【新日本】棚橋弘至、故郷で辻陽太との“師弟対決”に敗れるも「最後まで全力でプロレスラーを全うします」試合後、Yuto-Iceに喧嘩を売られ、外道がまさかの接触
新日本プロレスは11月2日(日)、岐阜・岐阜メモリアルセンター で愛ドーム(第1体育館)にて『棚橋弘至~衣錦還郷』を開催した。
『棚橋弘至~衣錦還郷』
日時:2025年11月2日 (日) 15:30開場17:00開始
会場:岐阜・岐阜メモリアルセンター で愛ドーム(第1体育館)
観衆:3,742人(札止め)
札止めとなった3,742人の観衆が見守る中、セミファイナル(第7試合)ではIWGP GLOBALヘビー級選手権試合、王者・辻陽太と挑戦者・棚橋弘至による「師弟対決」が実現した。
辻にとって棚橋は、プロレス入りのきっかけであり、若手時代には付き人も務めた「恩師」である。10月に王座を奪還した辻は、「アンタがいなければ俺はこの世界にいなかった」と、自らのベルトを懸けた「恩返し」の舞台を要求。対する棚橋は、来年1月の引退を前に、キャリア終盤での王座初戴冠と、故郷への凱旋V(ビクトリー)を狙う大一番となった。
今年の『G1 CLIMAX』では棚橋が勝利しているこの一戦。岐阜の地で万感の師匠越えか、それともエースが故郷に錦を飾るのか。互いのレスラー人生が交錯する戦いは、辻が非情なまでの猛攻で棚橋を沈め、王座初防衛に成功した。

ゴングが鳴り響くと、場内は引退ロードを歩む地元の英雄に対し、割れんばかりの「棚橋」コールに包まれた。序盤は、辻のネックロック、棚橋のヘッドロックといった、互いの力を確かめ合うような重厚なグラウンドレスリングが展開される。
しかし、棚橋がエアギターを奏でた直後、辻が背後から棚橋の膝裏へ低空ドロップキックを突き刺し、試合は一気に動いた。辻は師匠の弱点である腰、そして膝に照準を定める。

コーナーでのキック連打、ショートレンジのショルダータックルから、フライングメイヤー、ボディシザース、キャメルクラッチと、一切の情けを排した集中攻撃で棚橋のスタミナを奪っていく。
故郷の大声援を受ける棚橋も、フライングフォーアーム、セカンドロープからのサンセットフリップで反撃の狼煙を上げる。スリングブレイドを狙うが、辻はこれを読んでコンプリートショットから逆エビ固めへ。ロープに逃れた棚橋に対し、辻はなおも強烈な逆水平チョップと膝蹴りを叩き込み、主導権を渡さない。

中盤以降、試合は互いの意地とプライドがぶつかり合う激戦となった。棚橋がドラゴンスクリューを決めれば、辻もエルボー合戦で押し込む。
棚橋がツイスト&シャウト、スリングブレイドとG1での勝利を彷彿とさせる猛攻を見せ、ハイフライフローを狙うが、辻はジャンピングニーでこれを阻止。雪崩式ブレーンバスターから再び逆エビ固め、ジャーマンスープレックスホイップと、王者として棚橋を追い詰めていく。

終盤、両者の感情が爆発する。辻が棚橋の代名詞であるスリングブレイドを「掟破り」で敢行。さらにコーナー最上段からハイフライフローを放つが、これは棚橋が回避。
逆に棚橋が、掟破りのジーンブラスターを辻に叩き込む。あまりのダメージに両者ダウン状態となり、カバーができない。気力を振り絞った棚橋は、辻の背中にハイフライフローを投下し、追撃のハイフライアタックを敢行。

万全の体勢でとどめのハイフライフローを放った棚橋。しかし、辻はこれを寸前でかわすと、カウンターのジーンブラスターを突き刺す。
立ち上がった両者は、張り手とヘッドバットの壮絶な打ち合いを展開。最後は、棚橋のランドスライドからのハイフライフローを、辻が両膝で迎撃。勝機を掴んだ辻が、渾身のジーンブラスターを完璧に決め、恩師・棚橋弘至から万感の3カウントを奪取した。

試合後、辻はダウンする棚橋を前に、ベルトを肩にマイクを握った。

辻 「棚橋さん!何度も言うように、オレはアンタがいなければ、このセルリアンブルーのリングに立つことはなかっただろう。 ずっと、アナタの背中を追いかけてきた!そして今日、初めてアナタに勝つことができた。オレはさ、エースになるつもりはない、棚橋弘至になるつもりはない。 オレは棚橋弘至、アンタの存在を超える!大丈夫だ、新日本プロレスは、オレに任せておけ!じゃあ、最後にこれがオレが、このリングで直接できる、アンタへの恩返しだ!みんな、棚橋さん、アンタの声を聞きたがってるぜ!」
辻からマイクを受け取った棚橋は、万感の表情で師弟の物語と未来への継承を語った。
棚橋「あ~、辻!効いたぞ!オレの記念の大会だぞ!負けた状態で、何を言えっていうんだよ~!!まあ、しゃべりますけどね。あ~、辻。あらためて、あの日、自由が丘の駅でオマエに出会えたことを、本当によかったと思ってる。ただ、プロレス界に誘ってしまった、辻の人生に変化を与えてしまった。オレは、しっかりと責任を果たすつもり。だから!辻!新日本プロレス、頼むな!」
二人が抱擁を交わすと、辻はリングを棚橋に譲る。棚橋は、岐阜での最後の試合を終え、ファンへ感謝を述べた。
「そして、久しぶりの岐阜大会、たくさんのご来場、本当にありがとうございました!25年間、本当に、沢山の応援をいただきました!改めてありがとうございました!そして、僕は岐阜での試合が、今日これで最後になります。は~、は~、は~、辛いことも苦しいこともあったけど、オレは岐阜出身を誇りに思うし、そしてプロレスラーになってよかったです!というわけで、勝って言いたかったけど、言わせてください!じゃあ、最後に~!岐阜のみなさ~ん、愛してま~す!!」

