【JTO】稲葉あずさ、覚醒の理由「姉」から「ライバル」へ、そして「TAKAみちのく」という存在
18歳の誕生日を目前に、自主興行で「1日3試合」、そして「尾崎魔弓超え」という、無謀とも言える挑戦に臨む、JTOの“あずさ姫”稲葉あずさ。
【前編】では、その覚悟の裏にある「弱い自分を捨てたい」という、切実な想いを語ってくれた。では、彼女をそこまで駆り立てる、強烈な自我と、折れない心は、いかにして形成されたのか。
姉・稲葉ともかという存在。JTO代表・TAKAみちのくとの、親子のような師弟関係。そして、“赤”と“黒”、二つの人格が意味するものとは?
【後編】では、彼女の強さの根源、そのパーソナリティの核心に、深く迫る。
『あずさ姫お誕生日自主興行』
日時:2025年11月29日(土)開始18:00
会場:東京・新宿FACE
【決定対戦カード】
▼スペシャルタッグマッチ
TAKAみちのく&稲葉あずさ vs 黒潮TOKYOジャパン&花園桃花
▼スペシャルシングルマッチ
稲葉あずさ vs 尾崎魔弓(OZアカデミー)
▼スペシャルシングルマッチ
稲葉あずさ vs スペシャルX
▼スペシャルシングルマッチ
稲葉ともか vs MIRAI

■鋼のメンタルの作り方「怒られすぎて、強くなった」
――尾崎魔弓選手という、キャリアも格も、そして凶器の扱いも(笑)、全てが規格外の相手に、18歳になる自分が、なぜ立ち向かおうと思ったのか。その「気持ちの強さ」は、どこで培われたのですか?
あずさ: なんでしょうね……。でも、最初から、こんなに気持ちが強かったわけじゃないんです。デビューしたての頃は、本当にメンタルも弱くて、すぐビビってた。
――それが、どこで切り替わったのでしょうか。
あずさ: やっぱり、怒られすぎたから、ですかね(笑)。
――怒られすぎて。
あずさ: 若くして二冠チャンピオンになったり、他団体に出させてもらったり。やっぱり、周りからは「なんで、こいつが?」っていう目で見られることも多かった。妬まれてはいないと思うんですけど、そういう視線は、すごく感じていました。
あとは、シンプルに、先輩方から、すっごい怒られました。試合でも、試合後でも。自分、それまで、親にも学校でも、あんまり怒られたことがなくて。どちらかというと、可愛がられてきた方だったんで。それが、プロレス界に入った途端、毎日、いろんな人に怒られる。「怖っ! めっちゃ怖い!」って、最初はもう、辞めたいって、何回も思ってました。
――その経験が、逆に、あずさ選手を強くした、と。
あずさ: そうなんです。逆に、怒られすぎて、耐えられるようになっちゃった、というか。適応能力が、めちゃくちゃあったみたいで(笑)。それに、「上に行く人間は、こういうのを気にしていたら、絶対に上に行けないんだ」って、自分で自分に言い聞かせているうちに、本当にメンタルが強くなりました。
――反骨心も、人一倍強いですよね。
あずさ: 自分、結構、思ったことを、そのまま言っちゃうタイプなんですよ。怒られても、「はい、すいません」って素直に聞くんじゃなくて、「なんでですか?」とか、「でも、私はこう思います」って、言い返しちゃうタイプで。それは、良くないところだとも思うんですけど、でも、みんなにないものを、私は持ってるんだっていう、自信にはなっています。

■「黒」の自分、「赤」の自分。そして、二人の“師匠”
――今、あずさ選手は、JTOでの“赤”の姿と、H.A.T.E.での“黒”の姿、二つの顔を持っています。素の自分に近いのは、どちらなのでしょうか。
あずさ: 黒ですね。めっちゃ、近いです。
――ヒールサイドである、“黒”の自分、ですか。
あずさ: どっちの自分も、楽しくて、自分を出せているとは思うんですけど、どっちかと言われれば、黒の方が、素の自分には近い。
――と言いますと?
あずさ: もともと、デビューする前は、本当にもう、ヤンチャで。地元では、ヤンキーに近いような、ダメ人間だったんです。人に迷惑かけることしか考えてないような。
――それが、どうして、今の“赤”の姿に?
あずさ: 姉(稲葉ともか)に、全部、直されました。デビュー前に、私が悪いことをした時に、ともかから、LINEで、もう、スマホのメモ帳じゃ収まりきらないぐらいの、超長文の、ブチギレのメッセージが来て。
――お姉さんから。
あずさ: 「人に迷惑かけて、親にも迷惑かけるんだったら、もうプロレスラーにならなくていい!」って。それで、本気で反省して、直さなきゃダメだ、って思って。当時の悪い友達とは、全員、縁も切りました。だから、地元には、もう友達、いないです(笑)。

――お姉さんとは、昔から、そういう関係だったのですか?
あずさ: いえ、昔は、よくケンカしてました。むしろ、プロレスラーになるって決めたぐらいの時から、仲良くなった感じです。でも、最初の頃は、もう、完全にお姉ちゃんのパシリでしたよ(笑)。家の中では、ともかが絶対女王でした。
――それが、今や、立場が逆転した、と。
あずさ: 今は、私の方が、家族の絶対女王です(笑)。
――(笑)。そのお姉さん、稲葉ともか選手は、今、あずさ選手にとって、どんな存在ですか?
あずさ: なんて言うんだろう……常に、自分の“壁”になってくれる存在ですね。高い目標として、ずっと、そこにいてくれるのは、ありがたいです。この間、シングルで(5月のタカタイチマニア)初めて勝ちましたけど、それでも、まだまだ超えられない壁を、またすぐに作ってくる。だから、自分がもっと強くならなきゃ、って燃えさせてくれる存在。ともかがいたから、私の負けん気も、ここまで強くなれたんだと思います。
――プロレスの話も、よくされるのですか?
あずさ: しますね。「プロレスラー・稲葉あずさ」を育ててくれたのは、間違いなく、ともかだと思ってるので。
――TAKAみちのく代表ではなく?
あずさ: 代表は、“人間・稲葉あずさ”をまともにしてくれた人(笑)。いや、まともじゃないですけど、代表も。TAKAさんと、ともか。この二人が、私の師匠だと思ってます。














