【新日本】吉岡勇紀、デビュー9周年の「洗礼」。金丸＆東郷の非情な集中砲火を耐え、KUSHIDAと掴んだ執念の3勝目「キャリア20年目以上のベテランの言うことは聞かない方がいい」

新日本プロレスは10月29日(水)、新潟・サン・ビレッジしばたにて『SUPER Jr. TAG LEAGUE 2025』第6戦を開催した。

『SUPER Jr. TAG LEAGUE 2025』
日時：2025年10月29日 (水) 17:30開場18:30開始
会場：新潟・サン・ビレッジしばた
観衆：1,001人（満員）

Bブロック公式戦の第4戦目、決勝トーナメント進出へ負けられないKUSHIDA＆吉岡勇紀組（ドラゴンゲート）が、金丸義信＆ディック東郷組と激突した。

この日は吉岡にとってデビュー9周年という記念すべき日であったが、H.O.T.のベテランコンビによる非情な「洗礼」を受ける過酷な試練の場となった。

ゴングが鳴るや否や、金丸＆東郷組が奇襲を仕掛け、戦いは即座に場外戦へともつれ込む。H.O.T.の標的は明確であった。ドラゴンゲートから参戦中の吉岡勇紀である。

吉岡は観客席へ投げ捨てられ、リングに戻った後も、金丸＆東郷組による的確なインサイドワークの前に劣勢を強いられる。

金具がむき出しにされたコーナーポストへ腰を打ち付けられ、さらにはパートナーKUSHIDAが持つべきタッチロープを東郷が強奪し、それを用いて吉岡の首を絞め上げるなど、反則ギリギリのラフファイトで徹底的に体力を奪われていった。

長時間にわたりH.O.T.の術中に捕らわれた吉岡であったが、辛くもKUSHIDAにタッチを繋ぐ。

KUSHIDAはハンドスプリングエルボーやホバーボードロックで反撃を試み、一時は金丸と東郷の二人まとめて関節技に捉えるなど、百戦錬磨のテクニックで流れを引き寄せようとする。

しかし、H.O.T.の老獪さはそれを上回る。東郷が浅見レフェリーを巧みに利用してKUSHIDAの視界を遮り、ローブローを敢行。

さらにはペディグリーを叩き込み、万事休すかと思われた。

だが、勝負の潮目が変わったのは、H.O.T.の必殺連係が裏目に出た瞬間であった。東郷がコーナー最上段からのセントーンを狙ったところを吉岡がカット。

すかさず金丸がウィスキーミストを噴射しようとするが、吉岡が放ったローリングエルボーが金丸の顔面を捉え、噴射された毒霧はパートナーである東郷の顔面を緑色に染め上げた。

この千載一遇の好機を、吉岡とKUSHIDAは見逃さなかった。

吉岡が変形のフィッシャーマンズバスターから、この日への想いを込めたハイフライフローを東郷に投下。さらに場外の金丸をトペ・コンヒーロで足止めする。

リング上、完全に孤立した東郷に対し、最後はKUSHIDAが必殺のテキサスクローバーを完璧に極め、東郷からギブアップを奪取。

KUSHIDA＆吉岡組が、苦しみ抜いた末に貴重な3勝目をもぎ取り、Bブロック突破へ望みを繋いだ。

H.O.T.の老獪なインサイドワークを辛くも打ち破ったKUSHIDAと吉岡勇紀は、インタビュースペースの床に座り込み、激闘のダメージと安堵が入り混じった表情を見せた。

KUSHIDAは「百戦錬磨、プロレスの仙人、達人と知恵比べ。知恵比べは楽しいなぁ」と、金丸・東郷組とのギリギリの攻防を強敵との対局のように楽しんだと振り返った。

一方、執拗な集中砲火を浴びた吉岡は、「今日、じつはどうしても勝ちたい理由があって、なんと今日、デビュー9周年だったんですよ」と告白。

キャリア10年目の初戦を白星で飾れたことに安堵しつつ、「（フィニッシュにはならなかったが）ハイフライフローを新日本プロレスで1発目出したんで、次の最終戦、もう次はハイフライフローでフィニッシュを決めて、なんとか決勝に望みを繋げたい」と、記念日を自らの飛翔で祝う決意を新たにした。

また、キャリア20年のKUSHIDAから「キャリア20年目以上のベテランの言うことは聞かない方がいい」と、H.O.T.のようなクセ者たちへの対処法とも取れるアドバイスが送られると、吉岡も「それは10年やってきてよくわかってます（笑）」と応じ、世代の違う二人の間に確かな信頼関係が垣間見えた。

記者から「このジュニアタッグリーグ、過去を振り返ると新チームで優勝というのが多い」と指摘されると、KUSHIDAは「だって、この人、新日本プロレスジュニアのこと何も知らないですよ」と笑いながらも、「その強さが彼にはある」と断言。

ドラゴンゲートから乗り込んできた吉岡の「無知の強さ」こそが、このリーグを制する鍵であると示唆した。

最終戦に向け、二人は「脇目振らずに」「自分の道を進んでいきましょう」と、固い握手を交わした。

なお、敗れた金丸義信、ディック東郷はコメントブースに姿を見せず、ノーコメントで会場を後にした。

＜写真提供：新日本プロレス＞