【編集長コラム】「蚊」との死闘!

「ブ~ン!」。夏といえば、蚊の耳障りな羽音だったが、最近はあまり聞かなくなった。となると、蚊取り線香の香りが懐かしく思われるから、困ったものだ。

ちなみに、人間を刺すのはもっぱらメスで、オスは花の蜜やら木の樹液だのを吸っているそうだ。メスは卵を産むために栄養を取らなければならないので、哺乳類からの吸血が必要らしい。

ところで、皆さんは聞いたことがあるだろうか? かつて「レスラーは蚊に刺されない」という都市伝説があった。「レスラーは毎日、硬いマットで受け身を取るから、皮膚が厚く硬くなるので、蚊に刺されない」というものだった。

昭和のころ、夏は「田園コロシアム」「○○スーパー駐車場特設リング」など、屋外での試合開催も多く、その度にファンは蚊に襲われ、かゆい思いをしながら観戦していた。

現代のように、虫よけスプレーや携帯用蚊取り線香などもない時代。女性や子どもなど、肌のやわらかい人は狙われやすく、また、蚊はアルコール分に吸い寄せられるので、ビールを飲みながら観戦している男性陣もチクリとやられていた。

ファンはだいたいが、じっと座って観戦しているのだから、蚊にまとわりつかれる一方で、レスラーは無事。だからなのか「レスラーは蚊に刺されない」という都市伝説がまことしやかに、広まったのだ。

しかし、レスラーは蚊と無縁という訳ではなく、リング上で動き回っているから、襲われないというのが真相だろう。

4年前にリフォームされた新日本プロレス道場は、東京・世田谷区野毛にある。多摩川の土手近くで、自然豊か。緑に囲まれている。当然、蚊も多かった。合宿所でくつろいでいる時には、蚊の餌食になることもある。

ところが、都市伝説がある。「蚊にやられた」と、ポリポリ掻いているのは恥ずかしいというわけか、蚊に血を吸われても、知らん顔を決め込んだ。ただ、かゆみを我慢するのは辛い。昔は、かゆみを与えるという拷問もあったというから、かゆみをやせ我慢するのは、かなりの苦行だ。

そういう時には「キンカン」の出番。古今東西、虫刺され治療の薬はたくさんあるが、レスラーの間ではキンカンが人気だった。あの独特の匂いでスーッとすることもあったが、キンカンは肩こりや腰痛、筋肉痛などの痛みにも効くからだ。

本当は蚊に襲撃され、かゆいのに、キンカンであれば「かゆみではなく痛みに対して塗っている」風を装えるからだ。

「あ~、練習で傷めちゃったなあ」「昨日の試合はきつかったからなあ」などと、言い訳のようなひとり言をブツブツ言いながら、キンカンを塗るレスラーが続出していた。

「あくまで虫刺されの薬ではない」とのスタンスを貫くレスラー軍団。そんなこんなでキンカンの消費量はすさまじかった。その流れからか、今でもキンカンを愛用する選手も多い。

ちなみに、蚊に刺されてしまった時は、腕なら腕にグッと力を入れるのだそうだ。そうすると刺した針が抜けなくなって、蚊が飛び立てなくなる。そこを一撃で仕留めるのだという。

追い払うだけではなく「やられたらやり返す。ヤローぶっ殺してやる!」というレスラーの意地(?)も発揮していた。人から見たら、おかしなことかも知れない。だが、いつ何時でも、そういうところでも「レスラーであろう」というプロ根性は見上げたものだ。

♪夏が来~れば、思い出す~。遥かな尾瀬、遠い空~♪ ではなく ♪夏が来~れば、思い出す~。新日道場とキンカンの匂い~♪ だ。

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