IWGPヘビー級王座を復活させた辻陽太の覚悟 新日本プロレスを世界一に

【柴田惣一のプロレス現在過去未来】

第87代IWGPヘビー級王者・辻陽太が新日本プロレスを世界一の団体にするため、不退転の決意を固めた。

IWGP世界ヘビー級王座を解体し、IWGPヘビー級王座を復活させ、IWGPインターコンチネンタル王座を封印。「IWGPヘビー級王座こそ新日本のトップベルト」とした。

かねてより辻は約5年間のIWGP世界ヘビー級王座史を「呪いであり団体のあやまち」と手厳しく批判してきた。

初代世界王者は飯伏幸太。DDTで育ち新日本と2団体所属からいったんは新日本を離れ、再び所属となり初代王者に君臨した。現在は米AEW所属の飯伏の実績に異論はないが、いかんせん新日本生え抜きではない。

辻が指摘するほど、世界王座史が呪いとは思えない。とはいえ長く新日本を応援してきたファンからすれば「IWGPヘビー級ベルトこそ新日本最強の証し」という思いは強いのではなかろうか。

そもそも「IWGPヘビー級王座」は、団体の創始者アントニオ猪木のIWGP構想にある。世界プロレス界にタイトルが乱立していた1980年代に「真の最強王者を決めよう」とスタートしたもの。あえて「世界」の文字を外していた。

初代王者は猪木であり、藤波辰爾、長州力の時代、橋本真也、武藤敬司、蝶野正洋の三銃士時代などを経て、棚橋弘至が最多戴冠記録8回を誇っている。まさに新日本の歴史そのもの。

この栄光の歴史を、棚橋弘至が引退し社長に専念する今こそ見直し、復活させようというのが辻の思いだろう。

棚橋は猪木を尊敬している。だからこそ猪木流にこだわるだけでは、猪木を超えられないと様々な棚橋流で挑んできた。


©プロレスTODAY

道場の猪木のパネルをいったんは外させた。ストロングスタイルに今風の華やかさを加えた。黒のショートタイツを脱ぎ捨て、デザイナーに依頼し派手なデザインのコスチュームを愛用した。

そのファイトスタイルはストロングスタイルだが、コスチューム同様、エアギターや決め台詞「愛してまーす」など、棚橋流の味付けを欠かさなかった。

勝利後にリングサイドを一周するファンサービスも定番だった。激しい試合を闘い終えた後にパフォーマンスを展開し、ファンサービスに勤しむ。そのスタミナはまさに底知れなかった。

ファンは何度でも立ち上がるレスラーから勇気と元気をもらい、レスラーはファンの声援と拍手から力を得る。まさに「プロレスの力」をわかりやすく具現化していたのが棚橋だった。

棚橋に代わって新日本を支えるべく名乗りを上げたのが辻だ。反論も上等。賛否両論が渦巻くことを恐れず、新日本が進むべき道へ導く。

「それぐらいの人間がいなければ、WWEには勝てない」とキッパリ。思えば棚橋も当初は失笑を浴びていた。「チャラい」「愛してまーす、なんてレスラーじゃない」…賛否両論どころか否定ばかりだった。

団体の方向性をすべて良しとはしない辻流も、批判にさらされるかも知れない。それでも貫くことで道は開ける。

すべては不動の王者として「エース」の金看板が似合わなくては始まらない。早速、ジェイク・リーがいちゃもんをつけてきた。2人は1・18千葉。佐倉大会で激突した。

辻は新たに結成した「Unbound Co.(UC)」のリーダーとして、ジェイクは「UNITED EMPIRE(UE)」とともに登場した。

軍団のメンバーそれぞれの思惑がぶつかり合う中、辻とジェイクは激しくやりあった。辻がジェイクの顔面を蹴り上げ、場外戦でもみあった。UCの邪道がジェイコブ・オースティン・ヤングの変型サソリ固めに捕まり、ジェイクのUEが勝利を飾った。

決着後にジェイクはコーナーにダウンしていた辻の顔面をFBS(フェイスブレイクショット)で蹴り込んだ。本部席からUE軍団員が投げ入れたIWGPヘビー級ベルトを辻に放り投げ、改めてタイトル挑戦をアピールし、独特の動きで辻を挑発しまくった。

勝ち名乗りを受けるUEの面々をしり目に、ジェイクは一人早々に引き揚げた。今日もノーコメント。IWGPヘビー級王者・辻への実力行使…やるべきことをやったということだろう。

辻は「ジェイク、あんた変わった。この情報過多の世界で、一番いいタイミングを見計らっているんだろ。それがジェイク・リーだもんな」と怒りを抑えて、らしく振り返った。

1・4東京ドーム大会では、ウルフアロンのデビュー戦と棚橋の引退試合に挟まれ、辻のIWGP戴冠が残念ながらややかすんでしまった感がある。だが、ここからだ。今年は俺が主役だ!

辻の前には平坦な道はない。茨の道が待ち構えている。それでも真っ直ぐにひた走るしかない。(敬称略)

<写真提供:新日本プロレス>

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