【ノア】丸藤正道が新技で『UNIVERSE CUP』4強入りも「イケメンワールドに染まりきることができなかった」黒潮TOKYOジャパンの“異空間”に天才が陥ったジレンマ

プロレスの映像配信サービス「WRESTLE UNIVERSE」に参画する複数団体の猛者たちが集う合同トーナメント「第1回UNIVERSE CUP」が3月9日、東京・新宿FACEにて開幕した。

プロレスリング・ノアの主催興行『UNIVERSE MAGIC 2026』内で1回戦の4試合が実施され、髙木三四郎、丸藤正道、ザ・グレート・サスケ、ハヤブサという、各団体の歴史を彩ってきた象徴的な顔ぶれが準決勝へと駒を進めた。

この日、ひときわ異彩を放ったのが第3試合である。ノアの至宝と称される丸藤正道と、アップタウン所属の特異なエンターテイナー・黒潮TOKYOジャパンが激突した。

研ぎ澄まされた技術を誇る天才と、観衆を自身の空気へ引きずり込む異端児。相反する両者の対峙は、単なる勝敗の枠を超えた「プロレスの世界観」を巡る主導権争いとなった。

丸藤正道は序盤から容赦のない打撃でペースを握りにかかる。場外で引きずり回し、リングの四隅で強烈な逆水平チョップを連発。

対戦相手が「すいませんでした」と謝罪しても「ダメです」と一蹴し、手首を捕らえた状態からさらにチョップの雨を降らせた。

しかし、黒潮TOKYOジャパンは自身のトレードマークであるジャケットを前後逆にして着用するという奇策で胸板を防御。

そこからジャケットパンチやフランケンシュタイナー、バズソーキックへと繋ぎ、リングを完全に自らの独壇場である「イケメンワールド」へと変貌させていく。

相手の不気味なテンポに引き込まれかけた丸藤正道であったが、終盤には流石の勝負勘を発揮する。飛び技を的確に迎撃すると、必殺の虎王を突き刺す。

さらに、相手の腕をクラッチしてマットへ叩きつけてからフロントネックロックへと移行する新技を披露し、難敵から鮮やかなタップアウト勝ちを収めた。

試合決着後、リング上では奇妙な光景が繰り広げられた。

健闘を称えるようにチョップを見舞い、対戦相手の腕を掲げた丸藤正道に対し、黒潮TOKYOジャパンは「もう1回お願いします」と頭を下げた直後、不意打ちの延髄斬りを放ち、満面の笑みでリングを後にしたのである。

バックステージに戻った丸藤正道の口から飛び出したのは、1回戦突破の喜びではなく、自身の表現者としてのプライドに対する強烈な悔恨の念であった。

丸藤「すまない!イケメンのワールド、そうイケメンワールドに染まりきることができなかった。自分を捨てきることができなかった。勝負には勝ったけどな、ある意味、試合では負けてしまったよ。最後、あいつもう一回やろうって。そのもう一回がすぐだった。延髄斬りしやがって、あいつ…」

そこに、先ほど不意打ちを見舞ったばかりの黒潮TOKYOジャパンが姿を現し、両者の噛み合わない、しかしどこか互いの力量を認め合う独特な舌戦がスタートした。

黒潮「丸藤オラ!」

丸藤「うるせえよ」

黒潮「試合ありがとうございました!」

丸藤「いや、こちらこそだよ、このヤロー。お前凄いね。あんたさすがだよ」

黒潮「俺、あんまこういうのダサいから言いたくないんだけど、何回も試合してほしいと思いました」

丸藤「あ、俺、嫌です」

黒潮「え?いや、何回も試合したいと思いました」

丸藤「今日は俺の勝ちだ。だけど、世界では、試合の世界観、君の勝ちだ」

黒潮「マジかよ?丸藤さん、NOAH呼んでください」

丸藤「嫌です。じゃ、お疲れ様でした」

黒潮「ああ!クソヤロー!」

強烈な個性の前に自らの殻を破れなかった葛藤を吐露し、相手の世界観づくりを「君の勝ちだ」と潔く認めた丸藤正道。

しかし、ノアマットへの継続参戦や再戦の要求には「嫌です」と連続で即答し、明確に拒絶の意志を示すあたりに、天才ならではの意地と防衛本能が滲み出ていた。

結果として勝名乗りを受けたのは丸藤正道であるが、プロレスの持つ奥深さと恐ろしさを体現し、ファンの脳裏に強烈な爪痕を残したのは黒潮TOKYOジャパンの摩訶不思議な空間支配力であった。

<写真提供:プロレスリング・ノア>

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