【豆腐プロレス】赤のベルトをめぐる物語。リングの上で感情がほとばしり、予定調和は裏切られる

先週最終回を迎えたドラマ「豆腐プロレス」のYoutube映像、「OVER THE TOP」が公開された。

「OVER THE TOP」は今回で最終回。
宮脇咲良演じるチェリー宮脇と松井珠理奈演じるハリウッドJURINAが、お互いのプロレス経験をぶつけた、最後のプロレス収録に挑む。

ハリウッドJURINAは、まさに白金ジムのトップとして君臨してきた経歴を示すように、初期からの技を数多く取り入れてくる。
まさに、チェリー宮脇の憧れを裏切らないパフォーマンスを見せる。
その動きは「体が覚えている」というレベルのもの。数多くの楽曲をこなすAKB48グループならではのスキル、といってもいいかもしれない。

一方、JURINAに挑むチェリー宮脇は、プロレスを始めてから身につけてきた技で戦う。
スライディングエルボー、ジャンピンサクラ、サクラスペシャルと、どれもが、どこか懐かしい技。
特にサクラスペシャルは、ロングスピーチ横山戦で抱え上げるのに苦戦していたが、何度か失敗しつつも、JURINAを担ぎ上げることができた。
成長していない人はいない。その見え方、現れ方が少し違うだけだ。

そして試合の収録。
ゴングが鳴った直後のロックアップ、ハリウッドJURINAは流れるように攻め立てる。髪を振り乱し、叫び、宮脇を苦しめる。宮脇を投げ、固め、戦士のまなざしで射通す。
JURINAの叫びは、収録用マイクでないYoutube映像でもはっきりと聞き取れる。
プロレス歴半年の新人レスラー・チェリー宮脇は、受け、抑えられ、苦しみ、逃げ、がむしゃらに逃れようとする。

試合終盤は覚醒した宮脇に立ち向かうJURINAの輝きが際立つ。
フラフラになりながらブローイングJURINA(レインメーカー)を必死に放つ。一発目でも手を放さず、フォールもせず、宮脇を起こしてまで、もう一発。
ただ勝つためではなく、チャンピオンの姿を世界に見せつけるために「再生」しているようにも見える。

演技が巧いとかプロレス技が巧いとか、そういう話ではない。プロレスは、観客に、JURINAの魂を、宮脇の苦しみを感じさせられるかどうかが勝負だ。
それが本質だ。
宮脇が「主人公」だったのは確かだ。しかし、主人公が父の遺志を継いでベルトを獲るという、立場によって予定調和的に約束されたストーリーを、ハリウッドJURINAは阻んだ。
苦しみぬいた元・王者が赤のベルトを手にし、敗者・宮脇は涙する。

ドラマらしくないと思った。
それゆえに、プロレスらしいとも思った。


アイキャッチ画像:©WIP2017製作委員会 ©AKS

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