ウルフアロンの正念場 リングで這いつくばってきた男が立ちふさがる

【柴田惣一のプロレス現在過去未来】

新日本プロレス「NEVER無差別級王者」ウルフアロンが次のステージに進めるか。正念場の戦場に出陣する。

ウルフは真夏の祭典「G1クライマックス」(7月11日、米シカゴで開幕)への出場権をかけて、6月23日、東京・後楽園ホール大会で、YOSHI-HASHIと激突する。

これまでの一騎打ちと言えば、衝撃のデビューを飾った1・4東京ドーム決戦のEVIL戦、NEVER無差別級王座を巡る成田蓮との抗争など、悪党軍団「HOT(ハウス・オブ・トーチャー)とのバトルだった。

ルール無用で一丸となって襲い掛かって来る悪党軍団HOT相手に、正義のバトルで対抗する。ウルフのプロレスは良くも悪くもわかりやすかった。

ただ、正悪が一瞬にして入れ替わったりするのがプロレス。清濁併せ飲む懐の深さが必要となる。いくらポテンシャルが高くても、優れたアスリートといえども、プロレスのキャリアが求められる場面が必ずある。

G1となれば、さまざまなタイプの猛者とのシングル連戦となる。悪党軍団の乱入を始め反則攻撃は少なくなるが、ウルフの力量が如実にさらけ出される。スタミナ配分、試合運び…これまでとは違ったファイトを披露しなければ、いくら五輪の金メダリスト・ウルフといえども、公式リーグ戦を勝ち抜くことは難しい。

それどころか、G1出場もかなわないかも知れない。G1出場者決定戦の相手、YOSHI-HASHIがくせ者だ。レスリングに勤しみ、アニマル浜口ジムを経て新日本入りし、2008年にデビューしている。キャリア18年にして44歳。人間同様のまじめな闘いぶりで、レスラーとしてアブラが乗り切っている。

しかもYOSHI-HASHIにはどうしても負けられない想いがある。海外修行から12年の1・4東京ドーム決戦に凱旋帰国。そう、同じく凱旋したあのオカダ・カズチカと「両者凱旋帰国マッチ」に臨んでいる。

鳴り物入りだったオカダと激しくやり合ったが、レインメーカーに敗退。オカダはその日、時のIWGPヘビー級王者・棚橋弘至に「お疲れ様でした」と挑戦の名乗りを上げ、レインメーカー物語の幕開けを告げている。

その後のオカダの快進撃は言うまでもない。新日本でやるだけのことをやり、米AEWに転戦し大活躍。オカダのレスラー人生は栄光に彩られている。

かたやYOSHI-HASHIは後藤洋央紀と毘沙門を結成。IWGPタッグ王座などタッグ戦線で活躍しているが、シングルプレイヤーとしては、なかなか実績を上げられないでいる。

14年前にオカダに踏み台にされ、今度は天下取りを目論むウルフの通過点にされる…いかに好漢・YOSHI-HASHIといえども我慢ならないはず。二度と人のスプリングボードにはならない、と力がこもる。

今まで頑張って来た意地もある。今年デビューしたてのプロレスグリーンボーイには負けられないと、闘志を燃やしている。「柔道と違って投げられたら終わりじゃない。プロレスは投げられてから始まる。俺がどれだけリング上で受け身を取って、這いつくばってきたか。お前との差を見せてやる」と意気込む。

さしものウルフも油断はできない。もっともウルフは柔道の五輪金メダリストである。臨機応変に闘い方をかえるのはお手のものだろう。

ウルフも「僕自身も知らない僕のボロがたくさん出てくる。そこを見落とさずしっかりやっていきたい」と、自分のやるべきことをしっかりとらえている。

6・21神奈川・相模原決戦で、ウルフは海野翔太、小島聡と組み、YOSHI-HASHI、後藤洋央紀、松本達哉組と対戦。ともに先発したウルフとYOSHI-HASHIは、エルボーを打ち合うなど激しくやり合った。海野がラリアートで松本をフォールしウルフ組が勝利を飾っている。

とはいえ、一騎打ちには逃げ場はない。ウルフが正念場を迎えたことは間違いない。デビュー戦でいきなり腰に巻いたNEVER無差別ベルトを、いったん失ったものの奪還した勢いそのままG1出場を勝ち取るか。そして一気に真夏の覇者となり、天下取りに王手をかけるのか。

期待が大きいゆえに厳しい声もある。それをハネ返せるか。知名度では誰も文句をつけられないマット界ナンバー1のウルフが、名実ともにプロレス界の頂を目指して一直線に突き進むのか。固唾を飲んで見届けたい。

<写真提供:新日本プロレス>

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