広島の夜から17年、不世出の天才レスラー・三沢光晴が命を懸けて守り抜いた「自由と信念」

■ 交差する新旧の熱狂。生え抜きの覚醒と外敵の襲来

あれから17年。プロレス界を取り巻く景色は大きく変わった。

三沢光晴が命を懸けて種を蒔き、育て上げたプロレスリング・ノアという方舟も、決して平坦な航海ばかりではなかった。

しかし、幾度となく荒波に揉まれながらも、その歩みが止まることはなかった。

現在、ノアはIT業界大手のサイバーエージェントのグループ会社となり、巨大な資本と最先端の配信プラットフォームという強固な帆を手に入れている。

経営の安定と新たなデジタル戦略を得たことで、三沢光晴が理想とした「選手とファンがどっちも楽しめるプロレス」は、よりグローバルで革新的なエンターテインメントへと劇的な進化を遂げた。

その進化する方舟の先頭には、常に丸藤正道の姿がある。

三沢光晴の付き人を務め、その背中を誰よりも間近で見続けてきた「方舟の天才」は、正統なる後継者として今なおリングに立ち、ノアの看板と誇りをその身を呈して支え続けている。

また、90年代のプロレス界を二分した永遠のライバル、武藤敬司が自身の長きにわたる現役生活の終着駅としてノアのリングを選んだ事実は、三沢光晴が立ち上げた団体がいかに絶対的なステータスを持ち、レスラーの魂を引き寄せる神聖な場所であるかを証明するものであった。

そして現在の緑のマットはかつてないほどの熱を帯びて活性化している。

三沢光晴の遺伝子を直接受け継ぐノア生え抜きの清宮海斗や稲村愛輝らが逞しく成長し、団体の屋台骨を背負うまでに覚醒した。

さらに、予測不能なファイトで観衆を飲み込む突然変異のOZAWAの登場が、リング上の景色に強烈な刺激を与えているのだ。

そして極めつけは、プロレス界の勢力図を大きく塗り替える大事件である。

新日本プロレスを離脱した制御不能なカリスマ・内藤哲也率いる「LOS TRANQUILOS de JAPON」のノア本格参戦だ。

圧倒的な影響力を持つ外敵軍団の襲来は、方舟の戦士たちの闘争本能に火をつけている。

生え抜きの意地と外敵のプライドが激しく交差するこの空間こそ、まさに三沢光晴が夢見た「自由」なプロレスと言えるだろう。

 

■ マットに生き続けるエメラルド・グリーンの魂

本日の命日に際し、プロレスリング・ノアの公式SNSは、ファンに向けて次のような力強いメッセージを発信した。

『プロレスリング・ノアを旗揚げし、「方舟の盟主」「NOAHの象徴」と称された三沢光晴さん。三沢さんの勇姿や理想、NOAH旗揚げの理念を風化させないため、これからもプロレスリング・ノアは三沢さんを知る選手はもちろん出場全選手が、三沢さんが掲げた「自由と信念」の旗印の下、最高のプロレスを届け続けます。』

三沢光晴の肉体は失われてしまったかもしれない。

しかし、己の限界を超えて観客を魅了し続ける闘志、どんな逆境にも立ち向かう折れない心、そして「自由と信念」という確固たるプロレス哲学は、丸藤正道をはじめとするノアのリングに立つすべての戦士たちの血肉となり、確実に受け継がれている。

6月13日。我々はただ悲しみに暮れるためだけにこの日を迎えるのではない。

プロレスというジャンルを誰よりも深く愛し、ファンのために己の命すらも削り切った、一人の不器用で偉大なる天才レスラーの生き様を、誇りを持って語り継ぐための日なのである。

あの切れ味鋭いエルボー・スマッシュ。

華麗なエメラルド・フロウジョン。

そして、入場曲「スパルタンX」が鳴り響いた時の、会場が一体となる途方もない熱狂。

三沢光晴が我々に見せてくれた最高の夢は、これからも永遠に色褪せることはない。

エメラルド・グリーンの魂は、今も、そしてこれからも、プロレスリング・ノアと共に生き続けている。

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