彩羽匠、マーベラス10周年の軌跡と長与千種から受け継いだ“リーダーの背中”「もうダメかもと思った夜を越えて」

©Sareee-ISM
■ 最大のライバル・Sareeeを「逆指名」した真意
――:そして、この記念すべき横浜BUNTAIでのメインイベント。AAAWシングル王座を懸けた防衛戦の相手に、現在タッグチーム「スパーク・ラッシュ」のパートナーでもあるSareee選手が決定しました。このカードは、彩羽選手ご自身からの熱烈なラブコール、いわば「逆指名」だったそうですね。
彩羽:はい、私がマイクで言いました。3月22日の『Sareee-ISM』の大会の時ですね。10周年のメインイベントですから、もちろん他にも「この人と防衛戦をやりたいな」と候補に浮かぶ人は何人もいたんです。でも、あの日のSareeeさんの戦いを見て、彼女が3カウントを奪って勝つ姿を見た瞬間に、「やっぱりこの人しかいない」と。タッグパートナーとしても最高にカッコいいし、何よりプロレスラーとして圧倒的です。その時に頭の中でガチッとスイッチが入って、勢いのまま「シングルをやろう」と口に出していました。
――:Sareee選手も海外から帰国して以降、各団体のベルトを総なめにする勢いで大活躍しています。「最強のパートナーであり、最大のライバル」と公言されていますが、彩羽選手から見たSareee選手とは、これまでどのような存在だったのでしょうか。
彩羽:私の中では、ずっと「ライバルでしかない存在」でした。初めて対戦したのが2016年か17年頃。私自身がデビューして4年ほど経ち、「これから団体のトップに立っていくぞ、女子プロレスの頂点に食い込んでやるぞ」と強く意識し始めた時期でした。その時、目の前に全く同じ熱量で、同じように上の世代の壁をブチ破ろうとしているSareeeさんがいたんです。「自分が団体を引っ張るんだ」「ここで女子プロレスを盛り上げなきゃいけない」……背負っている看板は違えど、お互いに同じ気持ち、同じ立場で戦っていた同志のような感覚でした。だからこそ、Sareeeさんがずっと同じ時代にいてくれたから、今の私もここまで這い上がってこれたんだと確信しています。

――:若手時代から常に意識し合い、お互いが業界をリードするトップ選手へと成長した現在。そんな二人がタッグを組み、さらには団体の10周年という最高の舞台でベルトを懸けて戦う。プロレスファンからすれば、これほどエモーショナルな大河ドラマはありません。
彩羽:不思議ですよね。昔はバチバチにやり合っていて、まさか将来タッグを組むなんて頭の片隅にもありませんでしたから。「この人とは、プロレス人生において常にリングの対角線で睨み合い続ける宿命なんだろうな」と思っていました。だから、1年ほど前からタッグを組み始めたこと自体、今でもSareeeさんと「私たち、組んでるの不思議だよね」って笑い合いながら話しているくらいなんです。
――:かつては「そろそろシングルで決着をつけよう」と顔を合わせる度に言葉を交わしていたそうですね。
彩羽:そうなんですよ! 新宿FACEとかで試合が一緒になる度に、「そろそろシングルやりましょうよ」ってお互いに言っていたんです。でも、なぜかそのタイミングがずっと訪れなくて。そうこうしているうちに、気づいたらタッグを組むことになっていて(笑)。プロレスの運命って本当に分からないものです。でも、だからこそ、この横浜BUNTAIという最高の舞台に、極上のシングルマッチという形で運命のピースがピタリとハマったんだと思います。
(【後編】へ続く。タッグで知ったSareeeの本当の恐ろしさ、長与千種から受けた「パスタ6人前」の壮絶な指導、そして彩羽匠が考える“女子プロレスの頂点”とは――)

インタビュアー:山口義徳(プロレスTODAY総監督)