棚橋が凱旋興行を締めくくろうとした瞬間、同じく岐阜出身のYuto-Ice(中島)が登場。マイクを握ると、中学の先輩である棚橋に対し、引退ロードでのシングルマッチを要求した。
Ice 「棚橋弘至!オレとタイマンはれ、コノヤロー!場所はそうやなあ、テメー、疲れたことねえんやろ?やんならよ、来週の土曜日、どうや? 隣の愛知県ならよ、岐阜県民のヤツらも、ようけ観にこれるやろ!どうや?やれんのか?」
これに対し、棚橋もマイクで即答した。
棚橋 「オイ、中島!オイ、中島!先輩やぞ?同中の先輩やぞ!オイ。まあな、でも、かわいい後輩や。やったるからな!ちょっと待っとけ!」
Iceは11.8東祥アリーナ安城でのメインイベントを要求し、「最初で最後のタイマンや、テメーのよ、いままで一番コエー棚橋弘至を引きずりだしてよ、一緒に“プロレスハイ”になろうぜ!」と叫び、リングを降りた。

【試合後バックステージコメント】

辻陽太 「自由が丘の駅で12年前に棚橋さんに会って、月日が流れてやっとこの日が来た。でも棚橋社長、忘れないでくれ。俺の追い上げはレスラーが終わっても続くぞ。社長になったアンタにはもっと俺からの突き上げを感じてもらうつもりだ。 でも、覚えておいてくれ。これが新日本プロレスなんだ。ほかの団体にはマネできない。12年かけて俺と棚橋さん、こういうストーリーを作ることができる。これが新日本プロレスなんだ。まあ、俺にこんなことを言われなくてもわかっているだろうけどな。 さあ、アンタに言われたとおり、アンタに変えられたこの人生、全力で俺はアンタ以上のレスラー人生を歩んでやるぞ。(※一旦控室へ向かうが、引き返して)忘れてた。ベストバウトってのは、シチュエーションが作るんだよな?」

Yuto-Ice 「オイ、俺の一番最初にできた野望。棚橋弘至にタイマンで勝つ。それが果たされる時が来たぞ。オイ、岐阜のフッドスターはよ、エースからIceに変わるってことを俺が(11.8)安城で証明してやるから。マジでHighだ。エース、来週たのしみにしとるからな。感じろ! Let‘s get high! チッチッチッ! Big Up!」

棚橋弘至 「痛い、痛い……痛い……。(※フロアに座り込んで)活きが良いね……(※ここで突然、外道がインタビュースペースに姿を現し)ヘイヘイヘイ、何? 何?」
外道「棚橋さん、まだ引退試合の相手決まらないですか?」
棚橋「引退試合の相手はまだ決まってないです」
外道「決まってない……。もしあれだったら、あの……俺、用意しますから。ハイ。言ってください」(※と、言い残し外道は立ち去る)

棚橋「そっか……あらためて引退まで2ヵ月。まだ闘ってない選手もいっぱいいるから。自分の宣言したとおり、闘いね、全員と。時間がないけど。それにプラスして引退試合の相手も近いうちに発表しないとね。 やることが多いね。ただ、こうしてね、冷静に見て闘いたい選手がたくさんいてくれる。なんて恵まれたプロレスラーとしての生き方だったんだろうかっていう。振り返るにはまだ早いけど、最後まで全力で。ずーっと全力出して生きてきたから。動きが悪いとか、弱くなってるとか、そんなもんは全部、承知の上で受け入れて闘っているから。 10あった力が6になっても、5になっても、それを全部出せば全力じゃないですか。まぐれで10出るかもしれないじゃないですか。それは全力を出し切った人だけに起こる奇跡。俺は最後まで全力でプロレスラーを全うします」
――(リング上で)辻選手に新日本を託すようなコメントもありましたが。
棚橋「ハイ。若い選手の未来ってのは、ホントに縛れないですよ。自分の可能性をね、挑戦するのも年齢にもリミットがあるし。後悔のないレスラー人生を歩んで行くことが、レスラーにとって一番だと思うんで」
――最後、ハイフライフローの前に“昔よく見た技”を出されていたと思うんですけど、あの技は?
棚橋「え? あぁ……よく見てるね。まあファイヤーマンズキャリーのような形でね。おたがい団体が違って離れても、ライバルとして競い合った日々は消えないですからね。まあ、見といてよ。まあやるよ、ついに。2ヵ月しかないけど」
――あらためて今日の満員の景色はいかがでしたか?
棚橋「岐阜産業会館がなくなって何年も新日本プロレス岐阜でできなかったけど、こういったキッカケで、棚橋のラストイヤーで、岐阜で大会ができた。これはきっと来年、再来年、そして将来の新日本プロレスにとても大切な1日になったと思います。今日来た人、次また全員来てくださいね」
――(今日の)岐阜大会、プロレス史上最大の岐阜でのビッグマッチだと思うんですけど、その舞台に立てたっていうのはどういう想いがありますか?
棚橋「そうですね、岐阜の偉大な先輩、橋本(真也)さんも……(※涙ぐみながら)見ててくれたんじゃないかと思うし、きっとお会いしていたら『おお、タナ!ようがんばったな』って言ってくれてると思います」
<写真提供:新日本プロレス>
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