彩羽匠、マーベラス10周年の軌跡と長与千種から受け継いだ“リーダーの背中”「もうダメかもと思った夜を越えて」
2026年5月5日、女子プロレス団体「マーベラス(Marvelous)」が神奈川・横浜BUNTAIにて『旗揚げ10周年記念大会』を開催する。
長与千種という女子プロレス界最大のレジェンドによって産声を上げた同団体。
幾度となく訪れた存続の危機、コロナ禍という未曾有の事態を乗り越え、ついに10年という大きな節目を大舞台で迎えることとなった。
その激動の歴史を団体のエースとして、そして現場のトップとして牽引し続けてきたのが彩羽匠(いろは・たくみ)だ。
女子プロレス界におけるトップの一角に君臨する彼女の目に、この10年の軌跡はどう映っているのか。
前編では、マーベラスという「家族」でもある団体が直面した危機と、長与千種から受け継いだリーダーとしての在り方に深く迫る。
■ 大会情報
マーベラス横浜BUNTAI大会 ~旗揚げ10周年記念~
日程:2026年5月5日(火・祝)
時間:開場 15:00 / 開始 16:00
会場:神奈川・横浜BUNTAI
【決定カード】
▼メインイベント AAAWシングル王座戦
《王者》彩羽匠 vs 《挑戦者》Sareee

■ GAEA JAPANの「10年」を目標に駆け抜けた日々
――:いよいよマーベラスが旗揚げ10周年を迎え、さらには新しくなった横浜BUNTAIという巨大な会場で記念大会を開催します。今、この「10周年」という大きな節目を目前に控えた率直な心境はいかがですか?
彩羽:いやぁ……本当に「10年ってこんなに早かったのかな」という不思議な感覚です。マーベラスを旗揚げする前、長与(千種)さんから「プロレス団体を10年続けることの難しさ」について、何度も何度も言い聞かされてきたんです。かつて長与さんが立ち上げた『GAEA JAPAN(ガイア・ジャパン)』という伝説的な団体も、ちょうど10年で解散の道を選びましたよね。だからこそ、私の中でも「まずは何が何でも10年続けること」を絶対的な目標として心に刻んでいました。その10年をこうして無事に迎えられて、今は本当に嬉しいという言葉しか出てこないですね。
――:一般の企業経営においても、近年では設立から10年生き残る会社はわずか数%程度と言われています。浮き沈みの激しいプロレス界において、マーベラスが10周年を迎え、しかも横浜BUNTAIという大箱で興行を打てるというのは、ある種の「奇跡」だと思います。
彩羽:本当にその数%の中で生き残っているということですよね。振り返れば、本当に色々なことがありました。一時期、大量に選手が抜けてしまったこともありましたし、「ああ、もう流石にマーベラスはダメかもしれないな……」と心が折れそうになる瞬間は、実は結構あったんですよ。でも、その度にみんなで踏ん張って、ギリギリのところで乗り越えてきた。だからこそ、今この10年という節目を横浜BUNTAIでできるというのは、私自身も本当に奇跡だと思っています。

■ 「絶対になんとかなる」長与千種のドンと構える背中
――:ご自身の中で「もうダメかも」と思った危機を、マーベラスという組織はどうやって乗り越えてこれたのでしょうか? その原動力は何だったと感じますか?
彩羽:やっぱり一番は「仲間」の存在ですね。マーベラスって、プロレス界の中でも特に「ファミリー感」が強い団体なんです。それは時として、外から「良くも悪くも」と言われることもあるんですが、いざという危機の時には、そのファミリー感という“良い面”が爆発した。誰かが倒れそうになっても、みんなが肩を組んで支え合い、踏ん張れたというのは間違いなくありますね。
――:家族のような結束力が、崩壊の危機を救ったのですね。
彩羽:それと同時に、やっぱり長与千種という“ボス”の存在です。「やばいな、これ本当にマーベラス大丈夫かな?」と選手たちが不安になっている時、長与さんは常にドンと構えて揺るがないんです。コロナ禍で興行が一切打てなくなった時も、どの団体も恐怖に包まれていたと思いますが、長与さんはずっと「大丈夫、大丈夫。絶対になんとかなるから!」と力強く言い続けてくれました。トップがそう言ってくれるから、私たちも下を向かずに前を向けた。そして、本当になんとかなってきたんですよね(笑)。

――:彩羽選手ご自身も、マーベラスの現場を率いるリーダーです。後輩たちを食べさせていかなければならない、団体を引っ張らなければならないというプレッシャーは凄まじいものがあったはずです。辛い時に、どのようにマインドを切り替えてきたのですか?
彩羽:それが……私自身があまり物事を深く考え込まない能天気な性格なので、逆にそこは後輩たちに助けられている部分が大きいんです。私が「どうしよう」と思い悩むよりも、私がフワッとしている分、下の子たちの方が「私たちがしっかりしなきゃ!」って考えてくれている(笑)。「彩羽さんがこんなんだから、私たちがしっかりするしかない」って、後輩たちが自立していったんですよね。だから、私が引っ張ったというより、みんなに支えられてきた感覚の方が強いです。
――:なるほど(笑)。しかし、その少し楽観的で明るい部分こそが、殺伐としがちなプロレスの現場において、リーダーに必要な要素なのかもしれません。
彩羽:あとは「根拠のない自信」と「勢い」ですね。今回の横浜BUNTAIだってそうですよ。「10周年は絶対に大きいところでやろう!」って、私が勢いだけで言っちゃったんです。現実的に集客できるのかとか、予算はどうだとか、そういう難しいことを考え始めちゃうと足が止まっちゃうじゃないですか。私が何も考えずに「BUNTAIでやる!」って勢いで打ち上げたからこそ、周りのみんなが「じゃあ、それを成功させるためにどう動くか」としっかり乗ってくれて、形にしてくれた。だから、周りのサポートには本当に感謝しかないですね。














