【スターダム】岡田太郎社長が明かす、日本一へ向けた“バランス経営”の真髄「トップスターの退場はリスクでもあり、メリットでもある」「選手ファーストとは思っていない」「上谷沙弥MVPの理由」

■なつぽいと鷹木信悟の結婚。アイドル性とプロレスビジネスの両立

――:業界を震撼させたニュースといえば、なつぽい選手と鷹木信悟選手の「団体の枠を超えた職場結婚」がありました。この件を、プロレスビジネスの視点からどう捉えていますか。

岡田:まず大前提として、お二人の結婚は本当に素晴らしいことであり、心から祝福すべき慶事です。ただ、プロレスビジネスの視点で言えば、会社としては非常に「慎重になった」出来事でもありました。

――:やはり、ファン心理への影響を懸念されたのでしょうか。

岡田:なつぽい選手はアイドル性が非常に高く、スターダムの中でもトップクラスの人気を誇り、グッズ売り上げを牽引する存在です。過去のエンタメ業界や女子プロレスの例を見ても、熱狂的なファンが離れてしまったり、アンチ化してマイナスな感情を抱かれたりするリスクは当然想定しました。だからこそ発表のタイミングや方法、その後の振る舞いについては、会社として非常に気を遣いました。結果的にファンの皆さんから「幸せの象徴」として温かく受け入れられたのは、お二人の人徳によるものが大きいです。

――:確かに会場でも祝福の声援が飛び交い、ネガティブな空気は一切ありませんでしたね。

岡田:コロナ禍を経て、スターダムが極端な「接触営業」から脱却し、ビジネスモデルを転換していたことも功を奏しました。物理的な距離が近すぎると、どうしてもファンの感情が重くなりすぎる傾向があります。アイドル性やスター性が高ければ高いほど、結婚というライフイベントをポジティブに変換できれば、レスラーとしてさらにキラキラと輝くことができる。今回の件は、今後の女子プロレスビジネスにおける一つの指標、素晴らしいモデルケースになったと安堵しています。

――:ちなみに、結婚の報告はなつぽい選手から直接受けたのですか?

岡田:はい。聞いた瞬間は「おお、すごいな! おめでとう!」と祝福しました。ただ、その数秒後には経営者のスイッチが入って、「発表はどうする? タイミングは?」と、選手とビジネスの双方を守るための話し合いに入りました(笑)。

 

■365日稼働するレスラーの人生に寄り添う「柔軟な契約体系」

――:マネジメントの観点でお聞きします。選手の契約体系や報酬設計について、今後見直しや強化を検討している領域はありますか?

岡田:私が就任して以来、契約体系はかなり柔軟にしてきています。数年単位の複数年契約を結ぶ選手もいれば、1試合ごとのギャランティ契約の選手もいる。契約期間の区切りも、全員が一律で何月何日まで、という形ではなく、個々の選手の状況に合わせて時期をずらすなどの対応を始めています。

――:選手ごとにカスタマイズしているのですね。

岡田:プロ野球と違って、プロレスには明確なオフシーズンがなく、365日稼働しています。だからこそ、選手の人生設計(ライフプラン)に合わせた契約を結ぶことが、お互いにとってのメリットになります。キャリアを重ねて次のステージを見据える選手や、引退の時期を意識し始める選手も当然出てくると思います。そういった選手の人生に寄り添い、柔軟な契約を結ぶことで、団体としてのリスクも分散できる。一定のリズムは保ちつつも、枠に囚われないマネジメントを今後も強化していくつもりです。

(後編へ続く)

インタビュアー:山口義徳(プロレスTODAY総監督)

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