選手のリアルが物語に反映される舞台「Venus誕生」最終幕へ!

【WEEKEND女子プロレス#87】
 
今年5月に産声を上げたアイスリボン全面協力の演劇プロジェクト、Venusエンターテインメントの旗揚げ公演「Venus誕生」が11月公演で佳境を迎える。

「Venus誕生」は、アイスリボンの道場でもある埼玉県蕨市・レッスル武闘館にて5月(第1幕)、7月(第2幕)、9月(第3幕)の隔月毎週金曜日に合計12公演を開催してきた。そして、同所でおこなわれる11月7日、14日、21日、28日(すべて金曜日、開場18時30分、開演19時)の第4幕が最終幕になるという。

物語は、ケガをして表舞台から姿を消した、みなみ飛香演じるプロレスラーの如月ひかりが、新たな道として女子プロレス新団体の旗揚げを決意。そこにさまざまな事情や背景を持つ女性たちが集まり、厳しいトレーニングに耐えながらレスラーデビューと団体旗揚げをめざすというものだ。

“セミドキュメント”と呼ばれる形式で披露される「Venus誕生」。ユニークなのは、プロレス団体で起こるであろうさまざまな出来事が物語に組み込まれ、ストーリーの進行に伴い出演者のリアルな部分が随時反映されていくということだ。


写真提供:アイスリボン

たとえば、みなみ飛香は現在、左ヒジの負傷により長期欠場中。事実、2年間リングで試合をおこなっておらず、まずはこの背景が物語の基本設定になっている。また、8月にアイスリボンでプロレスデビューを予定していた直江ミうが病気のため入院。9月公演は、彼女が入院中との設定に差し替えられたという。そのほか、トレーニングの進行具合によってもストーリーに調整が加えられ、劇中で組まれる対戦カード、すなわちアクションシーンの内容や結果に影響を与えていくのである。このユニークな形式について、アイスリボンの佐藤肇代表に話を聞いてみた。

「現実の出来事を舞台に反映させていくのですが、もちろん演劇なので演出は入ります。たとえば、公演上で役者たちが筋トレをやったりスクワットを何百回もやらされたり、実戦的なスパーリングもおこなったりするのは演技というよりもリアルで、途中でヘトヘトになってできなくなってしまう可能性もあるんですね。その場合、リアルに沿って物語が変わっていくんです。また、挫折したり、なんらかの事情でやめてしまう子がいれば、やめる理由は演出のフィクションになったりしますけど、やめていくストーリーになりますし、しれっといなくなってしまった子がいれば、いなくなってしまった状態に変えたりします」

 本番前の準備では、プロレスラーになるためのトレーニング日と演劇の稽古日に分けられており、役柄にもよるが試合シーンが組まれるかは上達の具合しだい。「人前で見せるものに至っていない」と判断された場合、セコンド役になる可能性もあるとのことだ。


写真提供:アイスリボン

 実際、俳優たちもさまざまな背景からこの舞台への出演を希望して集まってきた。みなみ飛香、若菜きらり、海乃月雫ら現役プロレスラーをはじめ、清水ひかりのように引退した元レスラーもいる。また、アクトレスガールズで活躍中だったり、これからプロレスラーをめざそうという女性もいるとのこと。演劇としても画期的なこの方式について、佐藤社長は以下のように説明する。

「プロレスのアクションは毎公演でおこなわせています。それに合わせて練習もするし、自然と本番もトレーニングになる。練習ではありますけど、出演者が舞台を通じてプロレスのトレーニングをしながらうまくなっていけば、舞台の公演の内容も変わっていく。これって、プロレスラーをめざす子にメリットがあるんですよ。お客さんを前にすることで、最初できなかったことがどんどんできていくようになったりするんですね。また、お客さんからすれば成長していく過程を一緒に楽しめる。たとえば、かつて藤本つかさが映画『スリーカウント』に出演する際、ドロップキックをやらせたところうまくできなかったんですよ。100発以上打たせてもダメで。それでも、ここから撮影だからというと、頑張ってやり続けて、できるようになった。その後、藤本はドロップキッカーズでドロップキックの名手と呼ばれるまでになりました。練習だとイヤだけど、人に見られるとなれば恥ずかしいものは見せられない。それで、演じる方の意識も変わってくるんですよね」

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