝利を飾った中邑が、メインのリングでマイクを握った。
「東京! WWEが今年も両国国技館に帰って来たぜ。楽しんでるか? 世界中のどの街よりも盛り上がって行こうぜ!」 その言葉に、日本のファンは熱狂で応えた。
だが、本当の衝撃はその直後だった。 「日本、愛してま~す!……イヤァオ!」
両国国技館の時が、止まった。
「愛してま~す!」 それは、中邑が新日本プロレス時代、団体の浮沈を懸けて、その覇権を争い続けた“終生のライバル”、棚橋弘至の魂の叫びそのものであったからだ。

来年1月4日、東京ドームで、棚橋はその25年以上にわたるレスラー人生に幕を下ろす。
もう二度と、リングで交わることはないかもしれない。
新日本のど真ん中を共に支え、時には憎み合い、時にはリスペクトを交わし合った“戦友”へ、中邑真輔が、今、自分が生きる世界最高峰のリングから送った、最大限のエールであり、魂のメッセージであった。
中邑真輔が叫んだ「愛してま~す!」は、間違いなく、引退ロードを歩む棚橋弘至の胸に、真っ直ぐに届いたはずだ。

■日本マットに捧げた“最後の別れ”
そして、物語は二日目、18日のメインイベント後に、そのクライマックスを迎える。
中邑が、これが実に14年ぶりの来日となった“反逆のカリスマ”CMパンクと夢のタッグを結成し、劇的な勝利を飾った。
その熱狂のリングに、中邑とパンクが呼び込んだのは、もう一人の“レジェンド”だった。
“フェノメナール”AJスタイルズ。

来年中の引退を表明し、この両国が、新日本プロレス時代に数々の伝説を築いた日本マットでの“最後”の試合となることを明言していた男だ。
初日の第1試合、AJはその変わらぬ“現象的”な動きで、貫禄の勝利を飾った。
その一挙手一投足に送られた「AJスタイルズ」チャントは、日本のファンがどれほどこの男を愛し、そして別れを惜しんでいるかの証明であった。

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そのAJが、万感の想いを胸に、両国のリングに立つ。そして、その傍らには、IWGP王座を巡る死闘をはじめ、数々の名勝負を繰り広げてきた中邑真輔がいた。
AJからスマートフォンを受け取った中邑が、その“戦友”の最後の言葉を、通訳として、日本のファンへ届け始めた。

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「私が初めて日本に来た時、何を期待されているのか、正直分かりませんでした。自分が受け入れられるのかも分からなかった。でもあなたたちは敬意と情熱をもって迎えてくれた。俺は持てるすべてを出し切ってきた。それがあなたたちにふさわしいと思ったからです」
中邑の声が、AJの想いを乗せて両国に響き渡る。
「その代わり、あなたたちは私に忘れられないものをくれた。それは信頼、エネルギー、プロレスへの愛です」
そして、中邑は、自らの感情を抑えるかのように、最後のメッセージを読み上げた。
「俺はこのリングを去るかもしれない。でも、俺の心の一部はいつまでもここに残る。日本に、そしてあなたたち一人一人の心の中に」

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その瞬間、両国国技館は、万雷の「サンキュー、AJ!」チャントに包まれた。AJは日本語で「ありがとうございます」と、深々と頭を下げた。
中邑真輔が繋いだ、二人の“戦友”への魂のリレー。棚橋弘至へは「愛してま~す!」という未来へのエールを。

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そして、AJスタイルズへは、その最後の言葉をファンに届けるという「介錯」を。
新日本プロレスの黄金時代を築いた三人の男たちが、それぞれの形で、それぞれのプロレス人生の「縁」を、この両国のリングで結実させた。














